Attila Cipő in Budapest & Miskolc(ブダペストとミシュコルツのアッティラ靴店)
CATEGORY靴・服飾

【Attila Cipő(アッティラ・シプ)】
住所:Budapest V. kerület, Váci utca 10. ユオシュ・シプサロンの隣です。
価格:既製で390ユーロ~、ブーツやハンドペイントを施した短靴は450ユーロ~、コードヴァンは520ユーロ~、エキゾチックレザーは570~1,070ユーロ。
ビスポークは490ユーロ~、ブーツやハンドペイントを施した短靴は550ユーロ~、コードヴァンは650ユーロ~、エキゾチックレザーは690~1,350ユーロ。
ハンドソーン・ウェルテッド製法でもノルヴェジェーゼ製法でも同価格。
仮縫いなしで、3~4ヶ月で完成。アッパー革はフレンチカーフを使用。ライニングはカーフかゴートスキンで、価格も同じ。そして、ゴートスキンはカーフよりもカラーヴァリエイションが多いそうです。選べるアッパー革は60種類で、カーフ以外にカンガルー、鰻、鮭、クロコダイル、オーストリッチ、リザード、スティングレイなど。お薦めなのが鰻とカンガルーのようで、ともに柔らかく、薄く、軽く、「まるで靴下のよう」と話しておられました。しかも丈夫で、鰻はイタリアのタンナー製で、サンプルの革を力いっぱい引っ張り、いかに強靭かを見せてくれました。そしてカンガルーレザーは、バイクジャケットやフットボールシューズに使われるだけあって、やはり強靭との事。なお、カンガルーレザーはカーフと同価格(つまり通常価格)で、鰻は既製で570ユーロ、ビスポークで690ユーロ。ベルトのカスタムメイドも受けておられます。英語可。
下記が価格表で、詳細が分かります。ベルトや財布も扱っており、価格表にはありませんが、水牛の角製の靴べらもあります。オリジナルの靴クリームはフランス製で、サフィール製か聞いたところ、違うとの事でした。


Attila Kovács(アッティラ・コヴァーチ)さんと、英語で通訳して下さった、ショップスタッフのGabriella Csizmadia(ガブリエラ・チズマディア)さん。ただ、アッティラさんも英語はまずまずできます。

ビスポークシューズのサンプル。

こう言った、東欧靴らしい重厚なフォルムも魅力ですね。

鰻革のサンプル。縦に入る線模様が特徴です。

ハンドペイント、いわゆるパティーヌを施したサンプルです。

同じく、ハンドペイントを施したサンプル。こちらは少々控えめに仕上げていますね。

お父様であり、やはり靴職人のJózsef Kovács(ヨージェフ・コヴァーチ)さんが02年に作られた、巨人用のフルハンドメイドシューズも展示されていました。サイズさえ合えば、ちゃんと履けるように作られています!ヨージェフさんはかつて、ハンガリーのデブレツェンにて、マヌアール靴店を運営されていましたが、現在は引退されています。さらに、ヨージェフさんのお父様も靴職人だったそうで、アッティラさんは三代目になりますね。

その巨人用靴のスペック。ヨーロッパサイズ換算で217!全長1.45m、重量43kgとありますね(笑)。

お客様のご好意もあり、アッティラさんの採寸の様子を見せて頂きました。まずは中東欧やドイツのビスポーク・シュー・メイカーでよく用いられる、フットプリントを採ります。

足の外周と足跡がプリントされました。

続いて、メジャリング。指の付け根回り(ボールガース)、甲回り(インステップガースに見えましたが、ウエストガースの可能性もあります)、足首から踵周り(ヒールガース)の3箇所を計測して完了です。ただ、アッティラさんはお店に常駐してなく、月に一度来るだけでして、普段はガブリエラさんが採寸を行います。ですので、注文希望でもアポイントは不要です。注文する際、時間は1時間から1時間半は見てほしいとの事。

