靴オタクだから「靴磨きは難しい」と言うのであります
CATEGORY靴・服飾

1月下旬には、手持ちの靴をいっせいに磨いておりましてですね。

こちら↑は、所有するゲオルグ・マテルナのビスポーク・シューズ。完成した05年時は焦げ茶色だったのですが、経年変化でだんだん色が抜けていきまして(そう言う革だったみたい)、08年にはミディアムブラウンになっていました。これだと、理想の色と違うよなと思った僕は、09年から靴磨きの際、黒のクリームで磨くようになりまして、現在は上のような状態です。なかなか、渋い風合いになって来ました(笑)。
靴磨きをしていると、無駄に集中力が高まります。本当ならこの集中力、もっと別の事で発揮するべきだと思うのですが、僕は肝心な時にいつも散漫です。
お酒を飲みながら靴磨きをする人はよく聞きますが、お酒を飲んだら集中力が落ちて、革の状態、クリームの入り具合、光沢の加減が分かりにくくなるから、極力飲まないようにしているのは僕だけでしょうか。
靴磨きに、こんなに神経使う自分、ちょっとカッコ悪い。
そう思ったりもします。プロなら神経を使うべきなのでしょうけど、僕はただの趣味ですからね……。本当なら、お酒飲みながら、気軽に済ませたいよう。
靴オタクではない方々は、靴磨きなんて簡単に済ませていますし、それでとりわけ問題ないと思います。革靴の本場、欧州の方々も、日本の靴オタクよりずっと気楽に済ませていて、それでいて長持ちさせていると思われます(多分)。
もしよろしければ、こちら↓を読んでみて下さい。以前に僕が書いた、靴磨きについての記事です。
【靴磨きは13年にして成らずだが一日にして成るんじゃないの?】
上記事にも書きましたとおり、靴オタクの僕は、たくさんの種類の靴クリームを所有しております。その靴クリームについて調べていると、大きく分けて、W/O型(油の中に水分がある構成)とO/W型(水の中に油がある構成)の二種があるようです。
そして、W/O型の靴クリームは油に溶けるが、水には溶けない。
O/W型の靴クリームは水に溶けるが、油には溶けないそうです。
これほどの性質の違いを考えると、同じ乳化性クリームとは言え、W/O型とO/W型、双方の馴染みは悪いと思うんですよね(違うかな?)。
※靴クリームについて、こちらのBlog「べじたん」さん、勉強になります!ありがとうございます!
僕はこれまで、靴磨きの際、必ずステイン・リムーバーを使ってきました。理由は以前に書いたとおり、古いクリームを落とさないと、新しく塗る靴クリームの入りが悪いからです。つまり、古いクリームによって残っていた蝋分を落とす必要があると考えていました。
しかし考えてみたら、新しいクリームの入りが悪かったのは、蝋分が残っていたせいだけでなく、古いクリームと新しいクリームがW/O型とO/W型と、タイプが異なっていたためかもしれません。
さらに、同じW/O型の靴クリーム、ないしはO/W型靴クリームだったとしても、メイカーが違えば、使われている材料や成分比率も異なるでしょうから、それだけでも、古いクリームと新しいクリームの、馴染み具合は違うと思うんですよね。
もしかしたら一つの靴には、同じメイカーのクリームだけを使い続ければ、馴染みも良く、よほど厚塗りしない限り、クリーナーも使わなくても大丈夫なのかもしれません。推測なので、実際はどうなのか分かりませんけど……。
そして、欧米の方々や、日本でも靴マニアではない方は、特に汚れていなければクリーナーは使わず、ひたすら靴クリームを塗り続けている傾向のようです。なぜこれでも大丈夫なのかと言えば、日本の靴オタクと違って、一種類のメイカーの靴クリームだけしか使ってないためでは?とも考えてしまいました。まあ、欧米でも靴マニアの方は、日本の靴オタクと同様、数種類の靴クリームを使ってますよね。
靴磨きとは、こだわればこだわるほど、間違った方向に行きがちなのかもしれません。特に深く考えず、「革が乾燥してきたら、クリームを塗る」と、シンプルに捉えればいいだけなのでしょう。
靴磨きで大事なのは、クリームを塗るタイミング(つまり革が乾燥しかけている時期)と、塗る適量を知っておくぐらいではないでしょうか。もっとも、そのタイミングや適量も、慣れないうちは分からなかったりするんですけど……。
