10年かー

好きだからと言う理由で始めて、やってみたら思いのほかハマッてしまい、いつの間にか熱心になっている……、この感覚は何かに似ているなあーと考えてみたら、クラブ活動ですね。そうか!ウェブサイト運営とは、クラブ活動だったんだ!
学生時のクラブ活動で言うなら、サイト運営は新聞部でしょうか。小学5年生の3学期、僕は新聞委員だったのですが、僕が作った学級新聞を見て、担任の先生は言いました。
「良い出来だった!でもな、これ1回じゃだめだ。この出来を、2回、3回と続けてこそ意味があるんだ。ずっと、この出来を維持していくんだぞ」
しかし、先生の激励むなしく、僕は学級新聞を作るのが面倒くさくなり、結局、その一回しか作りませんでした。先生は僕の性格を知ってるからこそ、わざわざそう言ってきたんだろうなー、と思います(でも、小学4年生の時は何度も作ったんだけどな……)。先生、貴重なお言葉をどうもありがとうございました。とりあえず、ウェブサイト運営は10年続きました(笑)。
サイト運営について、「いつまでやる」と言う目標や期限があったわけではないですが、まさか10年続くとも思っていなかったので、この現実に呆れ半分、驚き半分です。
とは言え、開設して10年も経つというのに、相変わらず、「作成中」の箇所が多いサイトですね。正直、「マンガ」ページや「他」ページについては、作成を諦めておりまして、いずれ昨年の稲中のように、Weblogでやろうかなと思っております。
僕がウェブサイトの作成を開始したのが、もう11年前。ウェブサイト作成の知識がゼロだった僕は、ホームページ・ビルダーを扱うのに四苦八苦。そして、当時はブロードバンドも普及していなかったため、画像を軽くするのにも神経を使ったものです。現在では光ファイバーやADSLが当たり前すぎて、「ブロードバンド」って、ほとんど死語になっておりますね。
まず僕のサイトを見ると、今時フレーム・ページと言うのが、旧型サイトと言うのを物語っていますよね。最近のホームページ・ビルダーの本では、フレーム・ページの作成方法が載っていなくてびっくりしました。現在では画面分割型のサイトを作る場合、フレームではなく、スタイルシートを使うのが一般的のようですね。僕が作成した当時は、まだスタイルシートが一般的ではなく、あえてあまり使わずに作成したのですが(少しだけ使ってる)、現在ではそのスタイルシートを活用してないため、何かと不具合があります。作成した当時は、BlogやYouTube、SNSと言った便利なサーヴィスもないし、10年一昔とはよく言ったものです。本当なら、サイトとSNSの連携も深めたいし、抜本的にサイトを作り直したくもあるのですが、そんな時間はございませぬ。
と言いますか、このWeblogもいつの間にか、ブラウザ次第で正しく表示されないようになっておりますね。でも、手直しするのが面倒なので、そのまま放置しております。正しく表示されないと、殺風景なデザインですよねー、このWeblog。
僕がサイトを作成した理由は、前述したように、靴にしても服にしても巨人にしてもスポーツにしてもマンガにしても、「好きだから」と言うのが大きいです。だからこそ、ページ作成も楽しく、続けていけるのだと思います。
そして、僕がこれだけ靴にのめり込み、サイト運営にまで至った理由は、幸か不幸か大学生の時、高級既製靴を何足か買い、いわゆる"高級品"の素晴らしさを知ったからです。
安くて良い物も素晴らしいけれど、そのクォリティは、高くて良い物には絶対にかなわないと言う事を、僕は靴を通じて知りました(高くて悪い物もあるんだけど)。
そして、高くて良い物は、何がどう言う理由で、どう素晴らしいのか伝えたくなりました。
世の中には、こんなに良い物がある。これは、こうこうこう言う理由で高いけれど、だからこそ、これだけの機能性や美しさが備わっている、素晴らしい物なんだよと。
本当に良い物、その素晴らしさを世に伝えたい、広めたい、残していきたい。
しかし、僕が良いと思っている物は、果たして"本当に"良い物なのだろうか?
世の中、"本当に"良いと言える物は、一体どれだけあるんだろうか?
