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The high prize winning shoes of World championship in shoemaking(ワールドチャンピオンシップ・イン・シューメイキングの上位入賞靴)

パトリック・フライさんのコンテスト1位靴展示

10月6日の、伊勢丹におけるワールド・チャンピオンシップ・イン・シューメイキング(靴作り世界選手権)の上位入賞靴展示は、優勝したPatrick Frei(パトリック・フライ)さんだけでなく、準優勝のDaniel Wegan(ダニエル・ヴィガン)さん、3位のPhilippe Atienza(フィリップ・アティエンザ)さん、そして日本人靴職人さん上位3名の靴も手に取って見られました。

まず、このワールド・チャンピオンシップ・イン・シューメイキングについて、主催者であるJesper Ingevaldsson(イェスペル・インゲヴァルソン)さんのBlog、「Shoegazing(シューゲイズィング)」に書かれたコンテストの案内を基に、日本語訳して書いてみます(※こちらの記事も参照)。内容が分かりやすいよう、意訳している箇所もあるのをご了承下さい。もし誤訳があった場合は、ご指摘頂けると幸いでございます……。

コンテストの開催は今年4月7日で、場所はロンドン。参加料金は無料で、優勝者には3,000£、準優勝者には2,000£、3位には1,000ポンドの賞金が贈られます。この上位三名の靴については、伊勢丹をはじめ、オスロのスコマーケー・ダゲスタッドなど、世界各国のお店で展示されます。

出品する靴については、下記の規定がありました。

プレーンの内羽根キャップトウ。アッパーのパターンは少なくとも3パーツに分け、ホールカットのイミテーションスティッチなどは不可(つまり、パターンを分けてないのに、スティッチでパターンを分けているように見せるのは不可)。

アッパー革は黒のボックスカーフ。

UKサイズ8の左足。

シングルレザーソール。

掬い縫い、出し縫い、いずれも手縫い。

ソールとヒールの側面は黒、底面はナチュラル仕上げ

ブランディングなし

出品靴は審査において、ラストやシュートゥリーが抜かれた状態で展示される。ただ、シュートゥリーを提供したならば、イヴェント期間中、ショーケースでの陳列に使用される。

会社としての参加、個人としての参加、いずれも可能。靴製作に携わった全ての人と、各々がどの行程を担ったかを記載する事(私たちは全出品者の完全な情報を聞いてないが、大抵は分かっている←※この一文の訳、自信がありません……)。


そして、審査基準は下記3点です。

・「難易度」最大10ポイント。
どれだけ難しい行程が行われているか、大規模にも、細かいディテイルにも、どれだけ高度な作りがされているかなどを審査。

・「出来栄え」最大10ポイント。
靴の構築の様々な箇所がどれだけ上手く仕上がっているか、どれだけすっきりとした綺麗な仕事か、仕上げのレヴェルがどれだけよく成し得ているかなどを審査。

・「デザイン・美学」最大5ポイント。
靴の全体的な美しさ、プロポーションなどを審査。


審査員はイェスペルさんをはじめ、James "Jim" McCormack(ジェイムス・"ジム"・マコーマック)さん、Nicholas Templeman(ニコラス・テンプルマン)さん、高野圭太郎さんと言った、 ビスポーク・シューズの職人さんや靴ブロガーさんたち、計9名。

審査時、靴は匿名です。ただし、イェスペルさんだけは、出品靴の登録や質問の返答と言った世話をするため、コンテスト参加者について知ります。しかし、批評や審査時は、どの靴が誰によるものかは、イェスペルさんは知らないでしょう。他、全ての審査員にとって、靴は厳密に匿名です。


以上でございます。結果として、参加者はドイツ、スウェーデン、フランス、日本、イタリア、中国、アメリカ、セルビア、モルドヴァ、ハンガリー、モンゴル、チェコ、ロシアと13国から、合計30足。日本からは7名と最多参加国であり、さすが現代におけるハンドメイドシューズ大国と思わされます。

ちなみに、イェスペルさんが靴作りコンテストを行いたい意向は、僕は昨年5月にお会いした際に聞いておりまして、それを実現させて、多くの国の職人さん、お店とともに展開していくイェスペルさんの企画力、実行力は凄いなと思います。



ダニエルさんのコンテスト2位靴

さて、こちらはコンテスト準優勝で、ガジアーノ&ガーリングのビスポーク部門長、ダニエル・ヴィガンさんの作品です。製甲は同じくガジアーノ&ガーリングの製甲部門長、Kay Anderson(ケイ・アンダーソン)さんが行っております。

なんと、出し縫いは1インチあたり21針!と非常に細かいです。現在、出し縫いはいかに細かくても16-18針ほどなので、その細かさが伺えます。これについて、マンドールの村田英治さんは、「ダニエルさんから、出し縫いには日本のラミー糸を使用していると聞いていたのですが、ラミー糸だと太くて、こんなに細かく縫えないはずです。どうやったのだろう?」と不思議がっておりました。ラミー(苧麻)糸は、欧州にて底付けで主に用いられる、リネン(亜麻)糸より太目なのです。この出し縫いも、ただ細かいと言うだけでなく、ダニエルさん独自の手法が隠されているのかもしれません。


