NORMAN VILALTA and RAMON CUBERTA in Barcelona(バルセロナのノルマン・ヴィラルタとラモン・クベルタ)
CATEGORY靴・服飾

【NORMAN VILALTA(ノルマン・ヴィラルタ)】
住所:Enric Granados 5, Barcelona
価格:ビスポーク・シューズ、3,500ユーロ~。既製は870ユーロ~。
仮縫いは少なくとも2回で、仮縫いのたびにトライアルシューズを作成。1年で完成。今年から日本でも既製靴の販売が開始されています。英語可。

右が71年生で創業者兼職人のNorman Vilalta(ノルマン・ヴィラルタ)さん、左が76年生まれでノルマンさんの片腕、Fernando Nafría Ascolizaga(フェルナンド・ナフリア・アスコリサガ)さん。
ノルマンさんは母国のアルゼンティンでは弁護士をされていたそうですが、休暇でフィレンツェを旅行した際にハンドメイドシューズを知り、靴職人を志すようになったとの事。そしてフィレンツェのサスキアとステファノ・ベーメルで修行し、2004年にバルセロナで独立開業されました。なお、ベーメル時代には、ステファン・ジムネズさんにも靴作りを学んでおります。
「トラッドにこだわらず、新しいスタイルや方法をどんどん試して行きたい。大事なのはトラッドではない。大事なのは、知識を改良し、より進化させていく事だ」
ノルマンさんがそう話すとおり、他では見られないデザイン、新しい発想による靴作りが特徴のブランドです。

ノルマンさんのブランドは4つのラインがあり、上画像はごくクラシックなコレクションである、Nº5(ナンバー5)コレクションのビスポーク・サンプル。同デザインで既製もあります。ナンバー5とは、ノルマンさんのお店がある番地ですね。
このコレクションのハウススタイルはアシンメトリーとの事で、このサンプルも、一見、ごく普通のパンチド・キャップトウですが……。


よく見ると、ヒールのデザインが左右で違っております。

アウトソールのペイントも凝っていますね。

そして、このクッションを仕込んだオリジナルインソックスも、トラッドにこだわらないノルマンさんらしいです。
なお、ビスポークはアッパー革にアノネイ、底材はレンデンバッハやスペインのタンナーを使用。芯材もスペインのタンナーを使用。フィラーはコルク、シャンクはレザーと木製を合わせて使用。既製靴のソールはイタリアのタンナーです。

このクォーター・ブローグも、ヒールのデザインが左右で違っており、"ごく普通"のデザインと少し異なるのがノルマンさんの矜持ですね。

このビスポークサンプルも、サイドレースアップとデザイン自体がアシンメトリーですが、さらにヒールの継ぎ目もサイドに持って行って(黄色矢印部分)アシンメトリーにし、そのスティッチもダイヤ型にして、遊び心を見せていますね。

もちろん、フィドルバックも作っております。

ちなみにこちらは、古いビスポーク・サンプルです。

昔と現在では、少しスタイルが異なるとの事で、昔は赤矢印のようにヒールの流れに段差がありましたが、現在では黄色矢印のようにヒールの流れがスムーズになっております。

こちらはクラシックを壊したコレクションと言う、Savile Row Meets Rock ’n’ Roll(サヴィル・ロウ・ミーツ・ロックンロール)コレクションのビスポーク・サンプル。このコレクションが一番売れているそうです。

このサイドゴアブーツは、ゴアの部分のデザインがオリジナリティありますね。このデザインは既製でもあります。

これもサヴィル・ロウ・ミーツ・ロックンロールコレクションです。

一般的なドレスシューズとは趣を異にする、厚めのソールが特徴で、カジュアル感ありますね。

ノルマンさん三つ目のコレクション、Wabi Sabi(ワビサビ)コレクション。素材はラフィア(ラフィア椰子の繊維)と、涼しげな素材を使用しております。ただ、まだ試作中で本格展開はされてないとの事。

