James Taylor & Son in London(ロンドンのジェイムス・テイラー&サン)
CATEGORY靴・服飾

【James Taylor & Son(ジェイムス・テイラー&サン)】
住所:4 Paddington Street, London
価格:ビスポーク・シューズ、ハンドソーン・ウェルテッド製法で2,200£~。シュー・トゥリー、245£~。いずれもVAT無価格。
仮縫い3回。5-6か月で完成。セメント製法や、一部機械を用いてのビスポーク・シューズも製作しており、その場合は価格は安くなります。出張採寸や自己採寸による注文も可能。既成靴の販売もあります。
以前にもご紹介したとおり、1950年代にHannes Leo Schweiger(ハンネス・レオ・シュヴァイガー)氏の整形靴会社と合併したのをきっかけに整形靴の技術を導入しており、他のロンドンのビスポーク・シュー・メイカーとは異なるスタンスです。製法もハンドソーン・ウェルテッド製法にこだわらないのも、整形靴らしいですね。

マネジメントを務める、社長のSteve Robinson(スティーヴ・ロビンソン)さん。先代のピーター・シュヴァイガーさんは既に引退されており、スティーヴさんが6代目当主になります。

このお店の大きな特徴である、2012年より使用を開始した3DフットスキャンとCAD/CAMシステム。メジャーは用いず、底面と四方に設置されたスキャナーによって採寸が行われます。ただ、出張採寸の場合はこのシステムではなく、職人さんが採寸するとの事。そして、エディンバラ、ニューキャッスル、ブリストル、ケンブリッジなどの英国内にフィッティングのためのオフィスがあり、そこでも3Dスキャンでの採寸が可能です。
なお、この3Dフットスキャンはスティーヴさんが開発し、もちろん英国製で、他国からの輸入品ではないとの事。CAD/CAMについてはRhinoceros(ライノセラス) が基となっています。

スキャナーによってこのように撮影され……。

そして、どのスキャナーから捉えた箇所か、それぞれ色分けされて表示されます。これで、立体性が把握できるわけですね。

これらのデータを基にラストが作られます。新しい物をどんどん取り入れていくのは、整形靴が発達しているドイツと同様ですね。

仮縫いは3回と多めで、そして透明プラスティックによるトライアルシューズを用いるのも、ドイツをはじめとする整形靴でよく見られる方法です。

サンプルシューズです。ショートノーズで幅広のフォルムも、整形靴と通じますね。

他のロンドンのビスポーク・シュー・メイカーとは違い、フィラーはコルクで、シャンクはメタルと、これらも整形靴が発達している、ドイツの靴でよく見られる構成です。ただし、フィラーはフェルトを用いることもあるそうです。インソールやアウトソール、芯材はベイカーで、これは他のロンドンのビスポーク・シュー・メイカーと同じですね。

無骨な雰囲気漂う、サイドエラスティックシューズ。

切り返しがユニークなショートブーツ。やはりフォルムは英国と言うより、ドイツっぽさを感じます。

1857年創業の老舗だけあって、古いサンプルも残っております。

整形外科見地による、カスタムメイドのインソール(ドイツで言うアインラーゲン)も作っております。同店で販売されている既成靴と、このインソールを組み合わせて購入する事も可能です。オンラインによる注文も受け付けています。

ビスポーク用の革は、他のロンドンのビスポーク・シュー・メイカーと同様に、ノーサンプトンのA&Aクラックから仕入れております。

店舗併設の工房の様子です。老舗だけあって、ラストの数も多いですね。

工房内に底付け職人さんは複数名いらっしゃいました。


製甲作業は別室で行われております。

店舗兼工房の外観です。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年3月30日時点のものです。
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