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Armonia del Sarto(アルモニア・デル・サルト)の五月女泰彦さんの展示会

五月女泰彦さん

いささか日にちが経ってしまいましたが、2月26日にArmonia del Sarto(アルモニア・デル・サルト)の五月女泰彦さんの展示会に行って参りました!五月女さんは都内にある国内ブランドの縫製工場で勤めた後に、イタリアのモデナにあるSartoria Bertazzoni(サルトリア・ベルタッツォーニ)にて修行。そして14年に、東京の日暮里にて独立開業された職人さんです。


五月女泰彦さんの展示ジャケット

会場では、完全ミシン縫いの青、30%手縫いの緑、50%手縫いの赤と、三着のジャケットが展示されており、これらは色が異なるだけで、どれも同じカノニコのシルクウールツイード生地。パターンもデザインとしては同じですが、手縫いパターンは胸のアイロンワークのために少しだけ違うそうです。あえて同種の生地、近似のパターンを使う事により、手縫いの割合によってどう異なるかを分かって頂こうと言う趣旨なわけですね。

そして試着させて頂くと、完全ミシン縫いでもカーディガンのように軽く柔らかく、ぐいぐい伸びるかのように体に追従する、快適な着心地にびっくり!30%手縫い、50%手縫いだと、その柔らかさがさらに顕著になります。
これらのジャケットは身長178cmの五月女さんに合わせて作られており、身長153cmの僕には、当然合うように作られておりません。それでも驚くほどの着心地の良さだったので、これで僕の体型に合わせて作ったら、果たしてどれほどの着心地になるのか……五月女さんの腕前に驚いた次第です。

なお、五月女さんのビスポーク・スーツは30%手縫い(つまり緑のジャケット)が基本仕様で、もし50%手縫いが希望であれば、追加料金が発生するそうです。


五月女泰彦さんの展示ジャケット

三着のジャケットを並べて比べてみると、完全ミシン縫いの青ジャケットの方がラインが直線的なのがお分かり頂けますでしょうか。そして30%手縫いの緑、50%手縫いの赤と、手縫いの割合が増えるほど、ラインが柔らかくなっていきます。特にショルダーラインとラペルのラインが分かりやすいですね。



五月女泰彦さんの展示ジャケット


五月女泰彦さんの展示ジャケット


五月女泰彦さんの展示ジャケット

ご覧のとおり、三着ともに胸ポケットはバルカで、これが五月女さんのジャケットの基本仕様。イタリアらしいディテイルですね。


五月女泰彦さんの展示ジャケット

ビスポーク・スーツの醍醐味の一つがバックスタイル。注文主の体型に合わせて作るビスポークは背中にも皺が入り辛く、結果、ラインが乱れる事なく綺麗に流れますね。


五月女泰彦さんの展示ジャケット


五月女泰彦さんの展示ジャケット


五月女泰彦さんの展示ジャケット


五月女泰彦さんの展示ジャケット

こちらは五月女さんご自身が着用されていた、07年か08年頃に自作されたジャケットのバックスタイル。鋭角的なラインが惚れ惚れするカッコ良さです!


五月女泰彦さんの展示ジャケットのショルダー

展示されていたジャケットの袖付けはマニカ・カミーチャ、つまりギャザーがある雨降り袖です。もっとも、五月女さんのジャケットはマニカ・カミーチャが標準仕様と言うわけではなく、ご自身のスタイルであるイタリアらしさを強調するため、今回の展示ではあえてマニカ・カミーチャで作ったとの事です。


五月女泰彦さんの展示ジャケットのショルダー


五月女泰彦さんの展示ジャケットのショルダー


五月女泰彦さんの展示ジャケットのショルダー

袖付けも手縫いの割合が多い方が表情も柔らかいですね。そして何より、着心地が明らかに違っており、手縫いの割合が多い赤ジャケットの方が、ふわりと優しく肩を包み込みます。


