Sartoria Seminara and Liverano & Liverano in Firenze(フィレンツェのサルトリア・セミナーラとリヴェラーノ&リヴェラーノ)
CATEGORY靴・服飾

【Sartoria Seminara(サルトリア・セミナーラ)】
住所:Via dei Calzaiuoli, 10, 50122 Firenze
価格:ビスポーク・スーツ、3,000ユーロ~。
仮縫い2回、4-5週間で完成。1957年にGiuseppe Seminara(ジュゼッペ・セミナーラ)氏が開業し、現在は息子さんのGianni Seminara(ジャンニ・セミナーラ)さんが二代目当主として運営しております。ちなみにジャンニさん、アイスグリーンの瞳が美しいです☆。英語可。日本人職人さんも勤務しており、その方に通訳して頂きました。

ナポリをはじめとした南イタリアのサルトリアでは、紙のパターンを作らず、生地に直接パターンを書き込む事で知られますが、ジャンニさんも同様にパターンは作らず、生地に直接パターンを書き込んでおりました。
「注文のたびに客の体型は変化しているのですから、その都度パターンを作るのは無駄だと思います。昔は一度に何着も注文する客がいたので、その時は(体型が同じだから)パターンを作っていましたよ」
つまり、パターンはお客の体型が前提のため、お客の次回注文時はその時の体型変化に応じた別パターンが必要。パターンを作ったとしても、そのパターンは時が経って変化した体型に合ってなくて使えないのだから、わざわざパターンを作って保管するのは無駄と言うご意見でした。

ちなみにジャンニさん、かつてここで修行した日本人サルトの宮平康太郎さんがプレゼントしてくれたと言う、長太郎製の鋏を使用しておりました。

よく知られておりますが、フィレンツェのハンドメイド・スーツはダーツが一本、斜めに入るだけ(赤矢印)なのが大きな特徴です。
「このダーツの斜めの角度が大きいので、これ一本で十分です」
ご存知のとおり、一般的なスーツはこの箇所にダーツは入らず、脇ダーツ(左黄点線)とフロントダーツ(右黄点線)の二本入ります。無論、ダーツが少なければ少ないほど強いシェイプを出すのが難しくなるので、それを埋めるだけのアイロンワークが要求されます。
もっとも、ミラノなどの一部のハンドメイド・スーツでは、脇ダーツ(左黄点線)はポケット口より下にはありません。いわゆる、細腹なしのスーツですね。

サンプルスーツでして、通常、胸の下に入るダーツ(フロントダーツ)がない分、見た目もすっきりしております。これは無地ですが、柄の入った生地だと、その柄が乱れない特徴もあります。
「丸いショルダーラインが私のスタイルです」
ジャンニさんの言葉どおり、肩先は丸く落ちていますね。なお、手縫いはシルク糸、ミシン縫いはコットン糸を使用。トラウザースのお尻中央のスティッチはコットン糸による手縫い。ボタンホールはシルク糸、ボタン付けはコットン糸を使用です。

芯地はもちろん自作で、台芯はウール100%だったり、麻100%だったり、注文に応じて使い分けするそうです。そして、黄点線で囲った、肩およびアームホール前方だけ、柔らかい着心地のため、あえてハ刺しを入れない工夫がございます。

赤点線で囲った箇所の拡大で、当たりを柔らかくするために切込みが入っております。

黄緑点線で囲った箇所の拡大で、やはり着心地を柔らかくするために切込みが入っております。そして、これらの切込みは縫い合わされず、この切りっぱなしのまま表地に取り付けられます。

ジャンニさん製ビスポークコート。やはりショルダーラインは丸く、フロントダーツ(胸下に入るダーツ)もありません。シェイプも緩やかでして、この方が丸いショルダーラインと相性も良いと思えます。

ビスポーク・コートのバックスタイル。

コートの襟を寝かせた状態で、しっかり首から胸へまとわりついてフィットしていますね。

こちらは作成途中のコートですが、やはりダーツは黄矢印にある一本だけです。

店内のストック生地は、他のビスポーク・テイラーと同様に英国製かイタリア製です。

そしてこちらはトスカーナ州(州都がフィレンツェ)伝統のコート用素材、カセンティーノのバンチサンプル。ご覧のとおり、毛玉に近い感じで起毛させたカジュアル感が特徴です。

カセンティーノの場合、裏地は上記のオレンジか緑のウール100%が基本だそうです(シルク、アルパカ、キュプラ、そして化繊ではない)。元々、カセンティーノは緑かオレンジだけの生地でして、それに合わせるのが理由だとか。とは言え、もちろん要望があれば、ウール以外の裏地も使用可能です。

そして、カセンティーノにはレザーボタンを合わせるのが定番だそうです。やはり、カジュアルな素材と言う事なのでしょうね。

他にも、コートに取り付けるための狼の襟巻も取り扱っておりました。

【Liverano & Liverano(リヴェラーノ&リヴェラーノ)】
住所:Via dei Fossi, 43, 50123 Firenze
価格:ビスポーク・スーツ、5,460ユーロ~。ビスポーク・ジャケット、4,680ユーロ~。ビスポーク・シャツ、300ユーロ~。
ビスポーク・スーツは仮縫い2回、6ヶ月で完成。ビスポーク・シャツは仮縫いなし、1ヶ月で完成。ビスポーク・シャツはお店で行うのは採寸だけで、製作は別工場製です。英語可。

リヴェラーノでも、やはりフィレンツェ流と言う事で、ジャケットに入るダーツは黄矢印にある斜め一本だけでした。

そのジャケットの着用状態でして、ダーツが脇腹一本のため、チェック柄が乱れる事なく流れます。なお、上画像はよくメディアでもご紹介される、ショップマネージャーの大崎貴弘(Takahiro Osaki)さんでして、大崎さんがハウススタイルについてご説明下さいました。
「柔らかなショルダーライン、その柔らかさのバランスをとった胸のふくらみ、カッターウェイフロント、第二の肌のような着心地が私どものジャケットです」

クレマチスの既製靴もありまして、出し縫いだけマシンのハンドソーン・ウェルテッド製法の、いわゆる九分仕立て。上画像の2モデルのみの取り扱いです。価格は825ユーロ。

レースステイ脇の、変則的なスティッチがデザインの特徴ですね。

店舗の外観です。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年5月29日時点のものです。
17年1月12日8時、記事に少し加筆しました。
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