ダニエル・ヴィガンさんのコンテスト2位シューズのバックスタイル

このコンテスト用靴は、メンズシューズもヒールが高かった、ヴィクトリア時代の靴からインスパイアされて作ったそうです。そのためヒールが高いのですが、黄矢印のとおり、踵のラインが乱れなく綺麗に流れる、見事な造形美と、それを成し得る技術です。白矢印のとおり、ウエスト部もしっかり立体成形されていますね。


ダニエルさんのコンテスト2位靴

逆側はウエストの絞り込みが深い分、より成形が難しいですが、それも綺麗にできています。


ダニエルさんのコンテスト2位靴アウトソール

ヒールが高いゆえにソールにも角度もあります。そして、この高角度ながら、これほど綺麗なベヴェルド・ウェスト、およびフィドルバックを造形するのは難しいのですが、素晴らしい仕上がりです。

そして本来、フィドルバックはレディース用の技法。なぜなら、レディースシューズで見られる、華奢なウエスト部に剛性を持たせるためです。あと、ヒールが高いゆえにアウトソールも見えやすく、そのアウトソールの見栄えを意識しているためとも聞いた事があります……。
このコンテスト用シューズはレディースのようにヒールが高いため、フィドルバックはそれに見合っているとも言えますね。


フィリップさんのコンテスト3位靴

続いて3位です。ジョン・ロブ・パリの元ビスポーク部門工房長で、2006年よりマサロの責任者と、フランスの名門を渡り歩き、2016年に独立した、フィリップ・アティエンザさんの作品です。出し縫いは1インチ当たり12針。英国のメンズドレスシューズの場合、10-12針が標準的なので、それに沿っていますね。


フィリップ・アティエンツァさんのソール

ヒールは釘を表面に出さない、ブラインド・トップピース。釘を隠すための手間がかかりますが、見た目がスッキリしますし、釘がない分、滑りにくくなる効果もあるのかも?しれません。


日本人職人さんの作品3足

そして、伊勢丹のみの特別展示と言う事で、日本人上位三名の靴も展示されていました。


島本亘さんの作品

イル・ミーチョでボトムメイカーとして勤務して10年目と言う、島本亘さんの作品です。クラシックなキャップトウとは異なるパターンなのが規定に反しているため、10%の減点となったそうですが、それでも4位となっております!
とは言え、こちらのインタヴュー記事によると、このパターンカットによる製靴自体は手間のかかる技法だそうで、もし審査方法が異なっていれば、順位もさらに上がったのかもしれませんね。


島本亘さんのアウトソール

ヒールの形状も面白いです。


安藤文也さんの作品

5位の安藤文也さんの作品。安藤さんの作品は、製作過程の写真を見ると、古典的な二重キャップで作られているようで、安藤さんの果敢なチャレンジ精神が伺えます。


安藤文也さんのアウトソール

安藤さんは、2017年度にサルワカ・フットウェアカレッジを卒業したばかりで、靴作りを始めてわずか3年だそうです。それでもこの綺麗な仕上がり、そして上位入賞は素晴らしいです!


宇田川聖紀さんの作品

7位の宇田川聖紀さんは、靴はもちろんの事、シュートゥリーもご自身による製作だそうです。宇田川さんは33歳で、サルワカ・フットウェアカレッジの2010年度卒業生。9年前に靴作りを始め、それから2年後に英国と欧州に渡り、ジョージ・クレヴァリーのボトムメイカーとして仕事をし、現在は東京に戻り、自身のブランド、およびフリーランスで日本のビスポーク・シューメイカーの仕事をしているそうです。


宇田川聖紀さんのアウトソール

宇田川さんも、ヒールの釘を全て隠す、ブラインド・トップピースですね。


以上が伊勢丹にて展示されていた靴です。日本人参加者は、このお三方に加えて、白樫徹哉さん、本間ゆうきさん、吉本晴一さん、川島謙二郎さんの計7名でした。

そして、僕がお会いした事がある職人さんでは、6位の好結果だったAndreas Reijers(アンドレアス・レイヤーシュ)さん、Igor Suhenko(イゴール・スヘンコ)さん、Valentin Frunză(ヴァレンティン・フルンザ)さん、Erik Martin Lawart(エリック・マルティン・ラヴァート)さん、会社としてVASS(ヴァーシュ)が参加しております。あと、お会いはしていませんが、Corthay(コルテ)のChristophe Corthay(クリストフ・コルテ)さんと、そのコルテの工房にてちょっとお見かけした、Christophe Algans(クリストフ・アルガン)さんも出品しております。


パトリック・フライさんのコンテスト1位靴展示

伊勢丹での展示期間中、6日だけ、パトリックさんとともに来場した、主催者のイェスペル・インゲヴァルソンさんと、お話しする舘さんたち。


パトリック・フライさんのコンテスト1位靴展示

イェスペルさんが履いていたのは、注文一足目が納品となった、マンドールのビスポーク・シューズです!


パトリック・フライさんのコンテスト1位靴展示


パトリック・フライさんのコンテスト1位靴展示

そして、イェスペルさんとパトリックさん、ブートブラックの品を数点購入しておりました。高級靴好きはシューケア用品も好きなのは、万国共通です!(笑)


※今回の記事は、ワールド・チャンピオンシップ・イン・シューメイキング主宰者の「Shoegazing」の記事も参考に作成しております。

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