新型カツアゲ(?)される今昔
CATEGORY山下大輔報告2006年
それは一昨日(23日)の19時半過ぎごろ、浦和駅にて起こった。
「あの、すいません」
高崎線or宇都宮線に乗るために階段を上ろうとした僕は、見知らぬ人に突然声をかけられたのだ。僕より少し若いくらいの、太めで小柄で坊主頭の男性だ。
「お願いします、900円下さい。切符なくしちゃって、お金もなくて下りられないんです」
おどおどしながら早口で話しており、気の弱そう事が伺える。
しかし……見知らぬ人に、なぜお金を渡せねばならないのか?いきなりのお金の催促に戸惑う僕。
「あの、すいません」
高崎線or宇都宮線に乗るために階段を上ろうとした僕は、見知らぬ人に突然声をかけられたのだ。僕より少し若いくらいの、太めで小柄で坊主頭の男性だ。
「お願いします、900円下さい。切符なくしちゃって、お金もなくて下りられないんです」
おどおどしながら早口で話しており、気の弱そう事が伺える。
しかし……見知らぬ人に、なぜお金を渡せねばならないのか?いきなりのお金の催促に戸惑う僕。
「皆にも頼んでるんですけど、無視されて、困ってるんです」
そりゃそうだよなあ……。いきなり金銭の要求をしてくること自体、非常識だし、本当はお金を持っているのに、嘘をついている可能性だって当然ある。
本当に困っているのなら、助けてあげたい気持ちも無くも無いが、この人が本当にお金を持っていないという証拠もない。
ふむ、ならば簡単にお金を渡すよりも、その場を凌ぐやり方を助言する事にしよう。
「えっと、それならですね、駅員さんに……」
「ダメって言われました」
僕の言葉をさえぎる男。おい、僕はまだ何も言ってねえぞ!せっかく人が応対してあげてるんだから、最後まで話を聞けっつーの!
「ダメって言われました。だから、900円下さい」
「ええ、ですからね、そう言う場合は……」
「ダメって言われました」
また話をさえぎりやがった!!このヤロー、だから僕はまだ何も言ってねえっつーの!
う~む、こいつ、何が何でも僕から900円を頂くつもりなのだろうか?しかし、このまま何も言えないままでは、僕も悔しい。もう一度助言を試みる事にしよう。今度は言葉をさえぎられないよう、できるだけ息継ぎを少なく、一気に喋り抜けてやる!
「ええですからまず駅員さんに相談して、警察の方を呼んでもらって下さい。そして、警察の方でしたらお金を貸してくれるはずですので……」
「身分証明書がないからダメって言われました」
男は間髪入れずにそう切り返してきた。この早さ!あっさり却下されて、僕の三度目の正直も無駄に終わった。
警察に相談もダメか。それでは僕も、対応策が見当たらないなあ。
実は僕は大学4年生の時に、一度、警察の方からお金を借りた事がある。その時は横浜方面へ出かける用事があったのだが、暗くなり、休日のためATMも閉まった時間になって、ようやく僕は所持金が200円しかない事に気付いたのだ。困り果てた僕は、その200円に全てをかけるため、生まれて初めて、一人でパチンコ屋へ向かったのだが、その10分後には所持金がゼロになっていた。
渋谷までの定期券はあったので、一晩かけて歩いてみるかと歩を進めたが、一駅分歩いただけで疲れて断念した。想像以上に渋谷への道のりは遠かったのだ。
もう仕方ないので、僕は恥を忍んで交番へ行き、お金を貸して下さいと頼み込んだ。
「今まで何度か、同じようなケースでお金を貸した事があるんだけど、返って来た事は一度もないんだよねえ……」
警察の方はかなり渋っていたが、僕も非常識を承知のうえ、本当に困っているんですと何度も何度も頭を下げた。
「明日には必ず返します!」
「携帯電話番号も置いて行きます!」
そう必死に懇願した末、何とかお金を貸して頂けた僕。無事に電車で帰宅する事ができたのだった。あの時は警察の方、ありがとう。一応、以前に、いざという時は警察に行けば、いくばくかのお金は貸してもらえると聞いた事があるんだよね。
当然僕は、その翌日にはお金を返しに行った。
「おお、こんなに早く返しに来なくても良かったのに」
警察の方がかなり驚いていたのが印象的。どうやら、返って来ない可能性も十分に考えていたようだった。
……とまあ、以上のように、警察の方も鬼じゃない。誠実に事情を説明すれば、お金は少々貸してもらえるはずなのだが……この男はだめだったようだ。たまたま僕がラッキーだったのだろうか?しかし、お金は貸してくれないにしても、警察なのだから、何か別の方法を考えてくれそうなものだが。
せっかくの助言も退けられた僕だが、だから言って、「それなら仕方ないね」と簡単に900円をあげるほど、僕もお人好しではない。
「うーん、それでも、ちょっとお金はあげられないですから。それじゃ」
足早にその場を立ち去った。男はガッカリした表情を浮かべていたので少々後ろめたくもあったが、僕はホームへ上って行った。
それから10分ほど後に、駅にアナウンスが流れた。線路に石が置かれる悪戯のせいで、電車が止まってしまったとの事。なので、僕もホームにてしばらく待つ事に。
そこで、かの男はまだいるのだろうか?と階段入り口を除いてみたら、おお、なんと、まだいた。今度は誰にお願いしようかと、男はそこらをウロウロしている。ふ~む、本当に困っているのだろうか?ひょっとしたら、僕は900円をあげるべきなのだろうか?どうかな……?