ラストは7種類あり、ビスポークの場合も、この7種をモディファイして作ります。上はLouis(ロイシュ)ラスト。

Nemet(ネメト)ラスト。ネメトはハンガリー語でドイツの意味ですね。

Manual(マヌアール)ラスト。一番幅広のラストです。

Attila(アッティラ)ラスト。

Hunor(フナー)ラスト。アッティラさんの息子さんの名前が、ラストネームの由来だそうです(笑)。

Genova(ゲノヴァ)ラスト。これが一番コンフォートなラストとの事。

Marci(マルツィ)ラスト。これもアッティラさんの息子さんの名前が、ラストネームの由来だそうです(笑)。

7種類のラストが並んだ状態(クリックすると拡大画像が出ます)。左から、Louis、Nemet、Manual、Attila、Hunor、Genova、Marciラスト。なお、Louis、Nemet、Manualはお父様のヨージェフさんから受け継いだラストで、他の4種はアッティラさん製との事。

アッティラさんはお父様のヨージェフ・コヴァーチさんと同様、ドイツのヴィースバーデンで開催される国際靴職人技能コンクールに精力的に出品しており、上は13年の同コンクールで名誉賞と金メダルを受賞した、蛙革の靴。何しろ小さい蛙革なので、6匹分使ったそうです(笑)。ただ、蛙革は脆くて実用性がないため注文も受けてなく、あくまでコンクール用との事です。もしかしたら、脆い分、釣り込みも難しく、そう言った点も評価されての受賞なのかも?しれません。

やはり13年の同コンクールで名誉賞と金メダルを受賞した、クロコダイルの尻尾とカーフのコンビシューズ。カーフはハンドペイント仕上げです。

クロコダイルは厚いため、そして装飾的な意味もあってハンドスティッチで留めてありますね(黄色矢印部分)。

このスティングレイのハイヒールも、13年の同コンクールの名誉賞と金メダル受賞靴です。ただし、アッティラさんはレディースシューズの注文は受けてなく、これもあくまでコンクール用だそうです。スティングレイは、水につけると柔らかくなり、乾くと固くなる性質を持っており、それを利用して曲線を作ったとの事。そして、スティングレイの白い部分は、色付けをしたのではなく、スティングレイの白い部分を取り、一つ一つ手作業で付けたそうです。
なお、アッティラさんは07年と10年にも、国際靴職人技能コンクールで受賞歴があり、その受賞靴は拙サイトにある、こちらとこちらでご覧頂けます。

こちらはハンガリーのミシュコルツにある、アッティラさんの工房です。住所はMiskolc, Salétrom u. 15.

アッティラさん横にある壺は、2014年8月に、ハンガリーのあらゆる業者のマイスターが集うフェスティヴァルで、1位になって受賞した物。

アッティラさんが01年に取得した、整形靴マイスター証書。アッティラさんはビスポークのドレスシューメイカーよりも、整形靴職人としての活動の方が長いです。そして、ビスポークのドレスシューズでも、必要に応じてアインラーゲン(整形靴技術に基づいて作成される中敷)を入れたりと、整形靴の技術を活かしておられます。

アッティラさんのオフィスに飾られていた、ブーツの一つ。アッティラさんご一家はルーマニア出身で、このブーツはそのルーマニアのトランシルヴァニア地方伝統のデザイン。胴の蛇腹状になっている部分は、革を継ぎ接ぎしたのではなく、一枚革で作られています。

トウにある飾りステッチは、アッパー革を内に折り込んでかける、手間のかかる仕様。蛇腹状になっている胴もそうですが、アッパーの凹凸で表情を出すのが、このブーツの特徴の一つなのかも?そして、つま先が反り返ったデザインは、ハンガリーの起源である、モンゴルの仕様だそうです。ソールは木釘で止められておりました。

工房内にあるショー・ルーム。アッティラさんやヨージェフさんが、過去の靴コンクールで獲得した賞状が飾られていました。

昔の靴工房を再現した一角。

アッティラさんの靴とともに、過去に掲載された雑誌も置いてあり、中には日本の雑誌もありました(笑)。なお、このショー・ルームのデザインも、アッティラさんご自身で手がけたそうです。

工房の作業の様子。もちろん、フルハンドメイド。

芯は手で漉いた後、漉き機で仕上げをしていました。

そして、工房では現在も整形靴を手がけており、上はその整形靴用ラスト。整形靴はメンズのみならず、レディースやキッズも製作。釣り込みはハンドのセメント製法でした。ただ、整形靴の注文は直接は受けてないそうです。
※情報はいずれも、僕が訪問した、2014年10月2日~6日時点のものです。
※2020年5月10日16時15分、記事を一部修正しました。
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