Foster & Son ready-to-wear shoes that are made by their own factory(フォスター&サンの自社工場製既製靴)
CATEGORY靴・服飾

ビスポーク・シューメイカーとして名高いフォスター&サンですが、最近、ノーサンプトンに既製靴生産のための自社工場を設立しました。以前からもフォスター&サンに既製靴はあったのですが、他社工場製でして、自社生産ではなかったんですね。
そして先日、その自社工場製既製靴のサンプルを拝見しまして、なかなか良い出来でした。綺麗な釣り込みと言い、丁寧な仕上げと言い、「英国製高級既製靴」の枠内ではトップクラスのクォリティですね。
もっとも、既製靴はまだ試作段階だそうで、今後、仕様が変更になる可能性はあるそうです。何より、あくまでサンプルなので、量産体制に入った後もクォリティが維持できているかまでは分かりません。

拝見したフォスター&サンの自社工場製既製靴は、通常ラインと上級ラインの二種類あり、こちらは通常ラインのサンプル。ただ、この通常ラインは短期間でなくなる予定だそうで、いずれは上級ラインのみの展開となるそうです。

通常ラインのアウトソール。

インソックスに入るロゴは、通常ラインも上級ラインも同じでした。僕の知る限り、39年前のフォスター&サンの既製靴も、これと同じロゴデザインでしたね。ただ、このロゴも、今後は変わる可能性があるそうです。

こちらがフォスター&サン自社工場製既製靴の上級ラインのサンプル。


上級ラインはシームレスヒールにフィドルバックと、上級っぽい見た目になっておりますね。でも個人的には、これらにかける手間があるなら、その手間を履き心地に関わる部分に費やすか、これらに手間を割かないで価格を下げるようにして欲しいなと思いました。
とは言え、販売のためなら、こう言った分かりやすい見た目アピールも大切なのでしょうね。それに、高級品の分野だと、価格を下げたら必ずしも売れるとは限らないのが面白いところです……。
シームレスヒールにフィドルバックを除けば、上級ラインの靴全体から感じる雰囲気はエドワード・グリーンと似ていると思いました。この自社工場の工場長は、エドワード・グリーンとコルテにて勤務歴があるそうです。

参考になるかは分かりませんが、上級ラインと通常ラインを並べてみました。手前が上級ライン、奥が通常ラインです。

こちらは、左が上級ライン、右が通常ライン。

上級ラインと通常ラインを真上から。上のラウンドスクエアトウのモデルが通常ラインで、下のエッグトウのモデルが上級ラインです。つまりラストが異なるわけですが、やはりあくまで試作段階なので、このラストが実際に展開された時も同じかどうかは分かりません。

こちらも、上が通常ラインで、下が上級ラインです。
サンプルを見た限りでは作りは良い出来でしたので、あとは価格と、どんなデザインがラインナップされるかが気になりますね。今回拝見したサンプルは、ロンドン最古のビスポーク・シューメイカーらしく、どれもトラッドで奇をてらわない、非常に普遍的な正統派のデザインでした。これもこれで良いのですが、ジョン・ロブ・パリやエドワード・グリーン、クロケット&ジョーンズをはじめとした、他の高級既製靴でもよく見られるデザインです。

そこで個人的には、今回のサンプルにあったデザインに加えて、以前にエマ・レイキンさんがビスポーク・シューズ用にデザインした、狐の顔を模したメダリオン↑を、既製靴でも使ったら面白いのでは?と思います。

そしてウィングチップならば、テリー・ムーアさんらしい、ウィングのラインがストレート↑で、

ウィング先端がArrow(=矢、矢印)型↑のモデルを、「テリー・ムーアモデル」として売り出せば良いのでは?とも思います。

あと、松田笑子さんは3アイレッツのウィングチップ・ダービーがお好きで、自分用に三足も作っているそうです。上画像は2004年11月に撮影した、その三足のうちの一足。この3アイレッツのウィングチップ・ダービーを「松田笑子モデル」として売り出せば良いのでは?と思ったりもします。

そして上画像の、ヘンリー・マックスウェルが得意としたスタイル、ショートノーズのラウンドトウで、アイレット脇のパンチングだけが小さい、内羽根セミブローグを、「ヘンリー・マックスウェルモデル」として売り出すとか。
僕はフォスター&サンの既製靴がどのように展開して行くかはまったく知らないので、以上は全て僕の勝手な妄想に過ぎません。ただ、フォスター&サンの個性がしっかり出たデザインでないと、「フォスター&サンの既製靴」の存在意義がないでしょうし、何より、「ビスポークは無理だけど、フォスター&サンやマックスウェルのスタイルの靴が欲しい」と言う方にとって、その個性がしっかり出ている既製靴は、嬉しい存在のはずです。
それに、ブランドの「代表モデル」があると、販売や宣伝もしやすくなります。例えば、エドワード・グリーンにとってのチェルシーやドーヴァー、オールデンにとってのローファーや990。そう言った、ブランドの「代表モデル」に、「テリー・ムーアモデル」や、「松田笑子モデル」や、「ヘンリー・マックスウェルモデル」があれば、成り得るんじゃないかな、と思ったりするわけですよ。
今回の記事、後半は僕の妄想だらけになりました(笑)。
- 関連記事
-
-
靴と服を巡る大冒険再び 2014/09/14
-
フォスター&サン日本受注会のご案内。靴談話帳も復活。 2008/08/28
-
Skomakeri Framåt AB and MANO Skoservice in Stockholm(ストックホルムのスコマケリ・フラモット・オービエとマノ・スコサーヴィス) 2015/12/07
-
ユニクロ初め、ついに ~ユニクロと僕~ 2007/01/23
-
Hisashi Sasaki in Milano(ミラノの佐佐木弥史) 2016/12/06
-
Amsterdam Bespoke(アムステルダムのビスポーク) 2015/11/04
-