「その国際靴職人技能コンクールって、一体どのくらいの規模のコンクールなんですか?」
CATEGORY靴・服飾

「このゲオルグ・マテルナって、ウィーンの靴なんですよ」
それは遡る事11年前の今頃、とある靴ライターさんと僕との会話。
「え!ウィーンにそう言うブランドがあるんですか!知らなかったなあ~」
僕の所有するゲオルグ・マテルナ(既製)を見て、驚く靴ライターさん。
「ウィーンでは有名な、ビスポーク・シュー・メイカーらしいですよ」
「そうなんですか~。ウィーンのビスポーク・シュー・メイカーなら、ルドルフ・シェア&ゾーネは聞いた事があります。でも、そのゲオルグ・マテルナってのは知りませんでした」
プロの靴ライターさんが知らないブランドを説明して、ちょっと嬉しくなってしまう僕。
「このマテルナって、底付けに木釘を使うクラシックな手法が、今でも残っているらしいですよ」
「年間生産数は500足しかないそうです」
調子に乗った僕は、さらに自分の知る、ゲオルグ・マテルナについての知識をべらべら語り出しました。
「ゲオルグ・マテルナって、国際靴職人技能コンクールって言う、ドイツで開かれるコンクールでも、何度も金メダルや名誉賞受賞歴がある、凄い職人さんみたいですよ」
「え!ドイツではそんなコンクールまであるんですか~!?そのコンクールも知らなかったなあ」
ライターさんは、そのコンクールも知らず、得意気になってしまう僕。そしてライターさんは、僕に聞いてきました。
「で、その国際靴職人技能コンクールって、一体どのくらいの規模のコンクールなんですか?どんな国から、どのくらいの人数が参加しているんですか?」
「…………………………、え、ええ~、あ~……、まあ………、どうなんでしょう…………?」
答えられない僕。
とても恥ずかしい思いをしました。コンクールについてまったく分かってないのに、さも凄いコンクールのように語ってしまっている僕、非常に浅はかで愚かでした。「国際」と言う言葉が付いているだけに、さも大規模のように聞こえるけど、その実態までは知らないし、そこまで調べずして国際靴職人技能コンクールを語るなんて、図々しいもいいとこです。
「いつか国際靴職人技能コンクールを見学しに行って、その実態を確かめなくてはいけないな!」
この時の経験から、そう思ったものです。
僕が国際靴職人技能コンクールについて、さらに情報を得たのは、それから2年半後。2004年の11月から12月にかけて、欧州各国の靴メイカーを訪ねる旅に出かけた時、ウィーンのゲオルグ・マテルナ靴店、そしてデブレツェンのマヌアール靴店にて、国際靴職人技能コンクールの賞状を見かけたのです。
「あれ………、何だかおかしいぞ?」
どうも不思議なのです。同じ年のコンクールに、金メダル、銀メダル、銅メダルの受賞が複数いるようのです。普通はメダルって、金銀銅、それぞれ一つづつしか受賞者はいませんよね。
「もしかしたら、コンクールにはなんとか部門とかがあって、その部門ごとにメダルがあるため、メダルが複数に及ぶのかなあ?」
そう思ったりもしたのですが、賞状の文面を見ても全て同じで、「なんとか部門金メダル」とか書かれている様子もない。もし部門ごとに分かれていたとしても、同じ部門で、金銀銅メダル受賞者が複数いる可能性も否定できない。
それに、店内に飾られているメダル受賞靴を実際に見てみても、素直に「良い!」と思える出来のもあれば、「これってそこまで良いのかなあ?」と思える靴もあったりしました。
「これはやはり、実際にコンクールを見てみる必要があるな」
その思いを、一段と強くしました。
そして、そのコンクール見学がようやく実現したのは07年です。次の10年にも行きました。
結論としては、当初の予想どおり、コンクールは部門ごとに分かれているものの、その部門ごとに金銀銅メダル受賞者は複数おり、そして名誉賞受賞者も複数いました。
例えば、07年のコンクールにおける受賞靴は……。
名誉賞・8個(全て金メダル同時受賞)。
金メダル・28個。
銀メダル・20個。
銅メダル・18個。
参加証書(要するに受賞なし)・21個。
そして、10年のコンクールにおける受賞靴は……。
名誉賞・6個(全て金メダル同時受賞)。
金メダル・18個。
銀メダル・18個。
銅メダル・19個。
参加証書(要するに受賞なし)・19個。
参加したら、大半がメダルを受賞できるコンクールで、やはり不思議なコンクールでした(笑)。もっとも、受賞者を限定してしまっては、職人同士揉め事が起きそうですから、それを回避するための複数授与なのかもしれません?
出品されている靴についても、ゲオルグ・マテルナ親方の靴をはじめ、「おお!」と目を引く靴はいくつかあるものの、全体のレヴェルは低めです。名誉賞受賞靴については、ある一定レヴェル以上のクォリティはあり、参加証書の靴は、どれもダメですが、名誉賞でなくとも良い靴もあるし、どうも審査基準も不明瞭です。
それに考えてみれば、本当に足に合うかも不明な、「展示用靴」だけで、その職人さんの力量を測るのも中途半端だよなとも思ったりして。
ただ、「国際」と銘打っているとおり、ドイツやオーストリアをはじめ、欧州各国から職人さんが多数参加しているのは事実でして、鑑賞者も多く、報道関係者も結構来ており、さらにドイツの経済・科学技術担当大臣も協力しているようです。こう言う広い規模で、職人さんが作品を展示できる機会が存在しているのは、それはそれで意義があるのかなと思いました。


