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Comolli and Aldo Smaniotto in Milano(ミラノのコモッリとアルド・ズマニオット)

CATEGORY靴・服飾
コモッリの店内

【Comolli(コモッリ)】
住所:Via San Pietro all’Orto, 9 - 20121, Milano
価格:ビスポーク・シューズ、メンズは1,500ユーロ~、レディースは1,200ユーロ~。

仮縫い無し。2‐3週間で完成。1847年創業と、僕の知る限り、イタリア最古のビスポーク・シューメイカーです。ベルルスコーニ首相の靴も作っております。英語不可。


アンジェロ・コモッリさん

4代目当主のAngelo Comolli(アンジェロ・コモッリ)さん。もっとも、店主さんは代々同じ名前を名乗るそうです。かつて、このお店の底付けを請け負っていた古幡雅仁さんによると、コモッリさんは今でもサッカーをするお元気な方との事。


コモッリのビスポークサンプル

幅のあるスクエアトウは、イタリアのクラシックなビスポーク・シューメイカー定番のライン。アッパー革はフレンチカーフで、底材はトスカーナ産、つまりイタリア製ですね。


コモッリのビスポークサンプル

このトウとモカ縫いのラインも、イタリアのクラシックなビスポーク・シューメイカーでよく見られます。


コモッリのビスポークサンプル

このラウンドスクエアなトウラインは、少し英国の雰囲気を感じます。


コモッリのビスポークサンプル

左上のノルウィージャン・ウェルテッド製法のUチップは、トウラインに対してUモカが小さめで、その分中央に入るスティッチが長くなり、これもイタリアのクラシックなビスポーク・シューメイカーでよく見られるデザインです。

コモッリのビスポークサンプル


コモッリのビスポークブーツサンプル

決して広いとは言えない店内ですが、その割にサンプルシューズは多く、長い歴史を感じさせます。そして、サンプルはショートノーズが多く、細いトウラインは少なく、これがハウススタイルと言う事なのでしょうね。


コモッリのレディースビスポークサンプル


コモッリのレディースハイヒールビスポークサンプル

レディースも積極的に手掛けており、サンプルも豊富です。


コモッリのラスト

天井の空きスペースをラスト保管棚としておりました。全て木製ラストです。


コモッリの表彰

店内に飾られていた、20世紀初めに何度も受賞したメダル。「fabbrica milanese di calzatura di lusso」=ミラノの高級靴工場とありますね。


コモッリのカタログ本

世界的な老舗らしく、かなり昔のカタログです。


コモッリのカタログ


コモッリの入口

お店はビルの一室にあり、そのビルの入口です。




アルド・ズマニオットさん

【Aldo Smaniotto(アルド・ズマニオット)】

Aldo Smaniotto(アルド・ズマニオット)さんは、これまでMessina(メッシーナ)をはじめ、Arcando(アルカンド)、Albertini(アルベルティーニ)、Rivolta(リヴォルタ)、Gianni(ジャンニ)、Ronchi(ロンキ)、Ballini(バリーニ、現スティヴァレリア・サヴォイア)と、ミラノの名店の底付けをアウトワーカーとして請け負って来た、ミラノのビスポーク・シューズ業界、影の立役者。そして現在も、メッシーナの底付けを行っております。過去に古幡雅仁さんが「最高級靴読本4」で、ガエターノ・ヴァストラ氏、ガエターノ・メッシーナ氏、コラード氏とともに、尊敬する靴職人として挙げていた方でもあります。

パドヴァ出身のアルドさんは、10歳の時に靴職人の友達に誘われて、靴職人修行を開始。戦争の時期だったので、「橋の下に逃げながらも仕事を続けたよ」と話しておりました。アルドさんのお母様は仕立て職人で、妹さんは製甲師と、ご家族も職人さんが多かったそうです。


若かりし頃のアルドさん

アルドさんの工房内に飾られていた、若かりし頃のアルドさん(中央)の写真。現在はお一人で仕事をされているアルドさんですが、かつては同工房内に7名も働いており、1週間で10-15足生産していたそうです。ビスポーク・シューズが華やかなりし時代が伺えますね。そして、僕が伺った当時、アルドさんは84歳でしたが、今なお現役で、しかも10-12時間働いているとの事で凄すぎです!


