Gaziano & Girling factory in Kettering(ケタリングのガジアーノ&ガーリングの工場)

【Gaziano & Girling factory(ガジアーノ&ガーリングの工場)】
住所:Premier Works, Balfour Street, Kettering, Northamptonshire
以前はノーサンプトンにあったガジアーノ&ガーリングの工場は、14年にノーサンプトン近郊のケタリングに移転。既製靴やMTOの製造だけでなく、ビスポークのラストとパターンメイキングも行われております。

日本でもお馴染み、工場長のDean Girling(ディーン・ガーリング)さん。ご存知のとおり、元々は靴職人さんで、ハンドメイドシューズの職人さんが仕事の良し悪しを判断しているのは、ここのメイカーの強みと思いました。

種類とサイズごとに分けて保管されている、既製靴用のラスト。ガジアーノ&ガーリングでも、サン・クリスピンと同様に、既製靴にはプラスティックラスト、ビスポーク・シューズには木製ラストと使用を区別しておりました。

クリッキングは2名の職人さんが担当しておられました。

クリッキングは全て手作業で、抜き機は使わないそうです。

製甲ルーム。製甲は全員女性職人さんで、他メイカーでも女性が担当する事が多いですね。

製甲のサンプルがかけられており、作成の参考にされておりました。


クリッキング後の革の断面は毛羽立っているので、その断面が目立たないように染色します。

アッパーが完成したら、芯を入れます。先芯は樹脂製です。

月型芯は革で、湿らせた布でくるみ、柔らかくしてから使用していました。立体成形しやすくするための下処理ですね。

芯を入れたら釣り込みです。釣り込み前にアッパー革を蒸らして柔らかくし、立体成形しやすい状態にしてから作業に入っておりました。画像では分かりにくいですが、湯気がもうもうと立っております。

まずはアッパーをラストに沿わせ、ハンドで針を打って仮止め。そして針金によってアッパーが引っ張られ、トウが重点的に釣り込まれます。一般的に、ドレスシューズでは古いタイプの機械の方が手間はかかる分、良い靴を作りやすいと言われますが、この釣り込み機械も古いタイプです。

釣り込み機での作業終了です。

続いて、踵用の釣り込み機にかけて、踵を成形します。

踵の成形が終わると、今度はこの機械にかけます。

この機械に入れると、一瞬にして何本もの釘が踵に打ち込まれ、踵部分のアッパーが固定されます。踵の釣り込みと釘打ちをいっしょにやってしまう機械も他ではありますが、ここではそれぞれを別に行い、手間をかけていますね。

小さい鉄棒からは熱波が出ており、これで革を温めて馴染ませていました。

続いて、ウェルトを取り付けるつまみ縫いにかかりますが、そのウェルトはあらかじめ水に浸されており、柔らかくしてから使用していました。これも作業をしやすくする一手間ですね。

そして、つまみ縫いします。

つまみ縫いを終えた後は、余っている分の革を断ちます。

そして、ハンマーマシンでウェルトを上下から叩き、若干の波うちがあるウェルトを平らにし、剛性も高めます。この後、フィラーとシャンクが仕込まれて、出し縫いがかけられます。なお、フィラーは練りコルクです。

ヒールパーツは取り付ける前に温めて、接着剤が効きやすくします。

そして、プレスマシンで圧着。その後、もちろん釘も打たれてヒールが固定されます。

コバを研磨。

ソールも研磨。

さらに、コバにコテをあてて滑らかにし、光沢も出します。

ソールの仕上げです。

そして、アッパーの磨きです。

仕上げのポリッシュに使うのはワックスと水、「あとは唾だけさ」と担当職人さんがジョーク混じりに話していました(笑)。ただ、革のクリーニングにはエチルアルコールを使用です。

仕上げの参考に、カラーサンプルが置かれていました。

ようやくラストが抜かれ、インソックスを貼り付けます。

最後に目視で検品です。

MTOのサンプルです。オーソドックスな黒のキャップトウと、ホールカットも6アイレットで、シンプルすぎない表情になっていますね。

一番左の靴はドレスシューズながらもレースステイ部分をダブルスティッチにして、ちょっぴりカジュアルな雰囲気を持たせています。

ガジアーノ&ガーリングらしい、シャープでスタイリッシュなスクエアトウ。


ルームシューズも注文可能です。

休憩室には卓球台があり、休憩時間中に職人の皆様は卓球を楽しんでおられました(笑)。この光景でもお分かり頂けるとおり、職人さんたちは仲が良く、楽しそうに仕事をしておりました。
「卓球はできるか?一緒にやろう」
職人さんの一人が僕に声をかけて下さり、嬉しかったです♪

帰り際には、ディーンさん、ダニエルさんにお願いして、この写真を撮りました(笑)。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年3月24日時点のものです。
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