コンクール会場の様子です。入場は有料ですが、それでもお客さんはかなり来ています。


コンクールの受賞式。画像に映っておりませんが、式場の周りには報道関係者さん多数もおります。
とは言え、ドイツの靴職人さんの間でも、そのコンクールの知名度は微妙なんですけどね。ドイツの靴職人さんに、「国際靴職人技能コンクールって知ってる?」と聞いてみて、「何それ?知らない」と言われるのは珍しくありません(笑)。
あと、コンクールを見学して個人的に嬉しかったのは、コンクールに果敢に挑戦している、日本人靴職人さんを、サイトで紹介できた事です。やはり、同じ日本人が頑張っている姿は、世に広めたくなります。
それと、コンクールを通じて、欧州の靴業界関係者さんとの交流できるのも楽しいんですよね……。
なぜ突然、こう言う事を書きだしたのかと言えば、今日から国際靴職人技能コンクールがまた開催されているんですよ。でも、今回は旅費がなくて行けませぬ。無理をすれば行けなくもないのですが、これまで2回見学して、どう言うコンクールなのかはほぼ分かったのと、過去2回も無理して行って、その後の生活が大分困窮して苦しかったので、その反省もあり、今回は断念です…………。
でも、本当は行きたいんだよお~っっっっっっ!!!
今回はどんな靴が出品されるのか気になります。残念、無念、無念です……。
答えられない僕。
とても恥ずかしい思いをしました。コンクールについてまったく分かってないのに、さも凄いコンクールのように語ってしまっている僕、非常に浅はかで愚かでした。「国際」と言う言葉が付いているだけに、さも大規模のように聞こえるけど、その実態までは知らないし、そこまで調べずして国際靴職人技能コンクールを語るなんて、図々しいもいいとこです。
「いつか国際靴職人技能コンクールを見学しに行って、その実態を確かめなくてはいけないな!」
この時の経験から、そう思ったものです。
僕が国際靴職人技能コンクールについて、さらに情報を得たのは、それから2年半後。2004年の11月から12月にかけて、欧州各国の靴メイカーを訪ねる旅に出かけた時、ウィーンのゲオルグ・マテルナ靴店、そしてデブレツェンのマヌアール靴店にて、国際靴職人技能コンクールの賞状を見かけたのです。
「あれ………、何だかおかしいぞ?」
どうも不思議なのです。同じ年のコンクールに、金メダル、銀メダル、銅メダルの受賞が複数いるようのです。普通はメダルって、金銀銅、それぞれ一つづつしか受賞者はいませんよね。
「もしかしたら、コンクールにはなんとか部門とかがあって、その部門ごとにメダルがあるため、メダルが複数に及ぶのかなあ?」
そう思ったりもしたのですが、賞状の文面を見ても全て同じで、「なんとか部門金メダル」とか書かれている様子もない。もし部門ごとに分かれていたとしても、同じ部門で、金銀銅メダル受賞者が複数いる可能性も否定できない。
それに、店内に飾られているメダル受賞靴を実際に見てみても、素直に「良い!」と思える出来のもあれば、「これってそこまで良いのかなあ?」と思える靴もあったりしました。
「これはやはり、実際にコンクールを見てみる必要があるな」
その思いを、一段と強くしました。
そして、そのコンクール見学がようやく実現したのは07年です。次の10年にも行きました。
