Sebastian Tarek in London(ロンドンのセバスチャン・タレック)
CATEGORY靴・服飾

【Sebastian Tarek(セバスチャン・タレック)】
住所:Unit 26 Sunbury Workshops, Swanfield Street, London
価格:ビスポーク・シューズ、ハンドソーン・ウェルテッド製法で1,800£~、ブーツは2,000£~。マッケイ製法の場合は1,500£~。カンガルーレザー使用の場合は100£増。シュー・トゥリー200£~。
4-6か月で完成。初回の注文はハンドソーン・ウェルテッド製法のみ受け付けており、マッケイ製法の靴は二足目から注文可能。マッケイ製法の場合、出し縫いはマシンです。
オーストラリアのシドニー出身で、77年生まれのSebastian Tarek(セバスチャン・タレック)さんは、97年にコードウェイナーズ・カレッジにて靴作りを学んだ後、00年からシドニーのビスポーク・シュー・メイカー、Andrew McDonald(アンドリュー・マクドナルド)にて2年勤務。そして03年に再びロンドンへ渡り、ジョルジーナ・グッドマンで勤務後、04年から08年まで、ジェイムス・テイラー&サンにて勤務。そのジェイムス・テイラー&サンでは、ベンヤミン・クレマンさんの息子さんであるレナートさんと出会い、かつてはレナートさんと工房をシェアしていたそうです。
複数のシュー・メイカーで腕を磨いたセバスチャンさんは、現在、全行程を一人で行うビスポーク・シュー・メイカーであり、ロンドンの某著名ビスポーク・シュー・メイカーのアウトワーカーでもあり、さらにロイヤル・カレッジ・オブ・アートにて、靴作りと靴デザインの講師も務めています。
驚くのが、セバスチャンさんのご先祖様はポーランドにて、1500年代初頭から1900年ぐらいまで、400年近く続いた靴職人の家系だったそうです!しかも、そのご先祖様の一人はロシア皇帝にも靴を作っていたとの事。セバスチャンさんが靴職人となったのも、その遺伝子がセバスチャンさんに靴に目覚めさせたのかもしれません。
ちなみにセバスチャンさん、過去に四国と東京を旅行された経験があり、「日本のジーンズが好きだね。高いけど良質だ」とお話しされていました♪そして東京では、お仕事用に浅草にある深澤ヤスリを購入されたそうです。

セバスチャンさんの作風は他のロンドンのビスポーク・シュー・メイカーとは明らかに一線を画す、野趣あふれる雰囲気に、現代的な感性を加えたデザインが特徴です。
そして、セバスチャンさんのこだわりとして、なんとアッパー革は基本的に英国製を用いています。現在、どのビスポーク・シュー・メイカーでも、アッパー革はフランス、イタリア、ポーランド、ドイツが主なだけに、これは珍しい事です。でももちろん、お客の要望次第で英国以外の革も使用可能です。

左のローファーのU字を描くクロススティッチはもちろんハンド。カジュアル感が増す意匠ですね。

ブーツも革の風合いと言い、カントリーな雰囲気が良い感じですね。

そして、キャンヴァスとのコンビのモンキーブーツは、革の部分に強靭なベイカーの革を使用しています。

ベイカーの革は硬いため、なんと手縫いです。やや太めの糸を用い、そして手縫いならではの不規則性がデザインのアクセントにもなっていますね。

ロンドンのトラディショナルなビスポーク・シュー・メイカーはコードヴァンの使用に消極的ですが、作風が異なるセバスチャンさんは使用します。そして、そのコードヴァンもセバスチャンさんらしく、英国製であるクレイトンのコードヴァン。このかなり光沢ある仕上げは、セバスチャンさんご自身で行ったそうです。

カンガルー革を使用したスリップォン。カンガルー革は強靭かつ軽量、そして柔軟性がある特徴があり、アメリカのカウポーイ・ブーツにも使用されるそうです。これはもちろん英国製ではなく、セバスチャンさんが故郷の利を活かし、シドニーのタンナーから仕入れております。そして、カンガルー革はナチュラルカラーのみ取り扱っているため、全てハンドペイントとなり、このサンプルもグラデーションをかけての手仕上げです。

マッケイ製法のサンプルです。ウェルテッド製法にこだわらないのも、トラディショナルとは違う、セバスチャンさんらしいですね。左のイントレチャートはピンクとナチュラルカラーの組み合わせで、これも色付けも手作業です。両足ともに、ビーディングがピンクなのも遊び心ありますね。

もちろん、ドレスシューズも作っております。ただ、これも一見、普通の黒靴ですが、実は茶色のクリームで仕上げているため、よく見るとうっすら赤みを帯びています。さらに、靴紐もカジュアルな雰囲気で、ひとひねりしてあるのがセバスチャンさんらしいですね。

ホールカットもカジュアル感あるデザインになっていますね。

ドレスシューズらしい意匠である、フィドルバックも可能です。

フィラーはクッション性を重視してコルクを使用。シャンクはレザーの下にメタルを合わせて使用と、これは整形靴が発達しているドイツや中東欧の靴でよく見られる構成で、かつてジェイムス・テイラー&サンで働いたセバスチャンさんらしいです。もちろん、底材や芯材は、他のロンドンのビスポーク・シュー・メイカーと同じくベイカーを使用です。

工房の様子。ラストメイキングに機械は用いず、全て手作業で行うとの事でした。

そして、工房の外観です。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年4月4日時点のものです。
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