内山まもる先生追悼「リトル巨人くん」、「どんがら先生」、そして「はらっぱ同盟」
内山まもる先生と言えば、「ザ・ウルトラマン」、そして「リトル巨人くん」が代表作ですね。コロコロコミックにおける、「リトル巨人くん」の最終回と、「あまいぞ!男吾」の連載開始は、同じ号でしたな……86年3月号。「リトル巨人くん」が、生まれて初めて接した野球マンガと言う、昭和後期の男の子は、僕だけじゃないと思います。
でもね、僕は言いたいのです。
内山まもる先生は、その二作以外にも傑作を生み出していたんだよ!と。
僕は内山先生の熱烈なファンと言うわけでもないので、先生の作品をいくつも読破したわけではありません。
それでも、僕は言いたいのです。
「リトル巨人くん」の連載終了後、次年度(86年度)から連載された、「どんがら先生」、面白かったですね。
主人公のどんがら先生は、小学校の教師でありながら、学校でキャンプをやったり、算数の勉強と言いながら、ファミコンのディスクシステム(時代を感じますね)で生徒に遊ばせたりするユニークな先生。どんがら先生のニックネームは、故郷の郷土料理、"どんがら汁"が好物あった事から付いたのだ。そして、そのどんがら先生の実態は、謎の覆面プロ野球選手、「ミスターX」!所属チームは巨人がモデルであり、背番号は、当時巨人に存在しなかった0番であった。
ミスターXは代打で登場してはホームランを連発!しかし、どんがら先生の生徒たちは、ミスターXがどんがら先生とはつゆ知らず……という作品。
でも正直、あまり細かい点は覚えていません。最後の試合で、高熱をおして出場したのは覚えているんですが……。
その「どんがら先生」も好きだったのですが、何と言っても、同年度の「小学4年生」に連載されていた、「はらっぱ同盟」が傑作!
二作ともに単行本化はされてなく、収録されていた学年誌もすぐ捨ててしまったため、僕はもう、25年読んでいません。
それでも「はらっぱ同盟」は、僕の心を捉えて離さない。
そして、そのガッチンに次いでケンカとスポーツが得意な、長めのおかっぱ頭の男の子。食いしん坊で料理が得意な、太っている男の子。男勝りなオテンバで、動物好きの女の子。しずかちゃんのような、マドンナタイプな女の子。あともう一人、男の子がいたかな?(秀才タイプ?)、小学4年生6人組が織り成す物語。
登場人物の名前を、もうほとんど覚えていないのが、悔やまれてならない……。
物語は、ガッチンたちのグループが、一学年上のガキ大将、島津たちに、唯一の遊び場である公園から追い出された事から始まる……。
追い出されたガッチンたちは途方にくれるが、道をぶらついている最中、広大な"はらっぱ"を見つける。
そのはらっぱで遊べないかなと考えるガッチンたちだが、そのはらっぱには、「立ち入り禁止」の看板。
地主のおじいさんも、入ってはだめだと、ガッチンたちを追い払う。
ケチなおじいさんだと、ガッチンたちはそのおじいさんに、"ケチベエ"のあだ名を付ける……。
しかしケチベエさん、一つの条件付で、ガッチンたちのグループに、はらっぱの立ち入りを許可する。
その条件とは、「君たちが遊ぶ時に、たまにワシもまぜてくれる事」。
ガッチンたちは快く了承。ガッチンたちに、新しい遊び場が出来たのだ……。
「いいなあ、草の匂い!」
「土の香りも、素敵っ!」
はらっぱに寝そべり、喜びを表すガッチンたち。
そして、そのはらっぱに自分たちだけの"かくれ家"を作る事を決める。
材木を拾って来て、"かくれ家"、つまり掘っ立て小屋を作るガッチンたち。「面白いことをやっとるな」と、ケチベエさんもやって来る。
しかし、その作成途中の"かくれ家"、どうも柱がグラついて、安定性が良くない。そこでケチベエさん、柱と柱の間に、斜めに材木を渡すと良いぞと提案する。老人の知恵に、感心するガッチンたち。
「よし、ワシも手伝おう。まぜてくれるかな?」
かくれ家作りに参加しようとするケチベエさん、ガッチンたちは目を合わせてニコッと笑う。