他に靴磨きで難しい点があるとすれば、ワックスによる鏡面仕上げくらいでしょうか。しかし、保革を第一に考えるならば、鏡面仕上げ自体が不要ですし、コツを掴めば、プロの靴磨き屋さんほどでなくとも、自分でも結構輝かせられます。
それに、以前にも書きましたが、本当に上質な革と巡り会ったら、革そのものの輝きと質感が美しすぎて、鏡面仕上げをする気なんて起きなくなります。
「靴磨きは難しい」
そう言う言葉をよく聞きます。僕自身も何度も言ってきました。しかし、そう言うのは大抵靴オタクであって、さほどこだわらない人にとっては、とりわけ靴磨きは難しくないと思えます。
靴磨きとは、実はシンプルでとても簡単。
な気がします。
とか言いつつ、僕は最近、自分で靴クリームを作らない限り、自分が満足できる靴磨きはできないのかなー、なんて考え始めています。市販されている靴クリームって、商品として販売する以上、劣化したり、成分が分離しにくいように作られていますよね。そう言った、クリームの状態維持を無視して靴クリームを作れば、より良いクリームが作れるのではないか?と考えています。
例えば、昔の英国では、それぞれの家に伝わる、靴クリームのレシピがあったと聞きました(貴族限定かな?)。そして、その靴クリームの材料の一つに、卵があったそうです。なぜに卵?なんだか臭そう、と思っていたのですが、考えてみれば卵には、水と油を乳化させる作用がありますよね(代表的なのがマヨネーズ)。つまり、界面活性剤の役割を、卵がしているわけです。素人考えですが、卵だと天然素材な分、一般的な界面活性剤より革に優しいのでは?と考えました。しかしこの卵、市販の靴クリームには使えませんよね。腐るから。
僕は靴クリームの自作はやった事がなく、無知なのですけど、界面活性剤や有機溶剤なしの靴クリームが作れれば、いかにも革に良さそうに思えます。素人考えかしら?
しかしそうなると、靴磨きのたびに、靴クリームを作ると言う事。超めんどくせー。
それに、もし靴クリームを自作するとなると、クリームを塗ったら革がどう言う状態になっているか、顕微鏡で確認したりしないと、そのクリームの真価が分からない気がします。
でも、靴磨きに、そんなに手間をかけたくないんだいっ!
靴磨きって難しいよね。
家電業界では、"主婦の家事負担軽減は永遠のニーズ"と言う言葉があるそうです。さしづめ靴業界では、"靴磨き方法は靴オタク永遠のニーズ"と言ったところでしょうか。
だからこそ、靴オタク大国の日本では、モウブレイ、サフィール、コロニル、タピール、ヴィオラ、ウォーリー、ブートブラック、KIWIなどなど、こんなにあっても仕方ないだろと思うほど、靴クリームブランドであふれているのでしょう。そして、僕みたいな靴オタクたちは、好奇心が先走って、使い切れないと分かっていても、靴クリームを買ってしまいます。
また、靴クリーム会社の中には、ノーマルライン、高級ライン、○○用、××用とか、本来なら一種類のクリームで事足りるであろう物も、わざわざ数種類に分けて販売したりしています。こんなに無駄に種類を出しているのも、靴オタクたちが無闇に買うカモと分かっているからに違いないぞ。そして僕も、そのカモの一人であるのは言うまでもありません。
結局のところ、本当に良い靴クリームとは何なのでしょう。世の中には色んな皮革がありますし、なめし方、仕上げ方にもたくさんの種類があります。そして、靴クリームの主成分である油と蝋にも、たくさんの種類があります。一体どの皮革には、どの油とどの蝋を、どう配合させたクリームがベストなのでしょう。いえ、ひょっとしたら、油や蝋以外にも、革に良い材料が存在する可能性もあります。
そのうち、ビスポーク・シュー・クリーム・メイカーとかが出てきたりして。クリーム職人さんが、直接革を見て、その革の性質や状態を見極め、そのうえで、保革に優れているとか、光沢が出やすいとか、持ち主の要望に合わせた靴クリームを、油や蝋を調合して作ってくれるの。んで、長期保存がきかないから、小分け販売。
でも実際のところ、これだと商売にならないから、実現しないでしょうね。
靴磨きに、何かと頭を悩ませている僕、ちょっとカッコ悪い。
趣味なんだから趣味らしく、もっと気楽にやれば良いのにと思います。
靴磨きって、難しいよね。
【靴メンテナンス関連記事】
・靴磨きは13年にして成らずだが一日にして成るんじゃないの?
