Walter Steiger and Dimitri Gomez in Paris(パリのウォルター・ステイガーとディミトリ・ゴメス)
CATEGORY靴・服飾

【Walter Steiger(ウォルター・ステイガー)】
住所:33, Avenue Matignon, 75008 Paris
価格:ビスポーク・シューズ、メンズは4,300ユーロ~。レディースは2,200ユーロ~。パターン・オーダーは既製靴価格に30‐50%増。
仮縫い時はトライアルシューズを作成。メンズはハンドソーン・ウェルテッド製法で3ヶ月で完成。レディースはセメント製法が基本仕様で1ヶ月で完成。ウォルター・ステイガーは世界各国で取り扱いがありますが、パリ本店ではビスポーク・シューズとハンドメイドのパターン・オーダーを受け付けています。英語可。

以前のウォルター・ステイガーは既製とパターン・オーダーのみでしたが、09年よりビスポーク・シューズ部門がスタートし、それに伴い、ビスポーク・シューズ責任者に就任したAlexis Guyot(アレクシー・グイヨ)さん。フランスの職人養成機関であるコンパニオン・デュ・ドヴォワール出身で、アントニー・デロス氏から5・6年ほど靴作りを学び、さらにマサロにて1年、レディースの靴作りを学んだ経歴をお持ちです。ちなみに、お父様も靴職人だったそうです。
ステイガーのビスポーク・シューズのラストは全てこのアレクシーさんが作っており、ラストメイクの際、斧で荒断ちするところから始めるのは、オーベルシーの塩田さんや、ロンドンのクラシックなビスポーク・シュー・メイカーさんと同様ですね。そして、底付け関連の工程もアレクシーさんは行っております。

自社工房ではアレクシーさんを含む4名の職人さんが、ビスポーク・シューズとハンドメイドのパターン・オーダーシューズの製作を行っております。工房は本店の2階にあり、ガラス越しに外からも見えるようになっております。


女性職人さんも2名働いております。

そして、パリ本店では日本人スタッフの平川裕子(Hiroko Hirakawa)さんが勤務しておられ、通訳とご案内をして下さいました。平川さんは06‐09年までステイガーのロンドン店に勤務し、10年から、このパリ店に勤務しておられます。

メンズのビスポーク・シューズのサンプルです。メンズのアッパー革はフレンチカーフが主で、レディースはイタリア製が主だそうです。ビスポークのインソールやアウトソールには、メンズもレディースもガラ&フィスを使用です。

フィラーにはコルクシートや、上画像のゴムシートなどをお客の要望によって使い分けするそうです。ゴムシートはクッション性と防水性があり、他ではあまり使われないので、面白いですね。シャンクはメンズはレザー、レディースはメタルです。

ステイガーはレディースシューズで著名だけあって、レディースのビスポーク・シューズも積極的に作っておられます。そして、レディースの場合、先芯や月型芯にはメンズよりも柔らかいレザーを使用するそうです。

こちらもレディースのビスポークサンプルです。

レディースにのみ、ソールのくせ付けにはプレスマシンを使用です。メンズのソールのくせ付けはハンドで行っております。

ここからのサンプルは、ビスポークとパターン・オーダーが両方混じっているとの事でした。

昨今のフランスのビスポーク・シューズと言えば、ベルルッティやピエール・コルテに代表される細身のモデルが多いですが、ステイガーのビスポーク及びパターン・オーダーのサンプルは、そう言った細身よりも、中東欧で見られるような重厚なフォルムが多いです。


上画像左から二番目のモデルは、ハンガリースタイルそのものですね。

とは言え、このような細身のモデルもあります。アッパーのスティッチを隠すレベルソ仕立てで、さらにコバも隠し、エレガントに見せる工夫をしていますね。

レベルソ仕立ては既製靴でも見られるものの、それはアッパーの切り返しにのみに行う事が多いです。しかし、このモデルはレースステイと履き口周りもレベルソ仕立てにしており、さらにスッキリ見える手間をかけておりますね。

