Emelie Stenlund of Skomakeri Framåt that Swedish Royal Warrant Bespoke Shoemaker and Konomi Egawa of Hiro Yanagimachi workshop visited Shoes Repair Gato(スウェーデン王室御用達ビスポーク・シューメイカー、スコマケリ・フラモットのエミリー・ステーンルンドさんとヒロ・ヤナギマチワークショップの江川このみさんが靴修理店Gatoを訪問)
CATEGORY靴・服飾

スウェーデン王室御用達ビスポークシューメイカー、Skomakeri Framåt(スコマケリ・フラモット)所属の靴職人、Emelie Stenlund(エミリー・ステーンルンド)さんが二度目の来日をしております。
目的は日本各地の旅行と、ヒロ・ヤナギマチワークショップにて研修を受けるためです。そして、東京滞在中、僕の地元の靴修理店GATOさんに、ヒロ・ヤナギマチワークショップの製甲師、江川このみさんといらっしゃるとの事なので、僕も訪問日時に合わせて伺って参りました。エミリーさんとは、4年前にストックホルムの店舗にてお会いして以来です。

4年前に撮影した、スコマケリ・フラモットの職人さんたち(スコマケリはスウェーデン語でシューメイカーの意味)。中央でブーツを抱えているのは、店主のCarina Eneroth(カリーナ・エネロス)さん。一番右がエミリーさんで、当時はご結婚前だったため、お名前はEmelie Bergman(エミリー・ベルイマン)さんでした。
エミリーさんはStockholms Hantverksförening(=ストックホルム手工芸協会)における、若手独身女性職人を対象とした奨学金を2013年に授与されている、スウェーデンハンドメイド業界の若手有望株。その奨学金を使って、エミリーさんは2014年7月に、アメリカのオクラホマにある、ビスポーク・カウボーイブーツメイカー、Lisa Sorrell(リサ・ソレル)にて研修を受けております。
ちなみに僕は、リサさんと2010年の国際靴職人技能コンクール会場にてお会いした事があり、その時、リサさんとカリーナさんは仲良くお話ししておりました。カリーナさんとリサさんの親交は深いようですね。

スウェーデンにも靴職人組合があり、ドイツなどのマイスター制度と同じく、職人にも腕前によって、「Lärling(=見習い)」、「Gesäll(=職人)」、「Mästare(=親方)」と三段階に分かれております。そして、4年前時点のエミリーさんは、「靴修理師」の「職人」資格をお持ちで、上画像はその免状です。
そしてエミリーさんは、2016年に「注文靴職人」の「職人」資格を取得しており、順調にキャリアを積んでおります。上画像は、エミリーさんのインスタグラムにおける、注文靴職人の職人資格授与式の写真です。
さらにエミリーさんは、英国のBill Bird Shoes(ビル・バード・シューズ)やLastmakers House(ラストメイカーズ・ハウス)でも研修歴があり(ラストメイカーズ・ハウスはフラモットの皆様も一緒)、そして今回は柳町さんの工房にて研修と、技術習得に熱心です。

4年前の、エミリーさんの仕事の様子。この時、エミリーさんは仕事をしながら、僕によく話しかけて来ていたのが印象に残っております。後に日本への強い興味がある方と知って、納得いきました。何しろエミリーさんは新婚旅行先が日本周遊で、今回も前述のとおり、日本各地を巡っております。中には、僕が聞いた事もない田舎にも行っており、僕より日本の地方に詳しいぐらいです(笑)。
さらに凄いのは、エミリーさんは週に一度、スウェーデン人日本語教師から日本語を学んでおり、それ以外の日も日本語を独習しているとの事。その成果あって、現在は少々日本語が話せ、発音もとても良いの驚嘆しました。
いつから日本に興味があるのか伺ったところ、「覚えてない。ずっと昔から」との事で、筋金入りの日本好きです。日本のマンガも大好きだそうで、一番好きな作品は、「乙嫁語り」だそうです。また、「カベドン」とか、「オタク」とかの言葉もご存知でした(笑)。