・KIWI各種
・靴オタクにとってのシュー・トゥリー
・ニュートラルの靴クリーム
・「靴磨き」と「靴のお手入れ」と「Shoe shine」と「Shoe care」と
・マレーシア製KIWIとシンガポール製KIWI
・Shoe care goods of TONINO and Ralf Poppe in Köln(ケルンのトニノのシューケア用品とラルフ・ポッペ)
・If holding a shoe shine contest in Japan,,,,,,(もし、日本で靴磨きコンテストを開催するなら……)
もしよろしければ、こちら↓を読んでみて下さい。以前に僕が書いた、靴磨きについての記事です。
【靴磨きは13年にして成らずだが一日にして成るんじゃないの?】
上記事にも書きましたとおり、靴オタクの僕は、たくさんの種類の靴クリームを所有しております。その靴クリームについて調べていると、大きく分けて、W/O型(油の中に水分がある構成)とO/W型(水の中に油がある構成)の二種があるようです。
そして、W/O型の靴クリームは油に溶けるが、水には溶けない。
O/W型の靴クリームは水に溶けるが、油には溶けないそうです。
これほどの性質の違いを考えると、同じ乳化性クリームとは言え、W/O型とO/W型、双方の馴染みは悪いと思うんですよね(違うかな?)。
※靴クリームについて、こちらのBlog「べじたん」さん、勉強になります!ありがとうございます!
僕はこれまで、靴磨きの際、必ずステイン・リムーバーを使ってきました。理由は以前に書いたとおり、古いクリームを落とさないと、新しく塗る靴クリームの入りが悪いからです。つまり、古いクリームによって残っていた蝋分を落とす必要があると考えていました。
しかし考えてみたら、新しいクリームの入りが悪かったのは、蝋分が残っていたせいだけでなく、古いクリームと新しいクリームがW/O型とO/W型と、タイプが異なっていたためかもしれません。
さらに、同じW/O型の靴クリーム、ないしはO/W型靴クリームだったとしても、メイカーが違えば、使われている材料や成分比率も異なるでしょうから、それだけでも、古いクリームと新しいクリームの、馴染み具合は違うと思うんですよね。
もしかしたら一つの靴には、同じメイカーのクリームだけを使い続ければ、馴染みも良く、よほど厚塗りしない限り、クリーナーも使わなくても大丈夫なのかもしれません。推測なので、実際はどうなのか分かりませんけど……。
そして、欧米の方々や、日本でも靴マニアではない方は、特に汚れていなければクリーナーは使わず、ひたすら靴クリームを塗り続けている傾向のようです。なぜこれでも大丈夫なのかと言えば、日本の靴オタクと違って、一種類のメイカーの靴クリームだけしか使ってないためでは?とも考えてしまいました。まあ、欧米でも靴マニアの方は、日本の靴オタクと同様、数種類の靴クリームを使ってますよね。
靴磨きとは、こだわればこだわるほど、間違った方向に行きがちなのかもしれません。特に深く考えず、「革が乾燥してきたら、クリームを塗る」と、シンプルに捉えればいいだけなのでしょう。
靴磨きで大事なのは、クリームを塗るタイミング(つまり革が乾燥しかけている時期)と、塗る適量を知っておくぐらいではないでしょうか。もっとも、そのタイミングや適量も、慣れないうちは分からなかったりするんですけど……。
他に靴磨きで難しい点があるとすれば、ワックスによる鏡面仕上げくらいでしょうか。しかし、保革を第一に考えるならば、鏡面仕上げ自体が不要ですし、コツを掴めば、プロの靴磨き屋さんほどでなくとも、自分でも結構輝かせられます。
それに、以前にも書きましたが、本当に上質な革と巡り会ったら、革そのものの輝きと質感が美しすぎて、鏡面仕上げをする気なんて起きなくなります。
「靴磨きは難しい」
そう言う言葉をよく聞きます。僕自身も何度も言ってきました。しかし、そう言うのは大抵靴オタクであって、さほどこだわらない人にとっては、とりわけ靴磨きは難しくないと思えます。
靴磨きとは、実はシンプルでとても簡単。
