靴オタクにとってのシュー・トゥリー

靴オタクの必須道具の一つに、シュー・トゥリーがあります。
シュー・トゥリーの役割は、言うまでもなく靴の形状を元に戻し、靴を長持ちさせる事ですね。
そのシュー・トゥリーですが、実は、その人が靴オタクかどうかの、判断材料にも使えるんです。
と言いますか、まずシュー・トゥリーと言う言葉を使う時点で、その方は靴オタクである可能性が十分考えられますよね。靴オタクではない人は、シュー・キーパーと呼ぶ人が多いと思いますから。
さて、高級靴店なり、百貨店の靴売り場に行ってみて下さい。高級靴には大抵、スプリング式シュー・トゥリーが装着されておりますが、その高級靴を片手で持ち上げ、もう片方の手で、スプリング式シュー・トゥリーをスムーズに着脱させている方が、ちらほら見られます。
もうお分かりですね?その方は、高確率で靴オタク危険です。近寄らない事をお薦めします。もちろん、僕自身もやたらと着脱がスムーズな奴である事は言うまでもありません。
靴オタクの方なら、身に覚えがあるはずです。
靴オタク初心者の頃は、靴を床に置いた状態でないと、スプリング式シュー・トゥリーが着脱できなかった事を。
シュー・トゥリーを着脱させる際、抜き差しする角度や、スプリングに対しての力の入れ具合の、コツが分からないんですよね。
それが、ある程度月日が経つと、あら不思議、床に靴を置かずとも、片手で靴を持ち上げた状態で、するりとスプリング式シュー・トゥリーをが着脱できるようになります。
「あれ、いつの間に……」
シュー・トゥリーに手こずった過去が嘘のよう。立派な靴オタクが誕生した瞬間です。
その一方で、靴売り場では、シュー・トゥリーをなかなか外せない、または外したはいいものの、そのシュー・トゥリーを元に戻せず、「お客様、私がやります」とスタッフさんを声をかけられている方もいらっしゃいます。少々カッコ悪くはありますが、こう言う方は、まだ靴オタクになりきれておりません。気軽に仲良くなって下さい。
高級靴ブームと言われて、もう10年以上が経過しました。昔、靴売り場では、「シュー・トゥリーを勝手に外さないで下さい」とか、「シュー・トゥリーを外す場合は、店員に一声おかけ下さい」とか言う文は、どこにも見られませんでしたが、最近ではしばしば目にします。高級靴が、それだけ世に根付いたのを実感しますね。
そんな靴オタクとって身近な存在であるシュー・トゥリーですが、気になるのは、靴を履いた後、どのタイミングでシュー・トゥリーを装着するかですね。
このタイミングについても人それぞれだと思いますが、僭越ながら、一応靴オタク歴(たったの)10数年の僕の場合を書いてみようと思います。
1:帰宅して、靴を脱いだらその日のうちに、シュー・トゥリーを装着。
1のタイミングである理由は、ただ単純に、靴をなるべく早く、元の形に戻したかったからです。おそらく多数の方が、この1のタイミングではないでしょうか。
しかし、1年ほど経って気付いたのです。1の方法だと、履いた翌日に、靴の内部、そしてシュー・トゥリーを触ってみると、湿気が感じられるんですね(その湿気も靴やトゥリーによって差がありますけど)。
「湿気がある状態で、シュー・トゥリーで靴内部を封鎖してしまっては、その水分で靴が傷んでしまうのでは?」
そう考えた心配性の僕は、それ以後、シュー・トゥリー装着のタイミングを変えました。
2:靴を脱いだ後、丸一日そのままにして湿気を放出。その後にシュー・トゥリーを装着。
これをしばらく続けていたのですが、それから数年の後、さらに分かった事があるのです。
一日履いた直後の靴は、当然、体温で温まっております。
そして、靴を脱いで体温が冷めていくと、それとともに、靴は履いた直後の反り返った形状のまま、固まっていきますよね。
その、ある程度革が固まった状態でシュー・トゥリーを入れても、靴を元の形状に戻すのは苦しいのでは?と思うようになりました。
結構な雨を歩いた後だと、それがなお顕著になります。革は熱気だけでなく、水分でも変形しやすく、さらに収縮もしやすくなります。そのため、雨の中を歩いた後、すぐにシュー・トゥリーを入れないと、変形はおろか、サイズが少々小さくなる場合もあります(経験有)。そして、小さくなった靴を元に戻すには、結構な時間や手間を要しますし、革への負担も大きいと思います。
これはまずい思った僕。現在に至る、僕のシュー・トゥリーを装着するタイミングは……。
3:帰宅してすぐ、靴にまだ体温が残っていて、変形しやすい、つまり、元に戻りやすい状態のうちにシュー・トゥリーを装着。
そして、丸一日ほどそのままにして、靴が熱気から冷め、状態が落ち着いた頃にシュー・トゥリーを抜く。
その状態で、さらに丸一日放置。もちろん、靴内部の湿気を取り除くのが目的です。
その後に、再びシュー・トゥリーを装着。これでようやく完了です。
面倒くさい!
面倒くさい。本当に面倒くさいです。面倒くさすぎて、なぜこんなに手間をかけなくてはならないのかと、いつも自問自答しています。でも、そうまでしないと精神的に落ち着かない、自分がいたりします。おそらく、こんな気を使わなくとも、靴への影響にそれほど差がないのは、何となく分かっているのですが、それでも気を配らずにいられないのです。
たかがシュー・トゥリーに気を使いすぎの自分、ちょっとカッコ悪い。
もしよろしければ、どなたか、他にこんな良い方法があるよ!と言うのがございましたら、教えてやって下さい。
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・If holding a shoe shine contest in Japan,,,,,,(もし、日本で靴磨きコンテストを開催するなら……)
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