こちらも試作中のワビサビコレクションです。

アッパーとソールの継ぎ目を隠して一体型に見えるデザインで、これも他では見られないですね。

4つ目のコレクションはSpeed(スピード)コレクション。これも試作段階ながら、グッドイヤー・ウェルテッド製法で、スニーカーのような履き心地を目指したコレクションだそうです。

ご覧のとおり、ソールがスニーカーのような素材ですね。

工房の様子でして、パティーヌも行っているため、そのためのクリームも各色用意されています。

ノルマンさんはステファノ・ベーメル時代以来、日本人靴職人さんと交流があり、そのため、麻糸は日本製を使用しておりました。フィレンツェで活動している日本人職人さんに買って来てもらうそうです。

ラストメイクに使用するヤスリも日本製でして、これは大川バセット由紀子さんに譲って頂いたとの事。

インソールのくせ付け工程も、ステファノ・ベーメル時代に日本人職人さんに教わった方法をアレンジして、包帯で巻く手法を採っておりました。「ミイラみたいだろ」とノルマンさんは話しておりました(笑)。日本人職人さんはゴムで行いますが、ゴムだと濡らしたインソールが乾きにくいため、包帯を用いるとの事。作成方法にも、新しい試みをして行こうと言う、ノルマンさんの気概が見られますね。

デザインのスケッチが工房にはたくさん貼られており、ノルマンさんの新しい発想とデザインへのこだわりが伺えようものです。

これらもサンプルシューズでして、やはり一風変わったデザインばかりです。


店舗の外観です。ドアノブがラストなのが洒落ています!

【RAMON CUBERTA(ラモン・クベルタ)】
住所: Carrer d'En Mònec, 14, 08003 Barcelona
価格:ビスポーク・シューズ、シュー・トゥリー込で2,000ユーロ~。既製靴、490ユーロ、シュー・トゥリー込の場合は560ユーロ。
仮縫い時はトライアルシューズを作成。ビスポーク・シューズは必要であれば2年間、革のメンテナンスサーヴィスが付属します。他工場製のグッドイヤー・ウェルテッド製法の既製靴もオンラインショッピング可能。英語可。

71年生まれ、創業者で職人のRamon Cuberta(ラモン・クベルタ)さん。2009年にロンドンを訪れた際にハンドメイドシューズを知り、靴職人修行を開始。 まずは、これまでいくつかの賞を受賞しているハンドメイドシューズ職人、Josep Cunillera(ジョセップ・コニレーラ)さんの下で修行し、さらに他にも、複数のバルセロナの靴職人さんにも教わったそうです。その後、ジョン・ロブのジョナサン・ハンター・ロブさんが、バルセロナで35年以上、ジョン・ロブの靴作りをしている靴職人さんの下で学ぶ機会を与えてくれたとの事。
「ジョナサン(・ハンター・ロブ)はとても親切だ」
貴重な機会を与えて下さったジョナサン・ハンター・ロブさんへ、ラモンさんは感謝の言葉を口にしておりました。この靴職人さんから教わってラモンさんはさらに腕を磨き、14年11月に独立開業されました。

ビスポーク・サンプルです。アッパー革は黒はデュプイ、茶色はスペインのタンナーを使用。底材はレンデンバッハです。フィラーはコルクで、シャンクはメタルと革を合わせて使用です。

サンプルはロングノーズが多いですね。


ライニングのヒール中央にはシームを作らず、足当たりを良くしているそうです。これはイタリアの靴でよく見られるパターンの取り方ですね。

ビスポークの作成途中です。


この作成途中の靴、ノルマンさんのようにヒールの左右がアシンメトリーとなっておりました。

濃茶色と薄茶色のトーンが上品なコンビシューズ。


ピエール・コルテを思わせるトウラインですね。

工房の様子です。

店舗の外観です。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年4月27・29日時点のものです。
※16年10月26日5時45分、ラモン・クベルタさんの情報を一部修正しました。
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