結局僕はあげる事なく、しばらくしてやって来た電車に乗り込んだ。多分、僕は間違っていないのだろうと思う……。
しかし見方を変えれば、これは新手のカツアゲなのかもしれない。暴力的か否か違うだけで、お金を取るという狙いはまったく同じだ。
思い返せば7年前の秋、大学3年生だった僕は、奇妙な形で200円を失った事がある。そう、それは登校中の昼過ぎ、渋谷で起こったのだ。
「兄ちゃん、ちょっとごめんなー」
ハッキリ言って身なりの悪い、ホームレス風の50歳前後のおじさんが、僕の前に現れたのだ。
「あのなー、ごめんなー、今からさー、オレ、ちょっと仕事に行かなくちゃならなくってさ………。でもなー、ちょっと場所が遠くってさー……」
おじさんは本当にすまなさそうに話をしていた。とりあえず、黙って聞く僕。
「電車で行かなくちゃなんねえんだけど……………金がねえんだよー」
本当にそうかもしれない……何しろ見た目がみすぼらしい。所持金ゼロ、一日一日を何とか凌ぐ生活を送っていても、何も不思議はなさそうだ。
「それでさー…………本当に申し訳ねえんだけど…………190円だけ貰えるかなー…………?」
心底困っているようで、わずかに泣きが入っているかのような口ぶりだった。僕も到底お金持ちではないが、それでも、たった200円と言えば200円だ。それでこんなに困っているとは。
たかだか20代前半の小僧に、こんなに情けない頼み事、このおじさんにとっては相当辛かったであろう。ここまで腰を低くして、プライドをかなぐり捨てての懇願。悲壮さがヒシヒシと伝わってくる。それなのに、これを無視してしまっては、あまりにもおじさんがかわいそうだ。
それに、もしここで僕がお金を渡さなければ、おじさんはきっと、別の人に同様の事を頼むであろう。となると、おじさんはまたもう一度、惨めな思いをする事になる。やはりそれはかわいそうすぎるな………。
理不尽なお願いとは分かっている。しかし、やはりここは、僕が一肌脱いでやるべきではないのか?
僕は決意した。黙って財布から100円玉を2枚取り出し、おじさんに手渡したのだ。
「ああ、ありがとう」
おじさんは頭を下げてお礼を言い、そして申し訳なさそうな表情でこう言った。
「ごめんなー」
あまりお礼を言われるのも何なので、僕は軽く手を振って、無言でおじさんと別れた。
「兄ちゃーん、ごめんなー、ごめんなー」
後ろから、おじさんの申し訳なさそうな声が何度も聞こえた。僕は「気にしなくていいですよ」という意味で、笑顔でもう一度手を振り、学校へ向かった。おじさんの「ごめんなー」はまだ後ろから何度か聞こえた。
かくして僕は、突然の出来事により200円を失った。何だか釈然としない気持ちもあったけれど、おそらく僕は人の役には立てたし、まあ良しとしたかった。200円募金したと思って、自分の行動を納得させたかったのだ。
さて、学校に到着した僕は、講義前に教室にて、友達に、今日、登校中にこうこうこういう事があって、200円渡してきたよと話した。そして最後に、こう尋ねてみた。
「これって、オレ騙されてるかな?」
「騙されてるよ」
友達はキッパリと言った。僕のヴォランティア精神を粉々に打ち砕くが如くだった。
「でも、そのおじさん、本当に困っていそうだったし、申し訳なさそうにしてたよ」
「それが騙されてるんだよ」
友達は、またもスパッと言った。
「うーん、そうかなあ……」
「そうだよ」
3回連続で言い切られた。問答無用という口ぶりで、僕もこれ以上、何も言えなかった。そうか、僕は騙されていたのか……。
この時の経験が活きて、僕は一昨日、900円をあげずに済んだ。
そう、どんな状況にあろうとも、見知らぬ人に、やすやすと金銭を渡すべきではないのだ。7年前にそう学んだのだった。
それにしても、世の中には色んな方法でお金を巻き上げる方法があるものだ。相手が困っていそうだと、なかなか断りにくくてタチが悪い。
暴力的でオーソドックスなカツアゲなら、「こいつにお金を差し出す必要はない」と、判別が簡単なのですが。
こんな"困っているんで助けて下さい"カツアゲ、体験した事はありませんか?いやまあ、本当に困っている可能性も考えられるので、カツアゲと断定する事もできないのですが。
そりゃそうだよなあ……。いきなり金銭の要求をしてくること自体、非常識だし、本当はお金を持っているのに、嘘をついている可能性だって当然ある。
本当に困っているのなら、助けてあげたい気持ちも無くも無いが、この人が本当にお金を持っていないという証拠もない。
ふむ、ならば簡単にお金を渡すよりも、その場を凌ぐやり方を助言する事にしよう。
「えっと、それならですね、駅員さんに……」
「ダメって言われました」
僕の言葉をさえぎる男。おい、僕はまだ何も言ってねえぞ!せっかく人が応対してあげてるんだから、最後まで話を聞けっつーの!
