Camps de Luca, Stark & Sons in Paris(パリのカンプス・ドゥ・ルカ、スターク&ソン)
CATEGORY靴・服飾

【Camps de Luca(カンプス・ドゥ・ルカ)】
【Stark & Sons(スターク&ソン)】
住所:1st floor, Staircase A, 16 Rue de la Paix, 75002 Paris
価格:ビスポーク・スーツ、6,500ユーロ~。ビスポーク・シャツ、550ユーロ~。ビスポーク・ジーンズ、1,800ユーロ~。
ビスポーク・スーツは仮縫い2・3回、8週間で完成。ビスポーク・シャツは仮縫い1回で、仮縫い時にトライアルシャツを作成し、2-3週間で完成。リピーターの場合、仮縫い回数は少なくできます。英語可。
僕が伺った15年4月13日の2ヶ月ほど前に、1910年創業の老舗ビスポーク・テイラー、スターク&ソンと合併し、2週間前に現住所に移転完了したとの事でした。そのため、二店が同住所にあります。

中央がカンプス・ドゥ・ルカの二代目当主で54年生まれのMarc de Luca(マルク・ドゥ・ルカ)さん。右が息子さんで、79年生まれのJulien(ジュリアン)さん、左が弟さんで82年生まれのCharles(シャール)さん。お三方ともにカッター兼フィッターで、ジュリアンさんはマネジメントも務めております。
そして、カンプス・ドゥ・ルカでは日本人職人さんが勤務しており、その日本人職人さんに通訳して頂きました。僕が訪問時、既に2年ご勤務されているとの事です。

このサンプルスーツがもっともカンプス・ドゥ・ルカらしいスタイルとの事で、滑らかな曲線が優雅ですね。スポーツマン体型のようなラインで、高めのゴージがハウススタイルとの事です。

そして、フレンチスーツの特徴的ディテイルで、魚の口のような形をしたフィッシュマウスラペルは、このカンプス・ドゥ・ルカがオリジナル。初代であるジョゼフ・カンプス氏が、チフォネリとは違うパリジャンスタイルを作ろうと言う事で考案したデザインだそうです。

これも初代カンプス氏が考案したオリジナルのディテイル、Poche de goutte(ポシェ・ド・ゴッツ=滴のポケット)と呼ばれるライターポケット。その名のとおり、滴の形をしていて、ハンドスティッチで仕上げられます。特に要望がなければ、このポケットはカンプス・ドゥ・ルカの標準仕様だそうです。
フィッシュマウスもそうですが、ある程度デザインが決まっているクラシックなドレススーツにおいて、その範疇から逸脱する事なく、こう言った茶目っ気あるディテイルを生み出せるのは、さすがファッションの本場と唸らされます。

さらに特徴として、イニシャルはこの切羽の隠れる部分に入るそうです。そして、カフスボタンは3つがカンプス・ドゥ・ルカスタイルとの事。もちろん、注文次第で変更は可能です。
ボタンホールはシルク糸、ボタン付にはポリエステル糸を使用。ボタンホールの芯には、ミラネーゼと呼ばれるヴィスコース100%の芯を用い、この芯によってボタンホールに立体感を生み出せるとの事でした。

ショルダーパッドの先、つまり黄点線の箇所にはcigarette(シガレット)と呼ばれる芯を入れて膨らみを出し、表情を作る工夫があります。ただし、シガレットは必ず入るわけではなく、ストレートなラインに仕上げたい場合は入れないそうです。

サイドベンツの黄点線の箇所には一枚薄い生地を入れ、それが重しとなって裾を綺麗に落とします。

カンプス・ドゥ・ルカのもう一つのサンプルスーツです。
ちなみに、カンプス・ド・ルカのビスポーク・ジーンズは、広島の篠原テキスタイルのデニム生地を使用しております。ジュリアンさん自ら、良いデニム生地はないかとインターネットで探して輸入されたそうです。
そして、ジーンズと言えば大量生産の工業製品ですが、カンプス・ドゥ・ルカのビスポーク・ジーンズは、ビスポーク・テイラーらしい立体感があって丁寧な作りになるのか、それとも工業製品のような粗っぽい縫製で仕上がるのか伺ったところ、「どちらもできるよ」とのお答えでした。

こちらは知事の公式ビスポーク・テイラーで、アカデミー用の服のスペシャリストでもある、スターク&ソンの店内。

カンプス・ドゥ・ルカはビスポークのみのお店ですが、スターク&ソンでは既製シャツやネクタイなどの販売もあります。

スターク&ソンのビスポーク・スーツサンプルで、こちらもフレンチスーツらしい雰囲気ですね。

往年のフランス首相、Raymond Barre(レイモン・バール)氏がスターク&サンに注文したアカデミー用の服。刺繍に600時間もかけて作るそうで、その刺繍のために、仮縫い後も全てパーツを解いて作るため、膨大な手間がかかるそうです。

店内奥にある自社工房の様子です。
「イタリアのテイラーリングと比べたらしっかり形を出し、英国ほど硬い仕立てではない。イタリアと英国の中間のような方法です」
カンプス・ドゥ・ルカの仕立てについて、そう言ったご説明でした。縫い糸はシルク糸とコットン糸を併用し、日本のビスポーク・テイラーが使うようなノリも、カンプス・ドゥ・ルカは使用しないで縫製するとの事です。


作成途中の芯地で、ご覧のとおり、もちろん自作です。

胸部に入っているハ刺しの「ハ」の字が平べったく、他のテイラーさんほど「ハ」の字っぽくないのが目を引きます。毎回、こう言った形のハの字をしているとは限りませんが、このハの字の形状にも、カンプス・ドゥ・ルカならではの秘密があるのかも?しれません?

他のテイラーさんでも同様ですが、襟芯はバイアス(斜め)にカットされているのが、生地の目の流れで分かりますね。このバイアスにカットする事が、立体感ある襟を作るのに重要になります。そして、このバイアスにカットされた芯は、肩先に入れるシガレットにも用いられます。

シガレットの素材も目的に応じて使い分けされており、肩にさらに丸みを持たせたい場合は、より厚みのある上画像の素材を用いるそうです。

カンプス・ドゥ・ルカでは襟付け、肩入れなどの主要箇所は手縫いで、さらに脇縫いも手縫いでした。イタリア以外で、ここの箇所も手縫いするテイラーさんは少ないですね。

ちなみに、ジュリアンさんはピエール・コルテをご着用されていました♪
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