アルドさん製ビスポーク・シューズ

アルドさんが完成させたビスポーク・シューズ。フィラーはコルクシート、シャンクはレザー。ラストは全て木製です。


アルドさん製ビスポーク・ローファー

「この幅のあるスクエアトウが、イタリアの伝統的なラインだ」

アルドさんが請け負っているビスポーク・シューメイカーは昔ながらの工房なだけに、トウラインと言い、モカ縫いと言い、やはりスタイルもクラシックです。


アルドさんの工房

メッシーナは靴作りの際、ドイツの接着剤であるHirschkleber(ハーシュクリーバー)を使用しておりますが、そのアウトワーカーであるアルドさんも、やはりそのハーシュクリーバーを使用しており、工房内の棚にありました。

「接着剤では、これが一番良いんだ」

そして、靴職人さんは底付けの際、針に蝋を付けて使用しますが、アルドさんは蝋ではなく石鹸を付けておりました。石鹸を使う職人さんは初めて見たので、興味深かったです。


アルドさん使用のチェルボの麻糸

アルドさんが使用する、イタリア製の麻糸。


アルドさん使用修理用ミシン

いかにも古そうなこの修理用ミシンは、なんと100年以上も使用しているそうです!


※情報はいずれも、僕が訪問した2015年5月21・22日時点のものです。
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COMMENTS

7Comments

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ジェドー

コモッリ

山下さん

はじめまして。
いつも楽しく拝見させていただいております。

ところで、昨年末にコモッリを訪れたところ、店舗は見当たらず、ビルの管理人さんに状況を聞いたら、コモッリは”forever closed”と言われました。
管理人さんの英語はかなりあやしかったということはあるものの、コモッリは廃業したのかもしれません。

山下さんはなにか追加の情報をお持ちでしょうか?

  • 2017/01/11 (Wed) 20:01
  • REPLY

山下大輔

なんと……。

はじめまして。なんと!コモッリさん、”forever closed”ですか……知りませんでした。僕の知る限り、イタリア最古のビスポーク・シュー・メイカーなので、事実だとすれば残念な限りです……。惜しいですね……。

山下大輔

移転

ミラノ在住の方より情報を頂きまして、コモッリさんの工房は移転したそうで、廃業ではなく、現在も営業しているそうです。追加情報がありましたら、またお伝え致しますー。

ジェドー

朗報ですね

移転ですか!?
だとすれば良かったですね。

ただ、websiteは昔の住所のままで、メールにも返事がないのが気がかりです。

続報お待ちしております。

  • 2017/01/22 (Sun) 14:22
  • REPLY

ジェドー

コモッリへのアクセス方法

山下さん

こんばんは。

一点質問なのですが、コモッリさんはイタリア語とフランス語しかできないと承知しているところ、山下さんの工房訪問時には、どのようにアポイントメントをとり、どのように取材をしたのでしょうか。

一度靴を注文してみたいと考えているのですが、メール(英語とグーグル翻訳のイタリア語)に返信がないので若干途方にくれています。

よろしければご経験をご教示ください。

  • 2017/05/15 (Mon) 06:12
  • REPLY

山下大輔

No title

僕もメールでアポイントが取れなかったので、直接工房まで行きまして、工房を取材したい旨をイタリア語で書いた文章を先方に見せまして、取材の許可を頂き、後日の取材可能な日時を設定しましたよー。
取材の際の質問内容も予めイタリア語で書いておいて、それを見せて答えて頂きました。コモッリさんは英語が話せませんが、辞書を引いて英語を示して下さったりで、親切に対応して下さいました☆。ちなみに僕のイタリア語の文章作成は、google翻訳で行っておりますー。

  • 2017/05/15 (Mon) 06:47
  • REPLY

ジェドー

No title

山下さん

ご回答ありがとうございます。
非常に助かります。

やはりメールはダメでしたか。。
これは私も直接行ってみるしかなさそうです。
幸い欧州在住なので今度ミラノに行ったときに訪問してみます。

  • 2017/05/16 (Tue) 02:33
  • REPLY