ここからはイタリア製のメンズの既製靴サンプルです。既製靴も、細身と言うよりは重厚、または英国靴のような中庸な雰囲気のモデルが多いです。


中央と右のモデルも、ハンガリーでよく見られるスタイルですね。

一階の店内の様子です。もちろんパリ本店でも、レディースの既成靴の取り扱いは多いです。


店舗の外観です。

【Dimitri Gomez(ディミトリ・ゴメス)】
住所:14, rue Chauveau-Lagarde, 75008 Paris
価格:ビスポーク・シューズ、木製シュー・トゥリー込で3,500ユーロ~。ローファーは若干値上がりします。ボタンアップブーツは4,800~5,000ユーロ~。3ピースシュー・トゥリーの場合は800ユーロ増。
パターン・オーダーシューズはプラスティック製シュー・トゥリー込で1,800ユーロ~、木製シュー・トゥリーの場合は300ユーロ増。
ビスポーク・シューズは4-6カ月で完成、パターン・オーダーは2カ月で完成で、いずれも自社工房製。98年創業の、クロケット&ジョーンズパリ店内にあるビスポーク・シュー・メイカーです。職人のDimitri Gomez(ディミトリ・ゴメス)さんは早藤良太さんの師匠で、かつクロケット&ジョーンズの337ラストの開発者でも知られておりますね。英語はまずまず可能です。

英国ビスポーク・シューズのような雰囲気のサンプル。これと似た、アッパーのブリーチ加工をしたセミブローグは、フォスター&サンのサンプルにもあるなーと思いました(笑)。
アッパー革はアノネイやデュプイと言ったフランス製が主ながら、スウェードは英国製。そしてインソールとアウトソール、芯材にはBastin(バスタン)を使用。バスタンはガラ&フィスと比べて柔らかいのが良いとのお話でした。フィラーはコルクシート、シャンクはレザーです。

フランスの多くのビスポーク・シュー・メイカーさんと同様、ディミトリさんもビスポークの仮縫い時はトライアルシューズを作ります。そして、トライアルシューズは木製シャンクです。

店舗奥にある、ラスト保管室。

オーベルシーの塩田さんと同様、ディミトリさんも自らシュー・トゥリーを作り、上画像はその作成前の状態です。3ピースシュートゥリーも、もちろんディミトリさんが作ります。

なんと、ディミトリさんもシームレスホールカットを作っていて驚きました。

ご覧のとおり、踵にも縫い目がないホールカットで、立体成型が難しいモデルです。

このカジュアルシューズにも一工夫あり……。

アッパー縫製の黄矢印部分が縫い目が隠れるよう、手縫いされています。

引き続き、ビスポーク・サンプルです。


クセのない、中庸なモデルが多いディミトリさんのビスポーク・サンプルですが、このクロコダイルを用いたモデルは、アンソニー・クレヴァリーのような雰囲気ですね。

こちらのパターン・オーダーのサンプルも、フルハンドメイドだけあって十分な貫禄が漂います。パターン・オーダーにはラウンドトウとチゼルトウの二種類ラストと4つのウィズがあり、そして既存デザインから選択して注文します。そして作りは、出し縫いもハンドのハンドソーン・ウェルテッド製法です。
ちなみに、ビスポークの製作所要時間は55‐60時間ほどで、パターン・オーダーは45時間ほどだそうです。パターンオーダーは専用ラストではなく、デザインも制限されますが、靴自体はしっかり手間をかけて作っていると感じさせられます。

店内の様子でして、もちろん、クロケット&ジョーンズの既成靴が充実しています。英語も可能です。


店舗の外観です。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年4月10~14日時点のものです。
※16年8月25日17時40分、ディミトリさんの価格情報を修正し、説明テキストに追記をしました。
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