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Sartoria Pirozzi in Napoli(ナポリのサルトリア・ピロッツィ)

CATEGORY靴・服飾
ピロッツィさんのショールーム

【Sartoria Pirozzi(サルトリア・ピロッツィ)】
住所:Viale Antonio Gramsci, 23, 80122 Napoli
価格:ビスポーク・スーツ、2,500ユーロ+生地代~。参考までに、生地代は500ユーロ~。ビスポーク・シャツ、200ユーロ~。

ビスポーク・スーツ、仮縫い2回、60日で完成。ビスポーク・シャツ、仮縫い1回、30日で完成。英語可。


ピロッツィさんご家族

お店の中心であるピロッツィさんご家族。左から、娘さんでマネジメントを務めるGiovanna(ジョヴァンナ)さん、息子さんのDomenico(ドメニコ)さん、1964年にお店を創業したNunzio(ヌンツィオ)さん、弟さんのFelice(フェリーチェ)さん。


ピロッツィさんのビスポーク・サンプル

優雅なラインに惚れ惚れするサンプルスーツ。ナポリのスーツらしく、袖付、襟付などの主要箇所はもちろん、他の多くの箇所が手縫いです。


ピロッツィさんのビスポーク・サンプル

メンズのサンプルスーツは、いずれもゴージが高いですね。


ピロッツィさんのビスポーク・サンプル

レディースも作っており、そのサンプルです。


ナポリのスーツのダーツ

ピロッツィさんのサンプルスーツの胴体部でして、ナポリのスーツならではのダーツの取り方が分かりますね。一般のスーツだと、フロントダーツは白点線にある腰ポケットまでしか入りませんが、ナポリのスーツは黄点線、つまり下まで貫通します。
そして脇ダーツは黄緑点線、つまり腰ポケットまでです。これまでも何度か書いておりますが、脇ダーツがここまでしか入らないのがイタリアでは主流でして、いわゆる、細腹のないスーツです。イタリア以外ですと、脇ダーツは下まで貫通した、細腹のあるスーツが多いですね(貫通してないお店もたまに見られます)。

ちなみに、僕の所有するポール・スミスのビスポーク・スーツはもちろん英国製なのですが、このナポリのスーツと同様のダーツの取り方をしておりまして、ナポリ以外でこれと同じダーツの取り方は珍しいので驚きました。


ピロッツィさんのショルダースティッチ

ショルダーシームが後方を向いているのも、ナポリのスーツの特徴の一つです。この後方を向いたショルダーシームは、コペンハーゲンのビスポーク・テイラーさんや英国のトーマス・マホンさんなど、他国でもたまに見られますね。そして、ギャザーを入れて袖付けする、ナポリらしい雨降り袖です。


ピロッツィさんの芯地

芯地はご覧のように黄点線で囲った箇所、つまり肩の部分にはあえてハ刺しを入れず、当たりを柔らかくするために切込みを入れております。
そして、通常のスーツだと、この箇所にさらに芯地やフェルト(ネル)が乗せられて三重か四重となりますが、ピロッツィさんでは台芯とバス毛芯(増芯)のみの二重が基本仕様です。この芯地が少なく、肩にはハ刺しを入れずに切込みを入れるのが、スーツの柔らかさと軽さに繋がっております。もちろん、手縫いが多いのも柔らかさに影響していますね。

そして、同じくナポリのスーツの、サルトリア・ヴィルジーリオのスーツも、やはり芯地は二重が基本仕様で、肩に切れ込みを入れておりました。


ピロッツィさんの芯地

芯地の切込みは切りっぱなしのまま、このように肩に仕込まれます。


ピロッツィさんの立体成形

切込みが入っている箇所に肩が入り、快適な着心地となるわけですね。


ピロッツィの芯地作成途中

ちなみにこちらが、作成途中の芯地です。


ヌンツォ・ピロッツィさん

工房の様子です。今なお現役職人としてご活躍する、創業者のヌンツィオさん。


フェリーチェ・ピロッツィさん

もちろん、弟さんのフェリーチェさんも現役です。


ピロッツィさんの工房

工房は他と比べて広く、やはり人気サルトリアと伺えますね。


ピロッツィさんの職人さん

ヴェテラン職人、Fernando Leone(フェルナンド・レオーネ)さんの手縫い作業。


ピロッツィの職人さん

若い職人さんも数名いらっしゃって、次世代職人さんの育成と言う事でしょうか。


ベテランのトラウザース職人さん

トラウザース製作の専用部屋です。


若手のトラウザース職人さん

僕が伺った際は、トラウザースは2名の職人さんで作っていました。


ピロッツィさんのトラウザース

前出の画像ではミシンを使ってはいますが、トラウザースもポケット口やベルトループの取り付け、お尻中央のスティッチや股間の部分など、手縫いの箇所は多いです。


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング

フィレンツェのセミナーラさん同様に、ナポリのサルトリアでもパターンを作らない事で知られますが、二代目のドメニコさんが実際にパターンを作らず、生地に直接パターンを書き込む様子を見せて下さいました。


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング

まずは目安と言う事でしょうか、横線を4本引いておりました。そして、その横線に数か所、印を入れております。


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング

続いて、縦線を引いていきます。


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング

ダーツを引いていきます。


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング

ラペルの返り線も引かれ、だんだんジャケットの形が見えてきました。


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング

続いて、アームホールを描きます。


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ドメニコ・ピロッツィさんのパターンメイキング


ピロッツィのパターン

完成です!この片側前身頃のパターンを引き終えるのに8-9分ほどで、さすがにスムーズな仕事でした。引いたパターンは、やはりフロントダーツは下まで貫通し、脇ダーツは腰ポケットで止まっていますね。ちなみにカッタウェイフロントです。


ピロッツィのシャツサンプル

シャツの注文も受け付けております。自社工房製ではなく外注でして、E. Marinella(E.マリネッラ)ネームですね。縫製およびボタンホール、ボタン付は、アルベルトさんと同様にシルク糸を使用しており、やはりナポリのハンドメイドシャツでシルク糸を使うのは普通のようです。シルク糸を使う理由については、柔らかいのと、コットン糸と比べて白の発色が良いからと言うお話でした。


ピロッツィのシャツサンプル

もちろん、イタリアのハンドメイドシャツらしく、袖は後付け仕様です。


ピロッツィのシャツの襟スティッチ

黄矢印にあるように、襟中央にさらに一本スティッチを入れておりまして、これにより、首周りがより綺麗に仕上がるとの事でした。


ピロッツィの入口

店舗はビルの一室にあり、その入口です。



※情報はいずれも、僕が訪問した2015年6月4日時点のものです。
※17年1月31日20時45分、記事を一部修正しました。
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