Antonio Pio Mele and Rivolta in Milano(ミラノのアントニオ・ピオ・メーレとリヴォルタ)
CATEGORY靴・服飾

【Antonio Pio Mele(アントニオ・ピオ・メーレ)】
住所:Via Soncino, 3 20123 Milan
価格:ビスポーク・シューズ、2,900ユーロ~。マシンメイドのMTOは1,500ユーロ~。
レディースはセメント製法で1,200ユーロ~、ハンドソーン・ウェルテッド製法の場合は2,100ユーロ~。
いずれもシュー・トゥリー込価格。仮縫いは1回以上行い、トライアルシューズを作成。10-12か月で完成。英語可。

78年生まれで店主のAntonio Pio Mele(アントニオ・ピオ・メーレ)さん。手にしているのはクロコダイルのブーツ、迫力あります!

工房はミラノの店舗内とVigevano(ヴィジェーヴァノ)にあり、そのいずれかで生産されています。ラストはプラスティック製を使用です。

掬い縫いまで終わった状態です。ウェルトにある溝も、ご自身で掘っております。

フィラーにはプラシートとレザーを重ねて使用。プラシートの使用理由については、「革鳴りを防ぐために」とのご説明でして、他メイカーでよく使われるコルクは、「使っていくうちに壊れるから」と言う理由で使わないそうです。ただ、レザーだとコルクより防水性が落ちると思われるので、プラシートはその防水性を高める役割もあるのかも?と思いました。シャンクもレザーです。
底材はトスカーナの革、つまりイタリア製が主で、たまにベイカーやレンデンバッハも使うそうです。アッパー革はデュプイなどのフレンチカーフが主で、イルチアもあります。

出し縫いはハンドとマシン、二つのラインがあり、マシンの場合は上画像のような手動の出し縫い機を用います。この手動出し縫い機はドイツの靴工房や、サン・クリスピンでも使われますね。
出し縫いにはナイロン糸、掬い縫いには麻糸を使用です。

そして、アウトソールのウエスト部は木釘で留めるのが基本仕様(黄矢印部分)。もちろん、要望があれば糸で縫うのも可能です。

イタリアらしいデザインの一つである、アントニオさん製のモカシン。

通常は、ラストにアッパー革を上から被せて成型しますが、このモカシンは下(底面)から包みあげるように成型し、その後、甲の部分に蓋をする感じでアッパー革を乗せ、U字に手縫い(モカ縫い)します。つまり、逆方向から釣り込む(成型する)ため、この方法を日本では「逆釣りモカ」と呼ばれたりもします。

ご覧のとおり、非常に柔らかく仕上がります。

そして、アウトソール(黄矢印)をマッケイ縫いで取り付けて完成となります。日本では、Tubolare(トゥボラーレ)製法とも紹介される方法で、ウェルテッド製法ではないので、ソール交換や耐久性に難はありますが、軽く柔らかく作れるのが特徴です。
ちなみににアントニオさんはこのモカシンを、「Mocassino tubolare cucito su forma(モカシーノ・トゥボラーレ・クチート・ス・フォルマ)」と呼んでおりました。日本語訳すると、「ラスト上で管状に縫い上げたモカシン」となりますね。
「来年、このモカシンと(普通の)サンダル、そしてグルカ・サンダルがストラスブルゴで販売予定だ」
僕が伺った当時(2015年5月19日)、アントニオさんはそう話してまして、実際、現在、「PMA(ピーマ)」のブランドネームでストラスブルゴ、そしてビームスで販売されておりますね。

店内にあった、ビスポーク・シューズのサンプルです。

こちらの白い靴と奥にある黒のサンダルは、サウジアラビア王室の方からの注文です。

トウラインに対してUモカが小さめで、トウ先端にもハンドスティッチを入れ、そしてノルウィージャン・ウェルテッド製法と、クラシックなデザインです。

パティーヌ仕上げのタッセル・ローファー。このローファーの、ちょっぴりスクエアがかったラインが、アントニオさんの好みだそうです。

作成途中のこのカバ革のブーツは、元々入っていたキズをわざとトウに持って来て(黄矢印)、デザイン上のアクセントとしております。

ドライヴィング・シューズも作っております。

レディースのサンプルでして、レディースはセメント製法が基本仕様です。


子供用の靴で、これもセメント製法です。「子供の足はすぐに成長するから、ウェルテッド製法で作る意味はないと思う」と言うご説明でした。そして、セメント製法の方が柔らかいため、まだ成長過程である子供の足に負担をかけず、向いているのかなと思いました。

なんと!他店ではなかなか見られない、ウミガメ(の手足)の革も取り扱っております。現在、ウミガメはワシントン条約で取引が禁止されているため、入手困難の貴重品です。当然高価で、価格は短靴で22,000ユーロ~、ポロブーツを作る場合は、275,000ユーロ!ウミガメの革は一見、固そうなのですが、触ってみるととても柔らかいのが印象的でした。

象革によるアタッシェ・ケース。これも高価で、注文する際の価格は6,200ユーロ。

店内の様子です。

店舗の外観です。

【Rivolta(リヴォルタ)】
住所:Via della Spiga, 17 - 20121 Milano
価格:ビスポーク・シューズ、1,900ユーロ~。MTOは1,030ユーロ~、既製靴価格の30%増がMTO価格になります。
仮縫い無し、3カ月で完成。MTOは1ヶ月で完成。靴だけでなく、鞄、革小物、ベルトなどの販売もあります。英語可。
1883年創業で、一度は廃業したものの、その後復活し、2009年より現在の場所で営業しております。ビスポークは一般的なメジャーなどを用いての採寸ではなく、3Dスキャナを用いて計測。このリヴォルタの3Dスキャナによるビスポークは、同じくミラノのN.Hサルトリアや、モスクワのクラブ・ビスポークでも受け付けております。
なお、MTOの場合はスキャンはなく、革やモデルを選んでの注文です。

代表のFabrizio Rivolta(ファブリツィオ・リヴォルタ)さんの奥様である、Manuela(マヌエーラ)さん。「タイムレスでエレガント」がハウススタイルとお話されていました。

サンプルシューズの一つで、長すぎないノーズと程良いエッグトウは、確かにタイムレスな美しさです。

Uチップの形状も、さもイタリアらしいデザインですね。

アウトソールの前面に、滑り止めのための菱形の刻みを入れるのも、イタリアらしい意匠です。

リヴォルタの既製のカットモデル。木製シャンクに、フィラーはコルクシートを使っておりますね。既製についてはマッケイ製法か、ハンドソーン・ウェルテッド製法があります。

イタリア製で100%コットン使用と、強靭で良質で知られる靴紐、Strupai(ストゥルパイ)も豊富に揃えます。オスロの高級靴店、ダゲスタッドでも取り扱われていますね。

店舗の外観です。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年5月19・23日時点のものです。
※16年12月21日3時、アントニオ・ピオ・メーレさんの記事に一部修正加筆と画像の追加を行いました。
※19年1月24日18時、価格の箇所に修正を行いました。
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