「ダメって言われました。だから、900円下さい」
「ええ、ですからね、そう言う場合は……」
「ダメって言われました」
また話をさえぎりやがった!!このヤロー、だから僕はまだ何も言ってねえっつーの!
う~む、こいつ、何が何でも僕から900円を頂くつもりなのだろうか?しかし、このまま何も言えないままでは、僕も悔しい。もう一度助言を試みる事にしよう。今度は言葉をさえぎられないよう、できるだけ息継ぎを少なく、一気に喋り抜けてやる!
「ええですからまず駅員さんに相談して、警察の方を呼んでもらって下さい。そして、警察の方でしたらお金を貸してくれるはずですので……」
「身分証明書がないからダメって言われました」
男は間髪入れずにそう切り返してきた。この早さ!あっさり却下されて、僕の三度目の正直も無駄に終わった。
警察に相談もダメか。それでは僕も、対応策が見当たらないなあ。
実は僕は大学4年生の時に、一度、警察の方からお金を借りた事がある。その時は横浜方面へ出かける用事があったのだが、暗くなり、休日のためATMも閉まった時間になって、ようやく僕は所持金が200円しかない事に気付いたのだ。困り果てた僕は、その200円に全てをかけるため、生まれて初めて、一人でパチンコ屋へ向かったのだが、その10分後には所持金がゼロになっていた。
渋谷までの定期券はあったので、一晩かけて歩いてみるかと歩を進めたが、一駅分歩いただけで疲れて断念した。想像以上に渋谷への道のりは遠かったのだ。
もう仕方ないので、僕は恥を忍んで交番へ行き、お金を貸して下さいと頼み込んだ。
「今まで何度か、同じようなケースでお金を貸した事があるんだけど、返って来た事は一度もないんだよねえ……」
警察の方はかなり渋っていたが、僕も非常識を承知のうえ、本当に困っているんですと何度も何度も頭を下げた。
「明日には必ず返します!」
「携帯電話番号も置いて行きます!」
そう必死に懇願した末、何とかお金を貸して頂けた僕。無事に電車で帰宅する事ができたのだった。あの時は警察の方、ありがとう。一応、以前に、いざという時は警察に行けば、いくばくかのお金は貸してもらえると聞いた事があるんだよね。
当然僕は、その翌日にはお金を返しに行った。
「おお、こんなに早く返しに来なくても良かったのに」
警察の方がかなり驚いていたのが印象的。どうやら、返って来ない可能性も十分に考えていたようだった。
……とまあ、以上のように、警察の方も鬼じゃない。誠実に事情を説明すれば、お金は少々貸してもらえるはずなのだが……この男はだめだったようだ。たまたま僕がラッキーだったのだろうか?しかし、お金は貸してくれないにしても、警察なのだから、何か別の方法を考えてくれそうなものだが。
せっかくの助言も退けられた僕だが、だから言って、「それなら仕方ないね」と簡単に900円をあげるほど、僕もお人好しではない。
「うーん、それでも、ちょっとお金はあげられないですから。それじゃ」
足早にその場を立ち去った。男はガッカリした表情を浮かべていたので少々後ろめたくもあったが、僕はホームへ上って行った。
それから10分ほど後に、駅にアナウンスが流れた。線路に石が置かれる悪戯のせいで、電車が止まってしまったとの事。なので、僕もホームにてしばらく待つ事に。
そこで、かの男はまだいるのだろうか?と階段入り口を除いてみたら、おお、なんと、まだいた。今度は誰にお願いしようかと、男はそこらをウロウロしている。ふ~む、本当に困っているのだろうか?ひょっとしたら、僕は900円をあげるべきなのだろうか?どうかな……?
