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Genki Shinomiya of workshop head at Türk in Freudenstadt(フロイデンシュタットのテュルクの工房長、四之宮玄騎)

CATEGORY靴・服飾
四之宮玄騎さん

【Genki Shinomiya(四之宮玄騎)】
【Türk(テュルク)】
住所:Loßburger Str. 9, 72250 Freudenstadt
価格:四之宮さん製ビスポーク・シューズ、20数万円~。

07年の国際靴職人技能コンクールにて、おそらく日本人初となる名誉賞と金メダルを受賞した四之宮玄騎(Genki Shinomiya)さんは、現在、ドイツのフロイデンシュタットにある整形靴会社、「Türk(テュルク)」にて工房長を務めております。

80年1月生まれの四之宮さんは、高校三年生時にサッカーでインターハイと全国選手権("雪の決勝戦"で知られる97年大会)に出場し、大学も強豪の九州産業大学に進学。当然、Jリーガーを目指していたそうですが、大学三年生時に靭帯断裂の大怪我を負ってしまい、Jリーガーの道を断念。その直後に九州選抜にも入ったそうですが、辞退せざるをえなかったそうです。そして長期のリハビリ生活を送るが、そのリハビリを通じて、四之宮さんは初めて"整形靴"の存在を知ったそうです。これがきっかけで四之宮さんは靴職人を目指すようになり、大学卒業後、ドイツでの職業訓練に必要な経費をアルバイトで貯め、03年に整形靴の本場であるドイツへ。

まずはケルンの整形靴メイカー、ラルフ・ポッペで修行し、ここで整形靴のゲゼレ(職人)資格を取得。ラルフ・ポッペはドイツで3番目に大きい保険会社のすぐ近くにあり、その社員さんがビスポーク・シューズや高級既製靴の修理をよく持ち込んで来たため、それをバラす事で非常に勉強になったとの事。

そして07年には前述のとおり、国際靴職人技能コンクールにて名誉賞と金メダルを受賞しました。


四之宮玄騎さんの国際靴職人技能コンクール名誉賞受賞靴

コンクールの名誉賞と金メダル受賞靴。幾何学模様に打たれた釘の装飾が見事です!




コンクール授賞式の様子。

さらに同年4月に、四之宮さんは10日ほどながら、ルーマニアのサン・クリスピン工房でも研修歴があります。


四之宮玄騎さん、サン・クリスピンの工房にて

サン・クリスピンのルーマニア工房での四之宮さん。右はシュー・トゥリー兼ラスト職人のコンスタンティン・ミハールチャさん。短期間の研修とは言え、サン・クリスピンで勤務歴のある日本人職人は四之宮さんだけです。

07年8月末からは、マイスター(親方)となるのに必須であるマイスター学校へ。学校では、実際に患者を一から十までケアする形式で講義が進んで行くとの事。

「一つの症状に対し、講師や生徒間で独自の方法や理論があります。その色々な意見を聞ける場が新鮮でした」

そして、マイスター学校の参加者は皆寮暮らしであり、四之宮さんはほぼ毎晩、その仲間たちと飲み明かす日々。その飲みの最中でも、酔った勢いでちょっとした議論が始まると、やがて他の皆をも巻き込んでの大議論になるとの事。

「あの時ほど、人生で充実している時間はありませんでした」

過去に本気でサッカーに打ち込んでいた四之宮さんがそう述懐するほど、マイスター学校での日々は濃密だったそうです。

四之宮玄騎さんのマイスター学校時代

マイスター学校時代の四之宮さん。四之宮さんは後に、ウィーンのFMラジオ局で、面白い写真、コラージュ、スケッチの募集があり、この写真を送ったところ、選出された経歴をお持ちです。

そして08年5月、半数ほどは落ちると言う整形靴マイスター試験に一発で合格。四之宮さんによると、日本人でドイツの整形靴マイスター資格を持っているのは3名だけだそうで、まさに快挙!です。