な気がします。
とか言いつつ、僕は最近、自分で靴クリームを作らない限り、自分が満足できる靴磨きはできないのかなー、なんて考え始めています。市販されている靴クリームって、商品として販売する以上、劣化したり、成分が分離しにくいように作られていますよね。そう言った、クリームの状態維持を無視して靴クリームを作れば、より良いクリームが作れるのではないか?と考えています。
例えば、昔の英国では、それぞれの家に伝わる、靴クリームのレシピがあったと聞きました(貴族限定かな?)。そして、その靴クリームの材料の一つに、卵があったそうです。なぜに卵?なんだか臭そう、と思っていたのですが、考えてみれば卵には、水と油を乳化させる作用がありますよね(代表的なのがマヨネーズ)。つまり、界面活性剤の役割を、卵がしているわけです。素人考えですが、卵だと天然素材な分、一般的な界面活性剤より革に優しいのでは?と考えました。しかしこの卵、市販の靴クリームには使えませんよね。腐るから。
僕は靴クリームの自作はやった事がなく、無知なのですけど、界面活性剤や有機溶剤なしの靴クリームが作れれば、いかにも革に良さそうに思えます。素人考えかしら?
しかしそうなると、靴磨きのたびに、靴クリームを作ると言う事。超めんどくせー。
それに、もし靴クリームを自作するとなると、クリームを塗ったら革がどう言う状態になっているか、顕微鏡で確認したりしないと、そのクリームの真価が分からない気がします。
でも、靴磨きに、そんなに手間をかけたくないんだいっ!
靴磨きって難しいよね。
家電業界では、"主婦の家事負担軽減は永遠のニーズ"と言う言葉があるそうです。さしづめ靴業界では、"靴磨き方法は靴オタク永遠のニーズ"と言ったところでしょうか。
だからこそ、靴オタク大国の日本では、モウブレイ、サフィール、コロニル、タピール、ヴィオラ、ウォーリー、ブートブラック、KIWIなどなど、こんなにあっても仕方ないだろと思うほど、靴クリームブランドであふれているのでしょう。そして、僕みたいな靴オタクたちは、好奇心が先走って、使い切れないと分かっていても、靴クリームを買ってしまいます。
また、靴クリーム会社の中には、ノーマルライン、高級ライン、○○用、××用とか、本来なら一種類のクリームで事足りるであろう物も、わざわざ数種類に分けて販売したりしています。こんなに無駄に種類を出しているのも、靴オタクたちが無闇に買うカモと分かっているからに違いないぞ。そして僕も、そのカモの一人であるのは言うまでもありません。
結局のところ、本当に良い靴クリームとは何なのでしょう。世の中には色んな皮革がありますし、なめし方、仕上げ方にもたくさんの種類があります。そして、靴クリームの主成分である油と蝋にも、たくさんの種類があります。一体どの皮革には、どの油とどの蝋を、どう配合させたクリームがベストなのでしょう。いえ、ひょっとしたら、油や蝋以外にも、革に良い材料が存在する可能性もあります。
そのうち、ビスポーク・シュー・クリーム・メイカーとかが出てきたりして。クリーム職人さんが、直接革を見て、その革の性質や状態を見極め、そのうえで、保革に優れているとか、光沢が出やすいとか、持ち主の要望に合わせた靴クリームを、油や蝋を調合して作ってくれるの。んで、長期保存がきかないから、小分け販売。
でも実際のところ、これだと商売にならないから、実現しないでしょうね。
靴磨きに、何かと頭を悩ませている僕、ちょっとカッコ悪い。
趣味なんだから趣味らしく、もっと気楽にやれば良いのにと思います。
靴磨きって、難しいよね。
【靴メンテナンス関連記事】
・靴磨きは13年にして成らずだが一日にして成るんじゃないの?
・KIWI各種
・靴オタクにとってのシュー・トゥリー
・ニュートラルの靴クリーム
・「靴磨き」と「靴のお手入れ」と「Shoe shine」と「Shoe care」と
・マレーシア製KIWIとシンガポール製KIWI
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