結局僕はあげる事なく、しばらくしてやって来た電車に乗り込んだ。多分、僕は間違っていないのだろうと思う……。
しかし見方を変えれば、これは新手のカツアゲなのかもしれない。暴力的か否か違うだけで、お金を取るという狙いはまったく同じだ。
思い返せば7年前の秋、大学3年生だった僕は、奇妙な形で200円を失った事がある。そう、それは登校中の昼過ぎ、渋谷で起こったのだ。
「兄ちゃん、ちょっとごめんなー」
ハッキリ言って身なりの悪い、ホームレス風の50歳前後のおじさんが、僕の前に現れたのだ。
「あのなー、ごめんなー、今からさー、オレ、ちょっと仕事に行かなくちゃならなくってさ………。でもなー、ちょっと場所が遠くってさー……」
おじさんは本当にすまなさそうに話をしていた。とりあえず、黙って聞く僕。
「電車で行かなくちゃなんねえんだけど……………金がねえんだよー」
本当にそうかもしれない……何しろ見た目がみすぼらしい。所持金ゼロ、一日一日を何とか凌ぐ生活を送っていても、何も不思議はなさそうだ。
「それでさー…………本当に申し訳ねえんだけど…………190円だけ貰えるかなー…………?」
心底困っているようで、わずかに泣きが入っているかのような口ぶりだった。僕も到底お金持ちではないが、それでも、たった200円と言えば200円だ。それでこんなに困っているとは。
たかだか20代前半の小僧に、こんなに情けない頼み事、このおじさんにとっては相当辛かったであろう。ここまで腰を低くして、プライドをかなぐり捨てての懇願。悲壮さがヒシヒシと伝わってくる。それなのに、これを無視してしまっては、あまりにもおじさんがかわいそうだ。
それに、もしここで僕がお金を渡さなければ、おじさんはきっと、別の人に同様の事を頼むであろう。となると、おじさんはまたもう一度、惨めな思いをする事になる。やはりそれはかわいそうすぎるな………。
理不尽なお願いとは分かっている。しかし、やはりここは、僕が一肌脱いでやるべきではないのか?
僕は決意した。黙って財布から100円玉を2枚取り出し、おじさんに手渡したのだ。
「ああ、ありがとう」
おじさんは頭を下げてお礼を言い、そして申し訳なさそうな表情でこう言った。
「ごめんなー」
あまりお礼を言われるのも何なので、僕は軽く手を振って、無言でおじさんと別れた。
「兄ちゃーん、ごめんなー、ごめんなー」
後ろから、おじさんの申し訳なさそうな声が何度も聞こえた。僕は「気にしなくていいですよ」という意味で、笑顔でもう一度手を振り、学校へ向かった。おじさんの「ごめんなー」はまだ後ろから何度か聞こえた。
かくして僕は、突然の出来事により200円を失った。何だか釈然としない気持ちもあったけれど、おそらく僕は人の役には立てたし、まあ良しとしたかった。200円募金したと思って、自分の行動を納得させたかったのだ。
さて、学校に到着した僕は、講義前に教室にて、友達に、今日、登校中にこうこうこういう事があって、200円渡してきたよと話した。そして最後に、こう尋ねてみた。
「これって、オレ騙されてるかな?」
「騙されてるよ」
友達はキッパリと言った。僕のヴォランティア精神を粉々に打ち砕くが如くだった。
「でも、そのおじさん、本当に困っていそうだったし、申し訳なさそうにしてたよ」
「それが騙されてるんだよ」
友達は、またもスパッと言った。
「うーん、そうかなあ……」
「そうだよ」
3回連続で言い切られた。問答無用という口ぶりで、僕もこれ以上、何も言えなかった。そうか、僕は騙されていたのか……。
この時の経験が活きて、僕は一昨日、900円をあげずに済んだ。
そう、どんな状況にあろうとも、見知らぬ人に、やすやすと金銭を渡すべきではないのだ。7年前にそう学んだのだった。
それにしても、世の中には色んな方法でお金を巻き上げる方法があるものだ。相手が困っていそうだと、なかなか断りにくくてタチが悪い。
暴力的でオーソドックスなカツアゲなら、「こいつにお金を差し出す必要はない」と、判別が簡単なのですが。
こんな"困っているんで助けて下さい"カツアゲ、体験した事はありませんか?いやまあ、本当に困っている可能性も考えられるので、カツアゲと断定する事もできないのですが。
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