結論としては、当初の予想どおり、コンクールは部門ごとに分かれているものの、その部門ごとに金銀銅メダル受賞者は複数おり、そして名誉賞受賞者も複数いました。
例えば、07年のコンクールにおける受賞靴は……。
名誉賞・8個(全て金メダル同時受賞)。
金メダル・28個。
銀メダル・20個。
銅メダル・18個。
参加証書(要するに受賞なし)・21個。
そして、10年のコンクールにおける受賞靴は……。
名誉賞・6個(全て金メダル同時受賞)。
金メダル・18個。
銀メダル・18個。
銅メダル・19個。
参加証書(要するに受賞なし)・19個。
参加したら、大半がメダルを受賞できるコンクールで、やはり不思議なコンクールでした(笑)。もっとも、受賞者を限定してしまっては、職人同士揉め事が起きそうですから、それを回避するための複数授与なのかもしれません?
出品されている靴についても、ゲオルグ・マテルナ親方の靴をはじめ、「おお!」と目を引く靴はいくつかあるものの、全体のレヴェルは低めです。名誉賞受賞靴については、ある一定レヴェル以上のクォリティはあり、参加証書の靴は、どれもダメですが、名誉賞でなくとも良い靴もあるし、どうも審査基準も不明瞭です。
それに考えてみれば、本当に足に合うかも不明な、「展示用靴」だけで、その職人さんの力量を測るのも中途半端だよなとも思ったりして。
ただ、「国際」と銘打っているとおり、ドイツやオーストリアをはじめ、欧州各国から職人さんが多数参加しているのは事実でして、鑑賞者も多く、報道関係者も結構来ており、さらにドイツの経済・科学技術担当大臣も協力しているようです。こう言う広い規模で、職人さんが作品を展示できる機会が存在しているのは、それはそれで意義があるのかなと思いました。


コンクール会場の様子です。入場は有料ですが、それでもお客さんはかなり来ています。


コンクールの受賞式。画像に映っておりませんが、式場の周りには報道関係者さん多数もおります。
とは言え、ドイツの靴職人さんの間でも、そのコンクールの知名度は微妙なんですけどね。ドイツの靴職人さんに、「国際靴職人技能コンクールって知ってる?」と聞いてみて、「何それ?知らない」と言われるのは珍しくありません(笑)。
あと、コンクールを見学して個人的に嬉しかったのは、コンクールに果敢に挑戦している、日本人靴職人さんを、サイトで紹介できた事です。やはり、同じ日本人が頑張っている姿は、世に広めたくなります。
それと、コンクールを通じて、欧州の靴業界関係者さんとの交流できるのも楽しいんですよね……。
なぜ突然、こう言う事を書きだしたのかと言えば、今日から国際靴職人技能コンクールがまた開催されているんですよ。でも、今回は旅費がなくて行けませぬ。無理をすれば行けなくもないのですが、これまで2回見学して、どう言うコンクールなのかはほぼ分かったのと、過去2回も無理して行って、その後の生活が大分困窮して苦しかったので、その反省もあり、今回は断念です…………。
でも、本当は行きたいんだよお~っっっっっっ!!!
今回はどんな靴が出品されるのか気になります。残念、無念、無念です……。
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