同年9月からはオーストリア最古のビスポーク・シューメイカー、ウィーンのルドルフ・シェア&ゾーネで正社員として勤務。担当はボトムメイキングで、四之宮さんの製作ペースは、ロンドンのボトムメイカーさんと同じく、週に二足。在籍時は200足以上もの数を作ったとか。さらに、たまに製甲も手伝っていたそうです。
現在のところ、ルドルフ・シェア&ゾーネで勤務歴のある日本人職人も四之宮さんただ一人。そして、四之宮さん在籍時は5代目当主のカール・フェルディナンド・シェア氏も現役で、カール氏と言えば1917年生まれと、世界中のビスポーク・シューズ業界でも長老的存在。そのカール氏は2011年にご逝去されたため、四之宮さんはカール・フェルディナンド・シェア氏を知る、唯一の日本人職人となりました。
しかし、いざルドルフ・シェア&ゾーネで働いてみると、整形靴の方が自分の多くの知識が活かせ、やりがいがあると分かったそうで、四之宮さんは10年9月いっぱいで同店を退職。そして、四之宮さんが辞める2カ月前に、それまで工房長だった職人さんも退職されていたため、その2カ月の間は四之宮さんが工房長を務めていたそうです。

11年2月からはオーストリアの整形靴会社、Fuß & Schuh SCHEIDL(フス&シュー・シャイデル)で勤務。そして13年5月から、このTürk(テュルク)に移籍し、工房長を務めております。


四之宮玄騎さん製ビスポーク・シューズ

現在は整形靴を手がける四之宮さんですが、その仕事の傍ら、休日を利用してハンドソーン・ウェルテッド製法のビスポーク・シューズを作っております。納期は半年。ラストの素材はブナ。アッパーはデュプイなどのフレンチカーフ。インソール、アウトソール、芯材は、いずれもレンデンバッハです。

そして、クラシックな中に、ちょっぴりデザインに変化を加えるのが四之宮さんのスタイル。かつて四之宮さんが研修で働いたサン・クリスピンも、そう言ったスタイルのメイカーですね。

「ひたすらクラシックなデザインはあまり面白くないと言うか、ライン一つでもこれだけバリエーションの可能性があるのに、昔ながらのラインを引く必要はないんじゃないかな」


四之宮玄騎さんのビスポーク・サンプル

通常、パーフォレイションは履き口周りに入りますが、これは黄矢印のように下に落とす、四之宮さんならではのデザイン。


四之宮玄騎さんのビスポーク・サンプル

メダリオンも従来からあるデザインではなく、四之宮さん考案のデザインです。


四之宮玄騎さん製ビスポーク・シューズの目付

コバの目付(ギザ飾り)はナナメに入れる、ルドルフ・シェア&ゾーネで用いられるディテイル。

「このディテールは東欧でも西欧でもない、独特なものですね」

ちなみにルドルフ在籍時、出し縫いを195針と指定してきたお客がいて、四之宮さんは非常に困ったとか(笑)。

「あらかじめ5針ごとの印を入れて、それから縫いましたよ。もう二度とやりたくない」


四之宮玄騎さん製ビスポーク・シューズ

出し縫いは隠れるほど深い位置に入れて、コバをできるだけ狭めてスッキリ見えるように仕上げた、手間のかかる方法で作られたモデル。そしてやはり、メダリオンは四之宮さんオリジナルデザインです。


四之宮玄騎さん製ビスポーク・シューズ


四之宮玄騎さんのビスポーク・サンプル

フォーマルなスタイルである内羽根プレーントウに、チャーミングな印象を与える飾りスティッチ。


四之宮玄騎さん製ビスポーク・シューズ


四之宮玄騎さん製ビスポーク・シューズ

いずれのコンビブーツも、色使いが秀逸ですね。


四之宮玄騎さん製コンビのチャッカ・ブーツ

このコンビのチャッカ・ブーツは、とりわけ周囲からの評判が良かったそうです。カーフのアッパー革にはほんのり濃淡をつけた、パティーヌ仕上げ。

四之宮さんのビスポーク・シューズはショートノーズでトウラインの曲線が大きく、やはりこれまで働いて来た、ドイツや中東欧の靴のスタイルを彷彿させますね。


四之宮玄騎さん使用のカーボンシャンク

四之宮さんのビスポーク・シューズは、シャンクにカーボンを用います。

「カーボンは熱すると柔らかくなって加工しやすいし、冷めると強靭なのでアーチが落ちない。そして軽量です。メタルシャンクと違って、空港の金属探知機にも反応しない。自分の知る限り、カーボンはシャンクとして最適な素材です、お値段を除いて(笑)」


