靴磨きコンテスト「Shoesing Awards(シューズィング・アウォーズ)」に見るロシアの高級靴業界の様子
CATEGORY靴・服飾
4月16日にモスクワのモスクワ・マリオットグランドホテルで、靴磨きコンテストの「Shoesing Awards(シューズィング・アウォーズ)」が開催されておりました。前年が初回だったので、今年で2回目ですね。
とは言え、僕はこれについてSNSで知っただけで実際に見に行ったわけではありません。ですので、今回の記事はロシア語なり英語なりで書かれたウェブでの情報を日本語でまとめただけなのですが、自分の備忘録も兼ねて、ご参考までに書きますです……。
今回のシューズィング・アウォーズでは、グラッサージュ部門(おそらく鏡面仕上げを競う)とパティーヌ部門(未染色革に色付けの技術を競う)の二つがあり、グラッサージュ部門は作業時間20分、パティーヌ部門はペインティングに5時間と仕上げに30分、合計5時間半の作業時間。
グラッサージュ部門では予選があり、その予選から5人に絞って決勝戦を行うとの事。
グラッサージュ部門の優勝者には賞金20,000ルーブル、準優勝者には賞金10,000ルーブル。
パティーヌ部門優勝者には賞金30,000ルーブル、準優勝者には賞金20,000ルーブル。
(※2018年4月19日現在、1ルーブル1.77円ほど)
参加は無料。そして、審査員は下記の方々です。
・イタリアのパルマの靴磨き店、Dandy Shoe Care(ダンディー・シューケア)のオーナーであるAlexander Nurulaeff(アレクサンダー・ヌルラエフさん)。ヌルラエフさんはソ連出身だそうですね。
・ベルルッティモスクワ店のカラリストを12年ほど務めた、Федор Жданов(フョードル・シュダノフ)さん。
・The Rake Russiaの編集長であるАлександр Рымкевич(アレクサンダー・リムケヴィッチ)さん。
・Ostojenka Bespoke Atelier(オストジェンカ・ビスポーク・アトリエ)のオーナーであるПавел Ананин(パイヴェル・アナニン)さん。オストジェンカ・ビスポーク・アトリエは前大会のジェネラル・パートナーでもあり、店舗が会場としても使われました。そして、ピエール・コルテも取り扱っており、やはりパティーヌには一家言あるのかもしれません。
・モスクワ、サンクト・ペテルブルク、サマーラとロシアに三店舗ある高級靴店、Checkroom(チェックルーム)の社長、Алексей Врублевский (アレクセイ・ヴルブレフスキー)さん。ヴルブレフスキーさんはロシアにおいて靴磨きの技術で著名な方だそうで、日本でも靴磨きを学んだ事があるとか。
なお、アナニンさんとヴルブレフスキーさんは前回も審査員を務めております。
パティーヌ部門の参加者は5名で、優勝者は上画像左のНикита Русов(ニキータ・ルソフ)さん。ルソフさんはサンクト・ペテルブルクにある靴サーヴィス店、Oxfords&Brogues(オックスフォード&ブローグス)にて勤務されていそうです。
そして、このオックスフォード&ブローグスのマネージャーである、Александр Чмирев(アレクサンダー・チミレフ)さんは、前回に続いて今回もグラッサージュ部門で出場しております。
準優勝者は、上画像右のЛюдмила Стихина (リュドミラ・スティヒナ)さん。スティヒナさんはエカテリンブルクにあるLimerance Fashion Center(リメランス・ファッションセンター)での男性用品VIPマネージャーだそうです。
なお上画像中央は、ダンディー・シューケアのアレクサンダー・ヌルラエフさんですね。
上画像の1-3枚目がルソフさん、4-6枚目がスティヒナさんの今回のコンテストにおけるパティーヌ画像です。
グラッサージュ部門の参加者は10名。当初は上記のとおり、予選で決勝進出者5名を選ぶ予定でしたが、本番では6名を選んだようです。そして優勝者は、上画像左で前回も参加したАнтон Цыпин(アントン・ツィピン)さん。ツィピンさんはウファにある靴磨き店、Пара В Порядке(パラ・ヴ・パリヤドキ)にて勤務しているそうです。
準優勝者は上画像右で、イルクーツクのショッピングセンター、ORANGE(オレンジ)にて靴磨きを営む、Михаил Мазов(ミハイル・マゾフ)さん。マゾフさんは、前回の優勝者である前回の優勝者であるДмитрий Сидоренко(ドミトリー・シドレンコ)さんに靴磨きを教わったそうです。
ご覧のとおり、両部門の優勝者には、賞金に加えて金色のプレートが貼られた靴ブラシ、準優勝者には銀色のプレートが貼られた靴ブラシを贈られており、なかなか洒落ていますね。
なお、今回、シドレンコさんはパティーヌ部門とグラッサージュ部門の両方に参加したものの、いずれも入賞を逃したそうです。
参考までに、上画像が今回のシューズィング・アワードにおけるシドレンコさんのパティーヌです。
上画像が会場の様子ですが、観客もまずまず来ておりますね。ロシアでは靴磨きサーヴィス店がちらほら出て来ており、その事実に驚きますし、こう言ったコンテストが開催されているのにも驚きますし(しかも賞金付き)、さらにご存知の通りロシアは広大な国で、それでも遠方からコンテストに参加される方がいるのにも驚きます。コンテスト参加者の中で、最もモスクワから遠いのがマゾフさんのいるイルクーツクですが、イルクーツクからモスクワまで、飛行機で早くても5時間半かかりますから……。
考えてみれば、サンクト・ペテルブルクのビスポーク・テイラー、ヤマシェフ・ルスティン・エドゥワルドヴィッチさんも趣味でパティーヌをしておりましたし、ロシアではありませんが、ロシアに近いウクライナのハルキウのラストメイカー、オレグ・クリギンさんも、趣味でラストに色付けをしてたなー、と思い出します。ロシアにて、靴磨きの熱が高まっているのは間違いありませんね。
そして、もしかしたらロシアでは、高級靴の需要もこれから高まって来るのかもしれません。現在のロシアでも高級靴を取り扱うお店はありますが、英仏伊やドイツ、日本などと比べたら少ないですし、ビスポーク・シューメイカーもあるものの、手間や材料費を落として、価格も安い路線が主流です。その状況が変わって来ている様子はあり、その中で日本の高級既製靴や、日本のビスポーク・シューメイカーも、ロシアで展開されたりしたら面白いよなー、と思ったりもします……。
もっとも、雪が多い国ですから、ドレスシューズにお金をかけるのは厳しい現実があるのかなと思ったりもします(笑)。レザーソールだったらなおさら……。
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