五月女泰彦さんの芯地

五月女さんは出来芯を使わず自作しており、その芯地もイタリア製の柔らかい物を使用するこだわりようです。台芯である上画像は、左から厚地、中肉、右二つは薄地と、それぞれ厚みが異なり、用途に応じて使い分けしております。


五月女泰彦さんの芯地

こちらは台芯に乗せるバス毛芯でして、上がコート用で下がスーツ用と、コート用の方が少し厚いです。もちろん、これらもイタリア製です。


五月女泰彦さんの芯地

そして、台芯とバス毛芯だけの二重構造が、五月女さんの芯地の基本仕様。通常、ジャケットの芯地はさらにフェルトを乗せて三重か四重ですが、五月女さんは現代のニーズに合わせて、より軽く柔らかく仕上げるべく、二重にしているとの事。二重のみの芯地と言えばナポリのスーツですが、ナポリのスーツと違うのは、芯地の腕の付け根部分には切り込みを入れず、ここにもハ刺しを入れて、しっかりとラインを出すようにしているとの事です。

胸部のハ刺しは、ハの字を横向きにして入れるテイラーさんもいらっしゃいますが、五月女さんはご覧のとおり、縦向きです。

「人体は縦向きなのだから、ハ刺しも縦に入れるべきだと思っています」

こう言ったところでも、テイラーさんごとの考え方の違いが伺えますね。


五月女泰彦さんのショルダーパッド

柔らかい仕立てを活かすべく、五月女さんのショルダーパッドは5mmほどと、やはり薄いですね。


ベルタッツォーニさん

こちらは五月女さんの師匠である、Bertazzoni Gabriele(ベルタッツォーニ・ガブリエーレ)さんが、フェラーリ社長のEnzo Ferrari(エンツォ・フェラーリ)氏お抱えのサルトとして紹介されたイタリアの記事です。


ベルタッツォーニさん


サルトリア・ベルタッツォーニさんのオーダーシート


サルトリア・ベルタッツォーニさんのオーダーシート

ベルタッツォーニさんが所有する、エンツォ・フェラーリ氏のオーダーシート。


エンツォ・フェラーリの名

エンツォ・フェラーリ氏の名前がしっかりと書かれておりますね。

なお、ベルタッツォーニさんの芯地は、台芯とバス毛芯に、表地の共布を乗せて(フェルトではない)の三重構造が基本仕様だったそうです。ハ刺しはマシンで、ショルダーパッドも五月女さんの物より厚めでした。

五月女さんは前述のとおり、芯地は二重でハ刺しもハンドなので、お師匠さんの方法をそのまま踏襲しているのではなく、"五月女さん流”で作られているのが分かりますね。ちなみに五月女さんが二重の芯地を基本仕様としたのは、イタリアから帰国後だそうです。


五月女泰彦さんの金の鋏賞参加証書

五月女さんがモデナでの修業時代、イタリアの若手テイラーのコンペティションであるForbici D’oro(フォルビチ・ドーロ)、つまり金の鋏賞に参加した証書。金の鋏賞はイタリアの州ごとに選考会があり、それから全国の選考会へと進むのですが、五月女さんは選考員であるベルタッツォーニさんの後押しで、外国人ながら特別に参加を許されていたため、州の選考から先へ進む事はなかったそうです。ただ、この時にしっかり評価して頂いたのが、独立開業するにあたって大きな自信になったとの事でした。また、選考会については、「思っていたより真剣に審議されていた」ともお話されていました(笑)。

今回の展示会では、手縫いの良さはもちろんの事、五月女さんの服作りのこだわり、着心地の良さの工夫が伺えて非常に勉強になりました。展示会で飾られていた三つのジャケットは、現在は日暮里にある五月女さんのアトリエにあるそうでして、現在でも五月女さんにご連絡すれば、実際にご試着可能との事です。

五月女さん、素敵な展示会、どうもありがとうございました!

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