Strugar and Cipele Kolenko in Zagreb(ザグレブのストロガーとコレンコ靴店)
CATEGORY靴・服飾

【Strugar(ストロガー)】
住所:Ilica 33, Zagreb
価格:カスタムメイドシューズ、1,700クーナ~。
セメント製法によるハンドメイドのカスタムメイド・シューメイカーです。仮縫いなし。英語可。

69年生まれ、店主のNenad "Neno" Strugar(ネナド・"ネノ"・ストロガー)さん。ピエール・コルテ、ガジアーノ&ガーリング、ヴァーシュ、ベルルッティ、今井宏樹さんが好きとお話されていました。

ネナドさんのお父様である、先代のAlojz Strugar(アロイス・ストロガー)さんは1929年生まれで、1967年にお店を設立、そして2013年にご逝去されたそうです。

店舗の二階にある工房。ラストメイクについては既製ラストに乗せ甲をする方法で、削りはしません。

もちろん釣り込みはハンドです。

アウトソールを接着する前。セメント製法ながら、靴の全周にウェルトも接着しておりますね。シャンクはメタルを使用です。

アウトソールはクロアチア製を使用。これを取り付ける際は、セメント製法なのでもちろん接着剤と、さらに木釘も用います。やはり量産靴のセメント製法より、手間をかけていますね。

クリッキング担当は女性職人さん。カスタムメイドだけあって、アッパーのパンチングも抜き機は使わず、ハンドで行っていました。もちろんデザインは自由ですし、セメント製法とは言え、これで1,700クーナ(29,000円)~はリーズナブルかと思いました。

工房で一番若い職人のGordon(ゴルダン)さん。ネナドさんとともに英語が話せ、色々とご説明して下さいました。

クロアチアサッカー連盟に作ったサッカーシューズ。クロアチアの著名俳優、Rade Šerbedžija(ラデ・シェルベッジア)さんも顧客だそうです。

ネナドさんがガジアーノ&ガーリング、ピエール・コルテ、ベルルッティがお好きなだけあって、サンプルはそれに近い、細身のフォルムが多いですね。デザインも高級靴業界のトレンドを意識しているように見えます。そして、セメント製法だけあって大分軽いのが印象的でした。なお、ウェルトにスティッチが入っているモデルもありますが、セメント製法なのでこれは実際に縫ってなく、飾りです。


黄緑のゴアが挿し色として映える、サイドゴアブーツ。

イタリア靴を彷彿させるデザインのビットローファー。

アッパー革にクラストカーフを用いてハンドペイントも可能で、これもベルルッティやコルテらしいですね。なお、アッパーの産地は不明ながら、ベオグラードから仕入れているそうです。

セメント製法のためコバを詰める事が容易で、そのため、華奢に仕上がってドレッシーですね。

ザグレブの店舗の外観です。

そして、ベオグラードにも支店があり、上画像はその店舗の外観です。住所はCara Lazara 9, Beograd。08年にオープンしたそうです。

【Cipele Kolenko(コレンコ靴店)】
住所:Ilica 29, Zagreb
価格:カスタムメイド・シューズ、1,500クーナ~。カスタムメイドスニーカー、1,200クーナ~。
ストロガーと同じくセメント製法によるカスタムメイド・シューメイカーで、仮縫いなし、2週間で完成。上記サイトからオンライン・ショッピングも可能です。なお、Cipele(ツィペレ)とは靴の意味です。英語可。

僕が伺った当時は45歳、職人のDarko Kolenko(ダルコ・コレンコ)さんと、奥様のDubravka(ドゥブラフカ)さん。1962年にお父様が創業されたそうです。接客担当のドゥブラフカさんは英語堪能で、ダルコさんも英語は少し可能です。

このお店では、ダルコさんがお一人で全工程を手がけております。もちろん釣り込みはハンドで、アウトソールの取り付けには接着剤と木釘を使用と、ストロガーさんと同じ方法ですね。木釘を用いると、ソールが剥がれてこないので良いと言うお話でした。ちなみに20年ほど前は4名で作っていたそうで、やはりザグレブでも、手製靴業界の規模は縮小しているそうです。

ラストメイクは既存のラストに乗せ甲する方法で、削りはせず、これもストロガーさんと同じ方法ですね。様々な要望に対応できるよう、トウの形状は多く用意されていました。

お客の足に合わせて調整したラスト。甲だけでなく、踵にも革を貼って対応していますね。

製甲もダルコさんご自身で行っております。この製甲ミシンはなんと100年前の物との事!

クリッキングもダルコさんが行います。

大量にかけられたパターン。どんなデザインでも受け付けているだけに、これだけのパターンが必要なのかもしれません。

土踏まず部分より後方は薄く削いで、エレガントに見える工夫もしておりました。アウトソールにはストロガーさん同様にクロアチア製レザーを使用。「昔はユーゴスラヴィアにも良いタンナーがあったんだけど、なくなってしまった」とも話していました。ラバーソールにはイタリア製を使用。アッパー革はイタリアやドイツだそうです。シャンクはメタルです。

一見、普通のドレスシューズですが、よく見るとレースステイ脇にゴアが入っており、靴紐をほどかずとも履ける、面白い細工です。レイジーマンシューズと違って靴紐がイミテーションでない分、より"本物の"レースアップシューズのように見えます。

ストラップは飾りのジップアップブーツ。これも着脱しやすいモデルですね。

もちろん、ごく普通のドレスシューズも作っております。

レディースも受け付けています。

個人的に面白いと思ったのが、スニーカーのカスタムメイドです。ハンドメイドで1,200クーナ、日本円換算で2万円そこそこ(16年2月時点の為替レート)なのでリーズナブルですね。

※情報はいずれも、僕が訪問した2015年1月24~26日時点のものです。
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