Horace Batten and A. & A. Crack in Northampton(ノーサンプトンのホレス・バタンとA.&A.クラック)
CATEGORY靴・服飾

【Horace Batten(ホレス・バタン)】
住所:2 Coton Rd, Ravensthorpe, Northampton
価格:ワックスカーフ・ハンティング(狩猟用)ブーツ、1,155£~(トップ付は120£増)。ボックスカーフ・ライディング(乗馬用)ブーツ、1,055£~(トップ付は100£増)。フィールド・ブーツ、1,095£~。ジョッパー・ブーツ、560£~。サイドゴア・ブーツ、540£~。ロンクブーツのシュー・トゥリー、550£~。ロングブーツの場合、レディースだと若干安くなるモデルもあります。料金の詳細はウェブサイトをご覧下さい。
3-6ヶ月で完成。1804年創業で、19世紀より英国騎兵隊にブーツを作り続けているビスポーク・ブーツ・メイカーです。日本では、フォレス・バッテンの読み方で紹介されていますね。映画、「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」のダース・ヴェイダーのブーツを作った事でも知られており(笑)、ダース・ヴェイダー役のデヴィッド・プラウズさんは足がUKサイズ14と大きく、それに合わせて作ったそうです。
出し縫いはマシンの九分仕立てが基本仕様。自己採寸によるオンライン・オーダーも受け付けており、もちろん、工房まで訪れれば、仮縫い付きのビスポークになります。基本的に既製品はありませんが、一点物のストック品は販売しており、メールオーダーも可能です。

6代目当主で、ラストメイクとマネジメント担当のTimothy Lampard Batten(ティモシー・ランパード・バタン)さん。

そして7代目で、ティモシーさんの娘さんである、工房長のEmma(エマ)さん。210年以上に渡って、家族経営でブーツ作りとフィッティングの知識と経験を蓄積し、継承して行っているのは素晴らしい、貴重な財産ですね。

ティモシーさんのお父様で、5代目当主のHorace Lampard Batten(ホレス・ランパード・バタン)さん。残念ながら、14年12月7日に102歳で大往生されまして、その訃報はデイリー・テレグラフやザ・タイムズでも採りあげられたそうです。

第一次大戦後にノーサンプトンにて開業した、4代目のHorace Batten(ホレス・バタン)さん。ティモシーさん曰く、「私が思う、最高のブーツメイカー」との事。

工房内では、やはりロングブーツタイプのラストも多いです。

工房の様子で、奥はエマさんの作業台です。

底付けの部屋では、複数の職人さんが作業しておりました。奥には、ブーツ用出し縫い機などの機械もありますね。

やはりここでも、トップリフトに出来合いは使わず、自作しており、上画像はその作成中です。インソールやアウトソールなどの底材はベイカーを使用。シャンクはメタルで、ライディングブーツにはそれがベターとの事。メタルシャンクは強靭でアーチが落ちにくく、激しい動きをするライディングゆえと思われます。
フィラーは軍隊用には練りコルクで、そうでない場合はレザーです。練りコルクのフィラーはクッション性と防水性があるため、軍隊用に適していると言う事でしょうか。こう言った使い分けも、過去の経験から導き出されているのでしょうね。アッパーはアノネイが多いそうです。

採寸時には足裏の型取りもします。この型取りは、僕が伺った4年ほど前から始めたそうで、老舗ながらもその実績に驕る事なく、新しい試みもしていく、靴作りの高い意欲が感じられますね。

ブーツの場合、釣り込み前にあらかじめアッパーのくせ付けをする、ブロッキングと呼ばれる(日本での呼び名はクリッピング)工程があります。ホレス・バタンではそのブロッキング用の機械が二つあり、上画像はそのうちの古い物で、なんと製造は1880年!一回のブロッキングに24時間を要するそうです。

こちらは比較的新しいブロッキングマシンで、これだとブロッキングは1分で終わるそうです。ただ、古いブロッキングマシンの方が良いシェイプを作れるとの事。

製甲ルームです。手前にある、黒の古いシンガーミシンが、所有するミシンでは一番良いそうです。

アッパーを接いでの補修作業が行われていました。ここまで至るほどに使い込み、それでも使い続けるほど、持ち主の方にとって素晴らしく、そして愛着のあるブーツなのでしょうね。

店内にディスプレイされているブーツの中には、ストック品としてメールオーダーでの販売を受け付けている品もあります。

ブーツ上部にある、赤茶色、ないしは茶色のパーツは「トップ」と呼ばれ、これも付ける場合は価格も上がります。

筒部分の毛はハラコかポニーだと思います。カジュアル感、そしてかわいらしさが漂うデザインとなっていますね。

筒部分にキャンヴァスを用い、やはりカジュアル感ありますね。

一色使いで、デザインもシンプルなロングブーツは風格が漂います。

甲の立ち上がりが美しいジョッパー・ブーツ。トウスプリング(つま先の浮き)が結構ありますね。

ボタンアップ・ブーツも飾られておりましたが、現在は作ってなく、あくまで展示だけだそうです。ロンドンのビスポーク・シュー・メイカーでも、ボタンアップ・ブーツの注文は断っているお店もありますね。

工房兼店舗の外観です。非常に行き辛い場所にありますので、伺う際は車をお勧めします。僕は車の運転ができないためバスで行きましたが、本数が少ないうえに、乗り換えにも大分待ちます。僕がノーサンプトン中心街からバスで工房まで来たと言うと、ティモシーさんたち、びっくりしていました(笑)。

【A.&A. Crack(A.&A.クラック)】
住所:16 Pennard Cl, Northampton
ロンドン、そしてノーサンプトンの靴メイカーも利用する革卸業者で、ワインハイマー、アノネイ、チャールズ・F・ステッド、ホーウィンなどを取り扱っております。僕が04年11月に伺った際は、ノーサンプトン駅から徒歩で行ける場所にありましたが、現在は駅から離れた所に移転しております。

奥行きある革倉庫。ボックスカーフの価格は、もっとも高級品で1スクエアフィート(約9.3デシ)あたり11.62£との事でした。ストック(売れ残りと言う事でしょうか?)のカーフなら1スクエアフィートあたり6~7£で、クォリティは落ちるそうです。
そして、前回同様に、スタッグ・スウェードはあるか聞いてみたところ、やはりないとのお話でした。

革なら靴用だけでなく、鞄用、革小物用、衣料品用など、多彩に取り扱っております。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年3月24・25日時点のものです。
- 関連記事
-
-
Handmade shoes in Athens(アテネのハンドメイドシューズ) 2016/02/07
-
Chisholms Highland Dress in Inverness(インヴァーネスのチザム・ハイランド・ドレス) 2016/02/25
-
靴磨きは13年にして成らずだが一日にして成るんじゃないの? 2011/06/12
-
Vaatturiliike Sauma and Schütt Tailoring in Helsinki(ヘルシンキのワートリリケ・サウマとシュウト・テイラーリング) 2015/12/13
-
Jesper Ingevaldsson and Patrick Frei visited "MAIN D’OR"(イェスペル・インゲヴァルソンさんとパトリック・フライさんのマンドール訪問) 2018/11/05
-
紳士靴の色気 2011/10/27
-