四之宮玄騎さんのフィラー

そして、そのカーボンシャンクにレザーを重ねます。他のドイツや中東欧のビスポーク・シューズでは、メタルシャンクにレザーを重ねるケースが多いですね。

フィラーは、ルドルフ・シェア&ゾーネでも使われている、コルクとゴムを混ぜたミクロコルク。通常のコルクだと使っていくうちに壊れますが、このミクロコルクだと、それがないとか。

なお、ルドルフ・シェア&ゾーネでは、ロンドンのビスポーク・シューメイカーなどで行われている二重のキャップトウを実践しているため、もちろん働いていた四之宮さんも作成可能です。


四之宮さん使用の製甲ミシン

四之宮さんのビスポーク・シューズは全行程をご自身で手がけるため、ご自宅に製甲用ミシンも置いてありました。製甲も含め、全工程を自分でできないと(製法はセメント製法で可)、整形靴マイスターにはなれないそうです。


テュルクの店内

さて、こちらは四之宮さんが勤務するTürk(テュルク)の店内。足の健康を重視しての既製靴が販売されています。


テュルクの店舗

店舗の外観です。シュトゥットガルトにも支店があります。そして、店舗のすぐ近くに工房があり、カスタムメイドの整形靴とアインラーゲン(整形外科見地に基づいて作られるインソール)の作成が行われています。


四之宮さんと創業者の方

テュルクの創業者で、34年生まれのKarl Türk(カール・テュルク)さん。もちろん整形靴マイスターで、四之宮さんによると、糖尿病の分野では“生きた伝説“と言えるほどの権威だそうです。80歳を超えた現在は第一線を退いているものの、それでも毎日会社に来て業務に携わっているそうです。年齢を感じさせない背筋の伸びた姿勢は、まだまだ現役の雰囲気が漂いますね。


四之宮さんとヘルベルトさん

四之宮さんと肩を組む、二代目社長のHerbert Türk(ヘルベルト・テュルク)さん。カールさんの息子さんで58年生まれ、やはり整形靴マイスターです。日本のフスウントシューインスティテュートの学校長も務めているため、何度も来日しており、日本にも詳しいです。僕が埼玉から来たと言うと、「埼玉は大きいスタジアムがあるだろう」とか、「ギド・ブッフバルト(元浦和レッズ)」とか話しておりました(笑)。かなりのサッカー好きでもあるそうです。


歩行確認マシン

テュルクでは歩行状態に異常がないか診断するサーヴィスがあり、そのための歩行マシン。


トゥークのミニカメラ

歩行の様子をカメラ(黄色矢印)で撮影し、診断するそうです。


四之宮さん作業中

四之宮さん、工房にてアインラーゲンを加工中です。ご覧のとおり、手作業ではなくグラインダーを使用しての加工で、ラストメイクをはじめ、他の工程でもしばしばグラインダーを使用します。このグラインダー使用はテュルクのみならず、ドイツの靴工房(ビスポーク・シュー・メイカーを含む)では一般的で、もちろん他国でも見られます。

「ラストを削るのに、全て手作業でやったら2時間はかかります。でも、グラインダーを使えば1時間、いや、急げば30分で作れます。それでラストのクォリティに差はありません。だったら効率が良い分、自分は迷わずグラインダーを使います」

四之宮さんの場合、グラインダーを使用しない工房である、ルドルフ・シェア&ゾーネにて靴作りをした実績があり、そのうえでグラインダーを使用する結論に達しているのだから、その言葉には説得力がある。そして、四之宮さんは漉き機も使う。やはりルドルフ・シェア&ゾーネでは漉き機は使用しないが、四之宮さんは「切り口の厚みが一定するから」と言う理由で、漉き機は使う。

とは言え、ハンドに利点がある部分は当然ハンド。芯材に出来合いは使わず、ハンドで加工する。

「芯材は手作業の方が良い物を作れるし、手作業で加工しても、かかる時間は数分増えるだけです。だったら手作業で加工しますね」


アインラーゲン

完成したアインラーゲンです。起伏に富んだ形状が、歩行を助けます。アインラーゲンは症状の違いによって、一から作る場合と既製品を加工して作る場合の二種があるそうです。
一から製作する場合、患者の足のネガティヴ型からポジティヴ型を作り、それを元に数十種類ある素材から、その患者に適した素材を選択し製作されます。また、現在ドイツではアウトソーシングも進んでいるため、いくつかのアインラーゲンの種類では患者の足データやスキャン画像を業者に送信して、オンラインで細かいスペック等を設定し注文できるそうです。

