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今さら振り返るアトランタオリンピック"マイアミの奇跡"

96年アトランタ五輪のサッカーダイジェスト


「日本、ブラジルに勝った!1-0!」

それは96年7月22日、アトランタオリンピックにおけるサッカー、日本VSブラジル戦のあった日。当時浪人生だった僕は、予備校にて、英語の講義を受けている最中でした。その時、サッカーフリークだった数学の先生が、声を上げて教室に飛び込んで来たのです。両手にはピースサイン。

「やったあ!」

先生の報を受けて、講義中ながら構わず声を上げる僕。そのくらい嬉しかったですし、かつ仰天しました。

御存知のとおり、アトランタ五輪におけるサッカーの日本VSブラジル戦は、日本が圧倒的不利の予想で、僕も当然、負けると思っていました。

「8-0……、いや10-0だって不思議じゃないね」

僕自身、冗談交じりでそう話していたものです。どうせ負けるなら、中途半端な接戦よりも、せっかくの豪華メンバーのブラジル、華麗な技を存分に楽しんで負けたい。そのくらいに思っていました。また、94W杯以来、ブラジル代表のベベットのファンになっていた僕は、ブラジルのオーヴァーエイジ枠にベベットが入った事を知り、そのベベットのプレイが観られるのを楽しみにしておりました。

そんな思いの中しかし……、まさかの日本勝利の報!僕は興奮のあまり、その後の講義なんて耳に入らず、日本が一体どんな戦いを見せて勝ったのか、そればかりが気になって仕方ありませんでした。

下はアトランタ五輪前、FIFA世界選抜相手に、ブラジル五輪代表が2-1で勝利したのを報じる、「サッカーダイジェスト」の記事。世界選抜チームには、クリンスマン、マテウス、M・ラウドルップ、ウェア、デサイー、レドンド、ホルヘ・カンポス、三浦知良など、錚々たるメンバーが名を連ねる……。

FIFA世界選抜VSブラジル五輪代表


さて、講義が終わるや否や、僕が自転車を走らせたのは、自宅ではなく、当時、一番仲が良く、そしてサッカーファンだった友達の家。

友達の家の呼び鈴を鳴らすと、出て来たのは友達のお母さん。

「あら、山下君、うちの子、まだ寝ているのよ」
「日本、勝ちましたよ、1-0!」

興奮状態そのままの僕は、友達のお母さんに言いました。

「えーっ!そうなの!?今、うちの子、起こして来るわね」

お母さんも仰天しつつ、友達を呼びに行きました。その時、時間は12時すぎくらいだったと思いますが、そこは小学生からよく知る友達の仲、まだ寝ている可能性については、僕の想定の範囲内でした。

少し経つと、眠そうな顔で出てくる友達。

「あー、やーちん(←僕の事)。何?」
「日本、勝ったよ、1-0!」
「えっ!?うそ?勝ったの!??サッカー?」

眠そうな顔が一変して、驚きの声を上げる友達。

「そうだよ、勝ったんだよ!日本!」
「え……、よし、サッカーの試合、ビデオに撮ってあるから、いっしょに観よう」

僕が友達の家に真っ先に向かった理由は、友達と日本勝利の喜びを分かち合いたかったのが第一ですが、同時に、友達がブラジル戦をビデオに撮ると言うのを事前に聞いていたため、いっしょにその試合を観ようと思ったのです。

そして、友達の部屋にて、食い入って試合を観始める友達と僕。試合開始から、機関銃のようなブラジルの猛攻を浴び続ける日本。

「ぅいっ」
「ああ!」
「あ゛あ゛ーっ!」

友達と二人、出てくるのはそう言う悲鳴ばかりです。死に物狂いでブラジルに食らい付き、フリーにさせず、止める、防ぐ田中、鈴木、松田、服部と言った日本ディフェンス陣。それでも紙一重の差でシュートを打たれ、絶望感が走った瞬間、異次元の反応で守る、川口の超人セーブ。

「やっべええええ………」

試合を観ながら、友達と何度そう言ったか分かりません。特に驚愕したのは、ベベットがドリブルを右足アウトサイドで直角に切り替えし、ゴール至近まで迫った瞬間。

「もう駄目だーっ!!」

そう思いましたが、日本はまたも辛うじてクリア(下のYouTube動画、50秒から1分20秒ぐらいまでのシーン)。友達と二人、安堵の溜息。



そして、その直後に流れるスローモーション映像。ベベットの直角の切り替えし。今まで見た事がない、日本選手では絶対不可能な超絶テクニック。

「う゛わ゛、なんだよこれ………」
「何でこれ、ここでこうやって切り返せるんだ……!」

友達と二人、信じられないプレイを目の当たりにし、驚愕のため息。この超大ピンチもよく止めた!

しかし、ちょっと冷静になって考えてみる僕。

「でもこれ、絶対入んないんだよね」
「あ、ああ、そうか、これ絶対入んないんだよなあ」

結果は既に出ていますから、考えてみれば、いかなる大ピンチが訪れても、「絶対入らない」んですよね。それでもとことん肝を冷やされ、何度も心臓跳ね上がる友達と僕。

やがて訪れる、試合終了のホイッスル。1-0で日本奇跡の勝利。力抜けました……。

先に紹介した、FIFA世界選抜VSブラジル五輪代表、この試合を視察していた日本五輪代表監督の西野氏は、「左サイドを狙っていきます」とコメントしていたそうです。その言葉どおり、日本五輪代表の虎の子の1点をはじめ、ほんのわずかなチャンスは左サイドからでした……。

先日のスペイン相手の大金星も凄かったですが、やはり"マイアミの奇跡"には及びません。あんな超弩級を相手の勝利、あれほどスリリングの試合は、もう二度とお目にかかれないでしょうし、そして事実、今なお、お目にかかれていません。

でも、あの"ジョホールバルの歓喜"を観た際、「もう二度と、こんなに手に汗握って試合を観る事はないんだろうな」と思ったのですが、昨年の女子W杯決勝戦は、その"ジョホールバルの歓喜"以上に燃えた試合でした。また"マイアミの奇跡"と同等、またはそれ以上の超転試合、観てみたいものですね!


96年アトランタ五輪男子サッカーの記事



最後にオマケ。アトランタ五輪、"マイアミの奇跡"の記事の下に掲載されていた、サッカー女子日本代表の記事。この時から、既に残る"沢"の名……!


96年アトランタ五輪女子サッカーの記事


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