僕自身、"本当に"良い物を知りたい、探りたい、学びたい。
そう言うテーマで作ったのが、この靴と服のサイトであります(スポーツやマンガなど、他コンテンツは作成理由は異なります)。
さて、高級靴のサイトを作るぞ!と思い立ったものの、何しろ青八才なので、あまりに浅学すぎ、高級靴のサイトを作るには何もかも不足しておりました。
「靴について、もっと詳しくならなくてはならない」
そう思った僕は、靴業界の方々と積極的に交流するようになりました。その頃、ちょうどタイミング良く、台東分校(製靴の職業訓練校)の生徒さんと友達になり、その人とよく色んな所に顔を出し、色んな方を紹介して頂きました。その台東分校の友達には、本当にお世話になりました。どうもありがとうございました。
初めて、浅草の靴問屋巡りをしたのが11年前。南千住からスタート、立ちこめる浮浪者独特の異臭の中、道のど真ん中で小便をするお婆さんを見て死にそうになったっけ。案内してくれた、台東分校に通う友達が言いました。
「ここが、日本のノーザンプトン」
その友達に連れられて、「シューフィル」編集部を初めて訪れたのも11年前。城一生さん、大谷知子さんの深い見識、大きな度量、靴への真摯な姿勢に感動したっけ。「僕のサイトの目標はシューフィルだ!」と。
その11年前、海外で活動している某日本人靴職人さんの講演があり、勉強のために行きました。靴職人志望者も何人か来ておりましたが、講演終了後に質問に行ったのは僕だけでした。その職人さんは、僕の質問に一通り答えた後に言いました。
「あんまり、頭でっかちになっちゃいけないよ」
靴学校に通う、靴職人志望の方々とたくさん会ったのもこの頃です。とある会合にて、靴学校の生徒さんたちが、将来、どんな靴を作りたいかを語り合っておりました。
「今ある物を、壊したい」
「おお、俺もだよ!」
生徒さん二人はそう言って、ガッチリ握手を交わしておりましたが、その横で白け半分に聞く僕。
「今ある物を、壊したい」
これって芸術家の台詞であって、職人の台詞ではない。今ある物を壊したいなら、初めから芸術家を目指せばいいのに、なぜ彼らは靴職人を目指しているんだろうか?まず、作るのが靴である必要ですらない。何か理由があって靴だったとしても、職人を目指す理由が分からない。
疑問に思った僕は、試しに聞いてみました。
「話を聞いていると、あなたのやりたい事って、靴じゃなくて服、さらに言えば絵画や彫刻の分野でもできると思うんですよ。それなのに、どうして靴を選んだんでしょうか?」
しかし、彼らは答えられませんでした。
この時、僕が思ったのは、彼らは靴が好き、靴作りが好きなのではなくて、靴職人目指している自分が好きなんだなあ、と言う事です。
僕がこれまで出会った靴職人志望者さんたち、大半がこのタイプでした。もちろん、古幡雅仁さん(11年前は某靴学校の生徒さんでした)のように、真摯に真面目に靴職人目指している方もいましたけど……。
まあ、靴(服)が好きなのではなく、靴にハマっている自分が好きの、靴オタクさんも多いんですけどね。
ちなみに余談ですが、英国帰りの職人さんが開いた某靴学校では、講義でこう言われるそうです。
「靴に新しいデザインはない。靴のデザインは、もう出尽くした。もし、君たちが新しいデザインを考え出したと思っても、実際は既にあるデザインか、その亜流だから」
しばらく後になって知ったのですが、テリー・ムーアさんも同じ事を言うそうです。「靴に新しいデザインはない」と。英国の靴業界では、割とよく言われている事なのでしょうか。
この言葉を初めて聞いた11年前、僕は半信半疑だったのですが、後になって、それは真実かなと思うようになりました。
実際、一目見て、「これは斬新だ!」「これは革新的だ!」と思うデザインはあるのですが、よくよく見ていくと、昔、或いは大昔に作られた靴で、同じようなデザインは必ず見つかります。今のところ。
靴ってまず機能性ありきのもので、その機能性の範疇で可能なデザインは、極論かもしれませんが、確かにもう出尽くしているのかな……と。
話を戻して11年前、やはり僕は勉強のため、初めてISF(ウェルネスとファッションの国際靴・雑貨見本市)に行きました。あまりに多岐に渡る展示に、一体何から見て、何を話せばいいのか分からず、戸惑う僕。そして、会場内で某靴店の店長さんを見かけて声をかけたものの、気付いてもらえませんでした。
一昨年は、とある靴業界の方の計らいで、2度目のISF訪問。プロの方々ともスムーズに会話でき、「靴のサイトを運営している山下大輔です」と言えば、話が通じるメイカーさんもちらほら。成長を感じました。
高級靴ウェブサイトの第一人者である、Noriさんと初めてお会いしたのも11年前。
「靴のサイトを作ろうと思っています」
「一人の力では限界があるから、多くの人の力を借りれるサイトを目指した方が良いですよ」