そして、このアインラーゲンは、テュルクの整形靴だけでなく、四之宮さん製のビスポーク・シューズにも必ず仕込まれます。


特製ラスト

整形靴のラストは、問題が多い足の場合は、上記画像のように足型を採取して、樹脂を流し込んで作成。問題が少ない足の場合は木製です。

「足に合うラストを作るのはそこまで問題ではないですが、変形のひどい足をどう普通に見せ、履きたいと思ってもらえるフォルムを出すのは難しい作業です」

足に合うラストを作るのに自信があるのは、整形靴マイスターである四之宮さんの矜持。なお、会社でラストメイキングを行うのはヘルベルトさんと四之宮さんの二人だけだそうで、ラストは靴作りの肝心要であり、それを任されている四之宮さんが、いかに信頼されているか分かろうものです。アインラーゲンについては他の職人さんが取りまとめているものの、それ以外は全て、四之宮さんが製造責任者との事。


特殊ラスト

糖尿病患者の場合、足の指を切断してしまっているため、ラストもこのような形状になります。これほど困難な足に対して、しっかり合わせていく四之宮さんのラストメイキングの技量は相当凄そうです。そして、指がないせいで足の接地や歩行が安定しないため、それを安定させるためにアインラーゲンを作るのだそうです。

なお、基本的に、製作全工程はテュルクの自社工房で行われますが、カスタムメイドシューズの分野でもアウトソーシングが進んでいるため、特定の条件を満たしているケースについては他社に製作させるそうです。ただし、リスクの大きい患者の靴は、原則完全自社で製作との事。


埋め込みパーツ

足の処方については、整形靴やアインラーゲン作成だけではなく、既製靴内部に穴を空け、そこにクッション材を仕込んだりもします。


職人さん作成中

そのクッション材加工中。この職人さんはクロアチア出身で、ゲゼレ(職人)資格を所有する、四之宮さんのお弟子さんです。そして他の職人さんはロシア出身と、四之宮さん以外は、全員旧共産圏出身です。

「東ヨーロッパ(旧共産圏)は未だに西ヨーロッパの工場的役割を担っているだけあり、職人の数が多く、手先も器用で実直ですね。かえってドイツでは、ブルーカラーな職業は残念な事に人気がなく、職人志望者は減少傾向にあります」


フットプリント

靴作成のために採取するフットプリント。指が欠損しており、やはりこれも相当困難な足です。さらに四之宮さんは、このフットプリントのみならず、足の写真を前後左右からも撮影して、ラストメイクの参考にするそうです。ドイツでは、保険会社に提出する患者の足の写真は前後から、と言う事になっているので、さらに左右からも撮影する整形靴職人は少ないとか。

なお、このフットプリントは、プリントされたデータをそのまま鵜呑みにするのは危険だそうで、どう言う理由でこのようにプリントされたか、そこまで理解していないと意味がないとの事。


トライアルシューズ

テュルクの整形靴、および四之宮さんのビスポーク・シューズの仮縫いは、透明プラスティック製のトライアルシューズを用います。これだと靴内部における足の状態が一目瞭然ですが、このトライアルシューズだと歩行ができないため、その歩行時に起こる足の現象を、職人さんが分かってないと意味がないとの事。

そして、透明プラスティックは、実際に製作する革と物性が違うため、職人さんがその物性の違いを理解して作る必要があるそうです。

フットプリントや透明プラスティックを扱うにしても、正しく扱えるだけの知識や経験が、職人さんに要求されると言うわけですね。


トライアルシューズ作成

透明プラスティックのトライアルシューズは、このように熱したプラスティックシートをラストに押し付けて成型されます。


トライアルシューズ作成中

それを切り取ってトライアルシューズの完成となるわけですが、その作業中、四之宮さんが突然、よく分からない踊りを踊り始めました(画像右の黄矢印)。


トライアルシューズ作成中

よく分からない踊りを踊る四之宮さん。

四之宮さんが言うには、このように面白い事をやって場を和ますのも、工房長としては大事だそうです。


プレスマシン

ドイツや中東欧のビスポーク・シュー・メイカーでよく用いられる、インソールをくせ付けするためのプレスマシンは、やはり整形靴でも用いられます。

そして、四之宮さんのビスポーク・シューズで、インソールのくせ付けを手作業で行うか、プレスマシンを用いるかはケース・バイ・ケースで、例えばインソールの革が柔らかい場合は、剛性を上げるためにプレスマシンを用いるとの事。

