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Foster & Son in London(ロンドンのフォスター&サン)

フォスター&サンの職人さんたち

【Foster & Son(フォスター&サン)】
住所:83 Jermyn St, London
価格:ビスポーク・シューズ、3,000£~。シュー・トゥリー、291.67£~。いずれもVAT別価格。VAT込価格はビスポーク・シューズ3,600£~。シュー・トゥリー、350£~。

8ヶ月で完成。他のロンドンのビスポーク・シュー・メイカーと同じく、インソール、アウトソール、芯材、シャンクにはベイカーを使用し、フィラーにはタールを含んだフェルトを使用。フェルトだと、コルクと違って使用していくうちに寄ったり、壊れたりせず、そして革鳴りもしにくいメリットがあるそうです。


松田笑子さん

フォスター&サンの工房長であり、ラストメイキングにパターン、底付けと、靴作りにおける工程は製甲以外の全般を行う、松田笑子(Emiko Matsuda)さん。製甲は他の職人さんが行っているものの、もちろん、ご自身でも可能です。個人事業ではない、法人のロンドンのビスポーク・シュー・メイカーはどこも分業制で、これだけ多岐に渡って仕事を任せられている職人さんは、他には僕の知る限り、ガジアーノ&ガーリングのダニエル・ヴィガンさんしかいません。

現在、世界中のビスポーク・シューズ業界において日本人職人さんたちの活躍は目覚しく、その技術と情熱は高く評価されています。その中でも、世界的な名店がひしめくロンドンのビスポーク・シュー・メイカーで工房長にまで上り詰めたのは、おそらく松田さんが史上初。工房長がゆえに直接お客さんと接し、製作全工程を指揮し、そしてフォスター&サンの長い歴史において、どんなラストを作り、どうフィッティングさせ、どんな靴を作ってきたかと言うデータを知っているのは、職人として大きなアドヴァンテイジです。

なお、松田さんはコードウェイナーズ・カレッジ時代は、早藤良太さんや六儀の大久保尊氏さん、元ベンヤミン・クレマンで元ジョン・ロブ・パリの福岡大樹さんたちと同期で、その当時から優秀だったそうです。

「笑ちゃんはオレたち(日本人同期生)の中では一番年下だったけど、彼女が一番できてたね。オレたち、分からない事があったら、笑ちゃんに聞きに行ってたんだから」

日本人同期生のお一方がそう話しておりました。そして後に、ロンドンへやって来る日本人の中には、松田さんのお世話になった方も多い。

「笑ちゃんには本当にお世話になって、頭が上がりません」

現在は日本で活躍する某日本人靴職人さんが、感謝の言葉を述べていました。


松田笑子さん製ビスポーク・シューズ

フォスター&サンのハウススタイルについて、松田さんにご説明頂きました。

「テリーは常に”エレガント”と答えてましたが、それはもちろん、英国のトラディショナルな靴のスタイルがベースにあり、そこから追及されたエレガントさを意味しています。また、フォスターは英国のトラディショナルな靴屋なので、決められたルールの範囲内であれば、お客様が望むものを作ります。これが今でも我々に引き継がれている”ハウススタイル”です」

そして上画像は、松田さんが履かれていた自作のビスポーク・シューズ。3アイレットのウィングチップは、師匠のテリー・ムーアさんが好きなスタイルだったそうです。羽根が直線的ではなく、曲線なのがかわいらしさ漂う表情になってますね。そして松田さんは、ラストとパターンの名人であるテリー・ムーアさんの直弟子だけあって、その靴はやはりテリーさん流が踏襲されている。



テリー・ムーアさん流ウィングチップ

例えばウィングチップの場合、どう言ったアウトライン(黄緑点線)を描いていても、ウィングのラインはアウトラインに合わせる事なく、あえて無視して、ストレートに走らせる(黄矢印)のがテリーさん流。これがテリーさんの思う、視覚的にスマートに見せるための格好良いラインだそうです。

そして、ウィングの先端は他メイカーの場合、この↓ような三角型になっている事が多いが、

通常のウィングチップの先端


テリーさん流は白点線で囲ったような、この↓形状になります。

テリー・ムーアさん流ウィングチップの先端

テリーさんは、この形状を「arrow(=矢、矢印)」と呼んでいたそうです。なぜこうするのかと言うと、通常の三角型だと使っていくうちに先端が脆くなって取れてしまうため、それを防ぐための処置との事。ただ、この取れてしまうのは昔の話で、現在では三角型でも取れない工夫をしているそうです。もちろん、三角型とarrow、どちらも注文可能です。


フォスター&サンのサンプルシューズ

参考までに、こちらはテリーさんがフォスター&サン加入(65年)以前に作られた、50年代のサンプル。同じ3アイレットのウィングチップながら、ウィングの先端は三角型ですね。