エミリーさんとの英語通訳をして下さる、江川このみさん。ヒロ・ヤナギマチワークショップでは外国人のお客さんも多いため、職人さん全員が英語接客可能なように、工房では英会話の訓練も行っているそうです。このお客さんと真摯に取り組む姿勢、真面目な柳町さんらしいなと思いました……。
そして、江川さんは今年6月にフラモットに研修に行っていた事もあり、エミリーさんとも仲良しです。江川さんによると、エミリーさんは、「美味しい」と言う日本語が、いかにも「美味しそうな」語感があって、好きな日本語だそうです(笑)。日本人では分からぬ観点のため、興味深いですね。


Gatoの店主である山田洋輔さんの仕事を見学する、エミリーさんと江川さん。もちろん、洋輔さんだけでなく、弟の惇二さんも凄腕です。
江川さんによると、エミリーさんは今回の東京滞在において、一番見に行きたかったお店がGatoさんだそうです。北浦和まで見学に来る、エミリーさんの情熱も凄ければ、スウェーデンの靴職人さんも興味を持つ、山田さんご兄弟の技術も凄い!と思いました。
エミリーさんはインスタグラムを通じてGatoさんを知ったそうで、フラモットはビスポーク・シューメイカーながら修理の仕事が多く、それでGatoさんも目に留まったのでしょうね。そして、エミリーさんはフラモットだけでなく、同じくストックホルムにある靴修理店、Södermalms Sko & Nyckelservice(ソデマルムス・スコ&ニッケルサーヴィス)でも勤務しており、その店主さんもGatoさんのインスタグラムをフォローしているそうです。
僕自身も、Gatoさんを知ったのはインスタグラムを通じてです。その綺麗な修理の出来栄えに興味を持ち、僕も手持ちのオールデンの修理をお願いしました。
そして、上記の修理受け取り時の2017年2月、山田さんご兄弟と康澤民さんとラーメンを食べに行ったのですが、その際、こう言った会話があったんですよね。
「インスタを始めてから、海外からも見てくれる人がいて嬉しいですね。スウェーデンのエミリーって靴職人からも、インスタでフォローされていますよ」
「あ、私もフォローされているー」
「エミリーさんなら僕、以前にストックホルムで会った事がありますよ。彼女はスウェーデン王室御用達のビスポーク・シューメイカーで働いている靴職人です。山田さんの仕事、エミリーさんにも見せたいですよ」
今回、その言葉が現実となって嬉しいですねー……。
ちなみに洋輔さんは、2009年にGatoを開業したものの、なかなか経営が波に乗らず、開業して3・4年後には、お店を閉めようかと思ったそうです。
その当時、ファミレスにてオムレツを食べながら、惇二さんに閉業の相談をしたところ、惇二さんから、兄弟でお店を開けたのは、とても嬉しい出来事だったとの話を聞かされ、洋輔さんはもう1年頑張ってみようと決意をされたそうです。
すると、その年から売り上げが上向いて来て、現在では依頼が殺到する人気店。さらには海外の職人さんも見学に訪れ、洋輔さんとしては感慨深げでした。
僕が個人的に驚くのが、山田さんご兄弟は靴修理チェーン店、リアット!出身で、それ以外では靴関係の仕事のご経験はないとの事。
つまり、クイック系の靴修理技術を学んだだけで、製靴を学んだわけでもなければ、ユニオン・ワークスに代表されるような、高級靴を意識した靴修理店で勤務したわけではないそうです。それでいながら、現在の高級靴をこれだけ綺麗に仕上げる技術は、ご兄弟が独自で修練を重ねて、技術を磨いた結果との事。経歴やネームヴァリュー、コネクション、宣伝の小細工とか関係なく、見る人が見れば技術の高さが分かってもらえ、そして伝播するのは、インスタグラムをはじめとしたSNSの良さなのかなー、と思いました。
実際、僕がインスタグラムにて上画像を投稿した翌日には、モスクワの靴修理と靴磨きのお店、The Penny Yard(ザ・ペニー・ヤード)からメッセージが届いたそうです。そして、今年9月にはそのペニーヤードから修理の依頼が入ったとの事。Gatoさんの技術とインスタグラムの発信力、凄いとしか言いようがありません……。
余談ですが、ペニーヤードは過去に柳町さんのトランクショーも行っており、日本とも縁がございます。

最後に皆で記念撮影をしました。35年以上浦和在住の僕としては、近所に高い技術の靴修理店がある事が嬉しいです。今後も素晴らしい修理を続けて下さい。そして、エミリーさんと再会できて嬉しかったです!皆様、ありがとうございました!
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