Alberto Nolano, Sartoria Virgilio and Ambrosi in Napoli(ナポリのアルベルト・ノラノ、サルトリア・ヴィルジーリオとアンブロージ)
CATEGORY靴・服飾

【Alberto Nolano, Sartoria Virgilio(アルベルト・ノラノ、サルトリア・ヴィルジーリオ)】
住所:Corso Amedeo di Savoia, 256 Napoli
価格:ビスポーク・スーツ、1,500ユーロ~。ビスポーク・ジャケット、1,000ユーロ~。ビスポーク・シャツ、150ユーロ~。
ビスポーク・スーツは仮縫い2回、15-20日で完成。ビスポーク・シャツは仮縫い1回、1週間で完成。シャツ生地はイタリア製のみを使用。英語可。

左が85年生で、オーナー兼シャツ職人のAlberto Nolano(アルベルト・ノラノ)さん。右がアルベルトさんの叔父様で、僕が伺った当時は70歳、サルトのGiuseppe Tommasini(ジュゼッペ・トマジーニ)さん。このお二人によるお店です。

ナポリ製スーツらしく、ほとんど手縫いでして、ダーツでさえも手縫いでした。縫製およびボタンホールとボタン付、全てシルク糸です。

芯地の肩部分でして、動かしやすいように切込みが入っており、そして柔らかさを意識してでしょうか、この箇所のハ刺しは粗めです。
なお、芯地は台芯にバス毛芯を乗せるだけの二重構成で、これがナポリのスーツらしい軽さと柔らかさに繋がっております。ナポリ以外では、三・四重が一般的ですね。

ショルダーパッドに入れるスティッチも手縫いでして、この縫い糸についてはコットン糸です。

トラウザースもベルトループの取り付け、ポケット口だけでなく、脇の直線縫いも手縫いです。

アルベルトさんの作業中。ナポリのサルトリアはパターンを作らない事で知られますが、このお店ではシャツはもちろん、スーツもパターンは作るそうです。
そして伺って驚いたのが、スーツのみならず、シャツの縫製やボタンホール、ボタン付にもシルク糸を使用するそうです。アルベルトさんだけでなく、他のナポリのシャツメイカーでも、作成にシルク糸を使うのは普通でした。ナポリ以外のシャツメイカーでは、シャツ生地はコットンのため、そのコットンと馴染みが良いようにコットン糸を使用するのが一般的なので、これは意外でした。

シャツのサンプルはなかったのですが、アルベルトさんがご着用されていた自作のシャツを見ると、アームホールが狭く、さぞかし動かしやすそうですね。

腕を上げても脇がだぶつかず、しっかり付いて来ていますね。そしてもちろん、袖は後付けです。

ナポリのシャツらしく手縫いの箇所も多く、ご覧のとおり、前立ても手縫いです。

店内の様子です。

【Ambrosi(アンブロージ)】
住所:Via chiaia 184, Napoli
価格:ビスポーク・トラウザース、1,000ユーロ~。
仮縫い1回、3ヶ月で完成。四代続く、トラウザース専門メイカーです。英語可。

熱気あふれるアンブロージの工房。貼られているマラドーナのポスターがナポリを思わせますね(笑)。

80年生まれで四代目当主のSalvatore Ambrosi(サルヴァトーレ・アンブロージ)さん。トランクショーのため海外出張も多いご多忙な方でして、わずかでも時間があればすぐに針を取り、縫製作業を少しでも進める姿が印象的でした。二つ上の画像からでも分かるとおり、肩にスマフォを挟んで電話応対をしつつも仕事をされて、まさに1秒でも惜しいほどに働いておりました。
なお、ナポリのサルトリアはパターンを作らない事で知られますが、トラウザース専門メイカーであるアンブロージさんも、やはりパターンは作らないそうです。
「ビスポークでパターンは必要ありません。必要なのはサイズだけです」

ちなみにアンブロージさん、靴はイル・ミーチョを履いておりました♪シャツはアンナ・マトゥオッツォさんに注文しているそうです。

三代目である、お父様のAntonio(アントニオ)さんも現役の職人さんです。

お母様のNunzia(ヌンツィア)さんも職人さんで、縫製作業に勤しんでおられました。

完成品のトラウザースは、フィットと美しいラインが両立するよう、黄矢印が示すとおり、アイロンワークでしっかり曲げられているのが分かりますね。
縫製は「95%が手縫い」との事で、基本的にシルク糸を使用です。シルク糸の使用理由については、「丈夫だから」との事でした。
ただ、白矢印が示す、股下の直線縫いはミシン縫いで、縫い糸も「丈夫かつストレッチするから」と、ポリエステル糸を使用です。もちろん、同じ直線縫いでも、トラウザース外側のサイドシームはシルク糸による手縫いです。

腰回りももちろん手縫いです。ただ、この腰回りとお尻の中央の縫い糸については、手縫いながら「ストレッチするから」と、コットン糸を使用です。

黄矢印にあるボタンフライの一番下は手が入れにくい箇所なので、ボタンホールをわざと斜めにして、ボタンがかけやすい工夫をしております。

ポケットの閂止めなども手縫いですね。

ダブルの裾はボタン止め仕様。

工房内にある試着室です。

工房はビルの一室にあり、その入口です。

そして、僕が伺った当時は同じビル内にあるより大きい部屋に移転準備中でして、その移転完了前の新工房です。

こちらも新工房で、広い場所に移転、かつ忙しそうなアンブロージさんのご様子から、お仕事に成功している事が伺えました。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年6月1・5日時点のものです。
※17年1月29日0時10分、記事に一部加筆しました。
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