フォスター&サンのライニング

さらにフォスター&サンの靴作りの特徴として、ライニングをご覧のように二種類使用し、靴の前半部はカーフ、後半部はグラッセキッド(Glace kid)です。キッドは薄くて柔らかいため、足当たりが良く、馴染みやすいのが特徴でして、グラッセキッドとは、そのキッドに光沢のある仕上げをした革になります。ロンドンのビスポーク・シュー・メイカーで、ライニングにグラッセキッドを標準仕様としているのは少ないとか。そして、グラッセキッドライニングのカラーヴァリエイションが通常より多いのも、フォスター&サンならではだそうです。

なお、このライニング二種を切り返す位置は、靴のデザインによって異なります。


フォスター&サンのビーディング

そして、ロンドンのビスポーク・シュー・メイカー(フォスターに限らない)は柔らかい履き心地を実現するべく、ビーディング(赤矢印部分、履き口周りのアッパーとライニングの間に入る補強革)にもグラッセキッドを使用しております。


フォスター&サンのセパレート・トウ

もちろん、フォスター&サンも他のロンドンのビスポーク・シュー・メイカーと同様に、トウに飾り革があるデザインの場合、トウの革は二重になります。参考までに、上は06年時に撮影した、僕のフォスター&サンのビスポーク・シューズの仮縫い画像。パンチド・キャップトウなので、黄色矢印のとおり、トウの部分が二重になっています。


フォスター&サンのビスポーク・シュー・トゥリー

シュー・トゥリーは他の多くのビスポーク・シュー・メイカーと同様に外注です。軽量性を考えて内部はくり抜かれており、そして表面が無垢の状態ではなく、高級感ある仕上げが施されています。


エマ・レイキンさん作業中

Anthony Andrews(アンソニー・アンドリュース)、ポール・ハーデンを経て、06年にフォスター&サンに入社し、現在では松田さんに次いで勤務歴の長い、Emma Lakin(エマ・レイキン)さん。長らくパターンとクリッキングを担当されていましたが、これからはボトムメイキングにも携わる予定で、まずはリペアからと、僕が伺った際は上画像のようにオールソールリペアを行っておりました。


エマ・レイキンさん作成メダリオンのサンプル

エマさんデザインの、フォスター&サンオリジナルのメダリオン。最初に上二つの、フォスター&サンのアイコンである、狐の顔をモチーフにしたメダリオンを作ったところ、これが好評だったので、他四つも新たに作ったそうです。

上段二つが、それぞれ表情が異なる、「RED FOX(赤狐)」。
中段二つが、それぞれ表情が異なる、「SWIFT FOX(スイフトギツネ)」。
下段左が、「STAG(雄鹿)」。
下段右が、「MAXWLL FANCY MEDALLION(マックスウェル・ファンシー・メダリオン)」。


ジョン・スペンサーさん

松田さんとともにラストメイキングを担当する、Jon Spencer(ジョン・スペンサー)さん。僕が訪問時は32歳で、テリーさんがほぼ引退となった、2010年に入社されました。


フォスター&サンに来ていたニコラス・テンプルマンさん

僕がフォスターに伺った時、偶然、ニコラス・テンプルマンさんも遊びに来ておりました(笑)。ジョンさんはニコラスさんの推薦で入社したそうです。


フォスター&サンのラフターンの棚

フォスター&サンではラフターン、つまり大雑把な形状の木型から、削り出す方法でラストを作ります。上画像は工房内にあるラフターン置き場で、ラフターンにもサイズがあり、そのサイズごとにストックされています。そして、一言でラフターンと言っても、その形状は各店によって異なるそうです。ちなみにラフターンは英国内だけでなく、フランスからも仕入れたりするとの事。


フォスター&サンのラフターン

ラフターンの全体像。形状の抑揚が乏しく、未完成品である事が分かりますね。


フォスター&サンのラフターンのトウ

つま先がまだ形を成していません。


フォスター&サンのラフターンのヒール

踵も同様です。


フォスター&サンのラフターンのソール

底面の立体性も乏しいため、職人さん自ら全面削り込んで、ラストとして機能する形を出します。既にラストとして完成されている状態から、削ったり、革を貼ったりして足に合わせていくラストメイキングとは違う方法です。そして、削る際もサンディングマシンと言った機械は使わず、全て手作業です。


ルーシー・スミスさん

僕が伺った当時、製甲のアプレンティス(見習い)だった、Lucy Smith(ルーシー・スミス)さん。フォスター&サンにはもうお一人、同姓同名で製甲担当のLucy Smith(ルーシー・スミス)さんがおり(僕が訪問時は休暇中)、そのルーシーさんは12年入社と先輩のため、上画像のルーシーさんはルーシー2と呼ばれているそうです(笑)。