そのNoriさんのお言葉を意識して作ったのが、「靴談話帳」はもちろんの事、「靴好きが申す」なのでした。Noriさん、貴重なご助言、どうもありがとうございました。
「新進気鋭の靴ライターがいる」
その当時、そう噂になっていたのが、藤田雄宏さん。ちょうどその頃、藤田さんとは、僕もたまたまご挨拶する機会があったのですが、目力強く、動作も機敏で、確かに仕事できそうな雰囲気がありました。それから少し経って、その藤田さん主導による、「最高級靴読本」が発売されて、「噂は本当だったなあ」と思ったものです。
靴業界にいる、デタラメな人たちと会ったのも11年前。
ドヘタなビスポーク・シューズを「素晴らしいマエストロだよ」と言って日本で展開・販売する人。
スペード・ソールやスピーゴラさんを知らない靴評論家。
やらせの対談広告記事を作るメイカー………。
「こう言う人たちと立ち向かうサイトにするんだ!」
一人で勝手に燃え上がる僕(笑)。この人たちと接してみて分かったのは、よく聞く話ですが、商品についてよく知らないのに、知っているふりをして広告記事を書く人が存在すると言う事。そして、靴についてろくに分かってないのに、分かっていると勘違いして売っている人も存在すると言う事。
この人たちと靴の話をしても、薄っぺらい、または的外れな答えしか返って来ないし、靴磨きについて話をしても、革の状態すら把握できていなかったので、靴磨きすらまともにした事がないであろう事は、容易に想像つきました。
サイト開設前に、業界の裏側を知る事ができたのはつくづく良かったと思います。
結局、サイト作成に1年かかり、10年前の今日、ようやく公開できました。開設当時は、「作業が遅い自分って駄目だなあ」と思っていたのですが、じっくり、靴について勉強した1年だったので、むしろ時間がかかって良かったのかも?と今では思います。もっとも、靴って奥が深すぎて、知れば知るほど、分からない事がどんどん出て来て、10年経った今でも、分からない事だらけですわあ。
サイト開設後も色々あったのですが、僕にとって一番大きかったのが、やはり2004年11・12月の、2か月に渡っての欧州を巡る旅でしょうか。
主目的は、フォスター&サン、ポール・スミス、ゲオルグ・マテルナでのビスポークだったのですが、そのフォスター&サンでの注文時、意外な事が起きました。
フォスター&サンがいずれ日本でトランクショーを行いたい意向があり、その際は僕のサイト上で告知を行いたいと言うご依頼を頂いたのです。ただ、その時点では業者との兼ね合いがあったため、すぐには実現せず、実際にスタートとなったのは2008年からでした。
もう一つ大きかったのが、その当時、世界中の高級靴業界で、噂にはなりつつも、実態は謎のヴェールに包まれていた、ルーマニアのハンドメイド・シューズ工房を紹介できた事です。プロではできない事を、僕のサイトがやろうと言う意識は常にあったので、それまでイタリア製とされていたボノーラの製造委託先、そして、ウィーン製と言われていたサン・クリスピンが、実際はルーマニア製であった事を、世界で初めて発表できたのは、素人の僕だったからと言う自負はあります。もし、僕があの時、ルーマニアまで行ってなかったら、今でもサン・クリスピンはルーマニア製ではなく、ウィーン製とされている可能性があると思うのですが、どうでしょうか。
07年(と10年)には、以前から気になっていた国際靴職人技能コンクールを見学。コンクール全体のレヴェルは低かったと言うのが正直なところなのですが、それでも、ドイツを中心に世界各国から靴職人さんが自作を発表できる場が存在しているのは、意義があるのかなーと思いました。
「Shoes」ページにまつわるエピソードが多いため、「Shoes」ページの話ばかりになっておりますが、「Sports」ページの作成にも、やはり手間がかかったのです。
僕の「Sports」ページの手本となっているのは、「読切苦報」さん、「消極的巨人ファン」さん、「G-CHASER」さんの3ウェブサイトです。これら全て、現在は閉鎖しているのが寂しい限りですが、この3サイトなくして、僕の「Sports」ページはあり得ませんでした。この場を借りてお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
サイトを運営していると、嬉しい事や楽しい事もあります。しかし同時に、しんどい事や、不愉快な事も少なくないです。これまで、あらゆるサイトが閉鎖して言った理由も、僕としては何となく窺えようものです。
それでも、現在のところはまだ、情報発信が楽しいのと、何より自分の中で、「やり切った」感がないので、サイトの運営を続けて行こうと思います。
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