Harris Tweed Hebrides in Isle of Lewis(ルイス島のハリスツイード・ヘブリディーズ)
CATEGORY靴・服飾

【Harris Tweed Hebrides(ハリスツイード・ヘブリディーズ)】
住所:本社工場・North Shawbost, Isle of Lewis
直営店・25 North Beach Street, Stornoway, Isle of Lewis
ハリスツイード製造元の最大手である、Harris Tweed Hebrides(ハリスツイード・ヘブリディーズ)社の工場レポートです。手織りの工程は外注ですが、それ以外の工程は原毛の段階から仕上げまで、自社工場で行っております。

社内の待合室。ツイード関連の書籍や衣料品が展示してあります。

現行品のハリスツイードのバンチ。ここで製造しているのは全てダブル幅です。目付は470-500gで、「feather weight」=羽のように軽いと書かれておりましたが、やはりツイードだけあって、そこそこ重量ありますね(笑)。

昔のツイードのバンチサンプルもありました。

工場を案内して下さった、ディヴェロップメント・ディレクターのMargaret Ann Macleod(マーガレット・アン・マックロード)さん。ツイードジャケットのデザインと言い、着こなしと言い、めちゃカッコ良いです!

未染色のウールがいっぱいに詰め込まれていますね。スコットランドのチェビオットウールを使用しているそうです。

こちらは染色されたウール。生地が糸になる前段階から染色するのを先染め(トップ染め、トップダイ)、生地が織りあがった後に染めるのを後染めと言いますが、ここでは全て先染めとの事。先染めはコストがかかりますが、生地の色に深みが出て、表情が豊かになるメリットがあります。
あと、大昔のツイードは天然染料のみだったそうですが、現在では化学染料で染色しているため、天然染料では難しかった、ファンシーで明るい色のツイードが作りやすくなっております。

染め上がったウールが混ぜ込まれております。複数色のウールを混ぜる事で、生地色のヴァリエイションが広がるわけですね。

まだこの段階では、混ざり方が大雑把ですね。

そして、機械にかけて紡績します。要するに、ウールを糸にするわけですね。

ウールが繋ぎ合わされ、束のようになって来ています。

そして、どんどん細くなっていきます。ツイードに限らず、他の生地会社では、こう言った原毛から糸にする作業は外注である事が多いため、これを自社で可能なのは強みですね。

そして撚りをかけ……。

ウール糸の一巻きとなります。ご覧のとおり、色分けして管理されています。


さらに、一巻きとなったウール糸をこちらの器具に掛けます。

経糸となる複数色の糸を巻き込み、生地に応じて並べていきます(整経)。

いくつもの糸を組み合わせて色柄を生み出すわけで、これも生地の表情の重要なポイントとなります。



最終的に、糸はこのビームに巻上げられます。ちなみに、これはダブル幅です。

そして、ビームがハリスツイードのウィーヴァー(織り職人)さんの元へ送られ、手織りされるわけですね。よく知られているとおり、ハリスツイードは全て手織りなのが特徴の一つでして、手織りは織る力を調整できるためタイトすぎず仕上がり、穏やかな表情となるのが持ち味との事でした。

工場内では、職人さんがサンプルのツイードを織っていました。

先ほど出荷されていたビームは、織機の黄色矢印部分にセットされるわけですね。ただし、これはシングル幅なので、出荷されていたダブル幅の物より狭いです。

職人さんが織りあげた生地は工場に戻り、裏から光を当てて目視チェックされ、不具合があれば補修されます。

そして、洗浄されます。

さらにもう一度、不具合がないか目視チェックされます。

最終プレス。

プレスが終れば、お馴染みのハリスツイードの認定マークを縫い付けます。

ハリスツイード認定マークの熱転写シート。

そのシートにアイロンを当てて……。

完成です!この作業が最後の工程なので、やはり全ての検品を通ってないと、ハリスツイード認定マークは押されないという事ですね。

デザイナーのKen Kennedy(ケン・ケネディ)さん。日本からも別注生地のデザイン依頼があるそうです。

ケンさんのデザインルーム。

サンプルバンチが置かれた棚です。

さすがにサンプル数も相当あります。

一通り見学させて頂いて、工場を後にしました。なお、ハリスツイードにとって日本は大のお得意さんでして、さらに別の場所で聞いたのですが、日本以外でハリスツイードが人気なのはドイツだそうです。ドイツと言えば、日本とともにコードヴァンが人気の国でもあり、日本とドイツの嗜好は似ているのかもしれません(笑)。

さて、工場見学を終えた僕は、帰りのバスを待っていました。一時間は待つ覚悟です(笑)。僕は車の運転ができないため(免許は持っているけど)、島内の移動はバスで行っていましたが、個人的には、ルイス・ハリス島をバスで移動するのはお薦めしません。バスの本数が少ないうえ、各所もスムーズに連絡できていないためです。しかも、日曜日はバスの運行自体がありません。旅行者は、レンタカーを使うのが望ましいようです。
島はご覧のような風景が続き、観光地としても素敵な場所です。ビールもブラックプティングも美味しいです♪

そして、僕がバスを待っていると、工場から車に乗って出てきた、二枚目兼男前の社員さんが声をかけてくれました。
「町(ストーノウェイ)の中心部まで行くのかい?それなら、送って行ってあげるよ」
なんと親切なお言葉!せっかくなので、送ってもらう事に。そして車に乗り込んで男性を間近で観ると、ますます二枚目兼男前。しかも、どこかで見た事があるような……?
車内でお話していると、この社員さんはMark Hogarth(マーク・ホガース)さんと言い、会社のクリエイティヴ・ディレクターでモデルさんでもあるとの事!なんと10年ほど前は日本に住んでいて、ハリスツイードのプロモートのために、伊勢丹や高島屋などの日本のデパートでもモデル活動をしていたそうです。「日本は大好きだ」とも話しておられました。マークさんの写真も撮らせて頂きましたが(上画像)、ただポケットに手を突っ込んで立っているだけでも、これほど凛々しい佇まいは、さすがはモデル!
ちなみに、マークさんについては、ここにインタヴュー記事があります。

ハリスツィード・ヘブリディーズは、ルイス島中心街であるストーノウェイに直営店があります。直営店の住所は、冒頭のとおり、25 North Beach Street, Stornoway, Isle of Lewis。

直営店のスタッフさんの一人である、Jane Hepburn(ジェーン・ヘプバーン)さん。なんとスコットランドではミュージシャンとしても知られている方だそうです。実際、YouTubeにはいくつか動画がありました。モデルでもあるマーク・ホガースさんと言い、脚本家でもあるイアン・フィンリー・マックロードさんと言い、ルイス島は二足のわらじの方が多いような……(たまたま?)。

店内の様子です。

メンズ、レディースともに扱い、ジャケット、帽子、ストールなどが揃います。

もちろん、生地だけの購入も可能です。参考までに、1mあたり目付500gで35£、家具用は1mあたり目付600gで40£。いずれもダブル幅です。
※情報はいずれも、僕が訪問した2015年2月14~16日時点のものです。
※2016年3月5日2時30分、ケン・ケネディさんとハリツイード・ヘブリディーズ直営店の店舗画像を追加しました。
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