ソコールさん

アルバニア出身で、ポリッシュ担当のSokol Priftaj(ソコール・プリフタイ)さん。元々はミュージシャン志望でロンドンに来ており、その活動の傍ら、フォートナム&メイソンにて靴磨きの仕事をしていたそうです。それがきっかけで、フォスターの靴磨きもするようになり、当初は外注だったものの、僕が伺った半年前にフォスター&サンに入社したそうです。フォートナム&メイソンでは1年半ほど靴磨きをされていたとの事。
「ソコールがかける音楽は、工房の雰囲気を癒してくれる」と、松田さんのお話でした。

ちなみに、僕がソコールさんに、「アルバニアにも行って来た」と話したら、「アルバニアに行った事がある日本人は初めて見た」と言ってました(笑)。


ソコールさんのポリッシュ

ポリッシュの際は氷が溶ける水を使用し、それを小指で取るのがソコールさん流。水は冷たい方がポリッシュしやすく、小指で取った方が、水の量をコントロールしやすいとの事です。


ソコールさんのポリッシュ

このように水滴をわずかだけ付けます。水が足りない際も、わずかづつ付けており、水分はできるだけ少なく使うのがコツのようです。そして、ワックスは靴全面に塗りますが、「ハイシャインをするのはつま先だけ」との事でした。

現在、フォスター&サンに所属する職人さんは以上の6名で、全員正社員。僕が04年と06年に伺った時は3名と、あとは週に2日出勤のテリーさんのみでしたので、現在の好調の様子が伺えます。メンバーの入れ替わりはあっても、仲の良さは変わらないのは、冒頭の写真でお分かり頂けると思います。


フォスター&サンのパーツ

工房内に置かれている、底付けに使うパーツ。これらが外注する職人さんに送られて、底付け作業が行われます。もちろん、あらゆるパーツは職人さんが自作し、トップリフトも当然自作ですが、ダヴテイル(楔型ゴム)のトップリフトだけは出来合いの加工だそうです。


フォスター&サン店内

一階の店舗では、他工場に生産を委託している既製靴をはじめ、鞄、革小物、靴下などが販売されています。


フォスター&サン店内


フォスター&サン写真立て

Shepherds(シェパーズ)製の折り畳み式写真立て。


フォスター&サンオンリジナルワックス

フォスター&サンネームの、英国のデヴォン製ワックス。ビーズワックスとカルナバ(ワックス)と書かれていますね。他にフランス製のワックスもあります。


フォスター&サン販売スタッフ

一階のショップマネージャーで、元クロケット&ジョーンズのRichard Quelch(リチャード・クエルチ)さん。ベリー・ブリティッシュなビスポーク・スーツがカッコ良いですね。前述のルーシー(2)さんも店頭に立つ事があるそうです。


フォスター&サンのサンプルシューズ

フォスター&サンは1840年創業とロンドン最古の歴史を持ち、01年に吸収合併したヘンリー・マックスウェルは1750年創業とさらに古いため、店内には骨董品がごとくのサンプルも多数展示されています。


フォスター&サンのボタンアップ・ブーツ

一般的に、ビスポークが華やかなりし、往年の職人さんは非常に高い技術を誇り、現代では再現不可能だろうとまで言われる。でも、松田さんの思いは少し違うようだ。

「確かに昔の靴で素晴らしい出来のものはたくさんあります。でも、本当の意味でのマスターピースにはなかなか出会えないですよね。現代では手に入らない上質の革や、マテリアルで作られていて、雰囲気があり、それだけでオーラを放っています。でも、目を凝らしてよく見るとどこかしら未完成な部分や、”あら”がある。逆に、昨今の靴は技術的に高度で完成度の高いものもよくみかけますが、どことなく似通っていて一方向にしか見てないような気がします」

松田さんから見ると、往年のハンドメイド・シューズでも諸手を挙げて賞賛できるレヴェルのクォリティは少ないようだ。そして、現代のハンドメイド・シューズも違う側面から納得していない様子。松田さんの靴作りが、これからどんな進化を見せるのか、ますます楽しみになってきたお言葉でした。


フォスター&サンの店舗

店舗兼工房の外観。


フォスター&サンの綿谷寛さんのイラスト

ショーウィンドウに飾られているフレッド・アステアのイラストは、綿谷寛さんが手がけた物です。


※情報はいずれも、僕が訪問した2015年3月27~4月2日時点のものです。

Comment

フォスター&サン、魅力的です。
編集
松田さんがビスポークシューズを履いているお姿の真後ろに見える赤いナイキに驚きました。フォスターの工房にナイキがあるとは!

それにしてもアステアの絵の前に飾られているコレスポンデント・シューズは恰好いいですね。憧れます。

2016年06月07日(Tue) 21:58
ご無沙汰しております!
編集
カッタウェイさん、ご無沙汰しております!

ナイキ、気になりますよね(笑)。何かの時の履き替え用に置いてあるのかもしれません。

フォスターのサンプルにあるコレスポンデント・シューズ、デザインと言い、シェイプと言い、クラシックで素敵ですよね。このスタイル、ずっと守られて行って欲しいなーと思います。
2016年06月07日(Tue) 23:00












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