ちなみにルドルフ・シェア&ゾーネでは、インソールのくせ付けにもの凄く古いプレスマシンを使っていたそうで、プレスするための空気を入れるのに、自転車の空気入れ(これもガラクタ同然の古い物だったそう)を繋いで使う年代物だったとか。


職人さん作業中

整形靴の月型芯(踵に入れる芯)を作成中です。ご覧のとおり、手作業で時間をかけて成型します。


整形靴用月型芯作成中

そして、この月型芯は一般的な靴と比べて大分大きいです。一般的な靴と違い、後足部を覆ってしっかりと固定する事が目的で、この芯を成型した後、さらにフレキシブルなプラスティック素材で踝を覆い、足関節を固定するのだそうです。


四之宮さんの整形靴

整形靴の完成品は、釣り込みはハンドのセメント製法。テュルクに限らず、整形靴はセメント製法が一般的で、理由は二つあります。

・ドイツでは年々、保険会社から支給される整形靴製作のお金が削減傾向にあるが、セメント製法だと安価で製造可能のため。

・患者の足の症状が悪化する前に納品する事が重要であり、セメント製法だとその製作スピードが速い。

そして、糖尿病患者用の靴は、アッパー革はカーフなどの天然素材でないとダメだそうで、ライニングもシルバーを配合した抗菌作用がある素材を使用と、病状が悪化しないように気を配られています。

なお、整形靴の作成についてはお医者さんからの処方箋が必要で、この処方箋があると保険金が降ります。例えば整形靴の価格が1,200ユーロとなった場合でも、健康保険のおかげで、お客さんが払うのはおよそ100ユーロで済むそうです。日本でも保険は降りるものの、規模はドイツと比べて大幅に小さいそうで、こう言った足への理解の深さは、さすが整形靴大国のドイツと思わされます。


四之宮さんの整形靴納品中

お客さんが、注文していた整形靴(前出画像とは別の整形靴)の受け取りにやって来ました。このお客さんは、軟骨が擦り減って関節を固める手術をしたため、ご覧のようなゴツイ装具がないと、歩く事ができません。


四之宮さんの整形靴納品中

そこで、整形靴を履いて頂きます。この整形靴はラストは四之宮さんが作り、アッパーは外注、底付けは自社工房の職人さんが行い、その底付け作業の際、角度などの指示は四之宮さんが出したそうです。

後ろではクロアチア出身の若い職人さんが見ておりますが、これはマイスターである自分の仕事を見せて、勉強させるためです。弟子の教育もマイスターの仕事の一つで、ドイツのマイスター資格はオーストリアでも通用するため、四之宮さんはルドルフ・シェア&ゾーネ時代も弟子を教育して、ゲゼレ(職人)資格取得に導いたそうです。


四之宮さんの整形靴納品中

整形靴マイスター、四之宮玄騎さんのマジック!ご覧のように装具なしで歩行が可能です。そして四之宮さん、フィットの状態を記録し、今後に役立たせるべく、写真撮影を行っています。

「自分も一時は、フルハンドメイドのビスポーク・シューズを作るのを一生の仕事としたいと思っていました」

過去に四之宮さんが、サン・クリスピン、ルドルフ・シェア&ゾーネで働いていたのもそのためです。

「でも、実際にフルハンドだけの仕事をしてみたら、整形靴の分野の方が自分の知識や技術を有意義に使える事が分かりました。それに本当に困っている人を支える事ができ、また必要とされる事はとても嬉しい事です」

四之宮さんが本懐な仕事をして充実している様子が、とてもよく伝わって来ました。そして、整形靴マイスターとして活躍しつつ、フルハンドメイドのビスポーク・シューメイカーとしての実力も備えるのが、四之宮さんの凄さです。


※情報はいずれも、僕が訪問した2015年5月8日時点のものです。
※17年8月13日6時23分、四之宮さん製ビスポーク・シューズの価格と納期を追記しました。
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