「もちろんだよ。約束したじゃないか」
ケチベエさんも助っ人に加わり、やがて、"かくれ家"が完成。
その後、ガッチンの住む町に、台風がやって来るニュースが入る。台風が来るのを、一つのイヴェントのように楽しみしているガッチン。なぜ台風が楽しみなのか、不思議に思う、ガッチンの母親。
「男の子ってのは、何となく台風が来るのが楽しみなもんだ」
そう言って、ガッチンの気持ちに理解を示す、ガッチンの父親。
「お父さんも、子供の時はそうだった?」
「もちろん」
しかし、ハッと気付くガッチン。台風が来たら、"かくれ家"も潰れてしまう!と。
家を飛び出し、吹きすさぶ台風の中、"はらっぱ"に向かうガッチン。そして、"かくれ家"が倒れぬよう、支えるガッチン。そうしているうちに、やがて駆け付けてくる仲間たち。
何しろ携帯電話がない時代。すぐに連絡を取り合って、誰かに来てもらうとか出来なかった頃。仲間たちは全員、自分の意志だけで、"かくれ家"を守るためにやって来たんですな。
そして全員で支え合い、"かくれ家"は、台風から守られたのであった……。
その"はらっぱ"で遊ぶたちガッチンたちを妬む、上級生グループの島津たち。「野球で勝った方が、"はらっぱ"を使うことにしよう」と言ってくる。
そして野球の試合当日、島津は審判として、中学生の兄を連れてくる。
「大河ってのはおまえか。いい度胸だな」
かくして試合が始まるが、その兄がインチキ審判。投手・ガッチンの投げるボールは、ど真ん中しかストライクをとらず、逆にガッチンチームの攻撃は、見送ったら全部ストライクにされる。
「くそっ、打てばいいんだろ、打てば!」
ガッチンは無理矢理打つが、劣勢ははね返せない。
しかし、そこを偶然通りかかったお巡りさん、ガッチンたちの試合を見物し始める。お巡りさんが見ている前なので、島津の兄もインチキ判定ができなくなり、やっと対等の条件での試合となる。
やがて島津の兄は、「塾があるから」と試合から去って行き、代わってお巡りさんが審判を務める。
試合結果は覚えてないのですが、その後もはらっぱは、ガッチンたちが使っていたので、ガッチンチームが負けたと言う事はないと思います……。
学校の運動会では、ガッチンたち小学4年生と、小学5年生との騎馬戦。ガッチンたち4年生は、騎馬を二手に分けて5年生チームを挟み撃ち。大勝利を収める。
ケチベエさんの息子は、"はらっぱ"にビルを建てようとする。しかし、ケチベエさんは反対。"はらっぱ"が立ち入り禁止となっていたのは、そのビル建設計画のためだったのだ。
"はらっぱ"で遊ぶガッチンたちが邪魔だと、ケチベエさんの息子は追い出しにかかる。
ガッチンたちが"はらっぱ"で遊んでいる中、突如やってる来るバイクを駆る若者集団。ケチベエさんの息子の差し金だ。
"はらっぱ"をバイクで暴走し、ガッチンたちを追い払おうとするバイク集団。皆で作った"かくれ家"も、そのバイク集団に潰されてしまう。ガッチンたちを助けにやって来た島津たちも、ガッチンともどもやられてしまう。
やがてバイク集団が去り、皆打ちひしがれる中、ガッチンが吠える。
「島津、同盟組もうぜ!はらっぱ同盟だ!」
"はらっぱ"を守るため、ガッチンたちのグループと、島津たちのグループで、"はらっぱ同盟"を結成。
"はらっぱ同盟"は再びやって来るであろう、バイク集団を撃退するため、新たな"かくれ家"を作る……。
新しい"かくれ家"は、"はらっぱ"にある、巨木の上に作られた。
やがて来襲するバイク集団。しかし、"はらっぱ同盟"は巨木の上から言う利点を活かし、バイク集団を攻撃。バイク集団に圧勝する。そしてバイク集団も、"はらっぱ"で遊んだ子供の頃を思い出し、ガッチンたちと和解するのであった……。
そして最終回。いつもの仲間たち、一人一人に、"自分が思う、自分の良い所"を聞き回るガッチン。突然、自分で自分の良い所を言わなくてはならなくなり、困惑する仲間たちだが、「自分の良い所は……、○○かなあ」みたいな感じで、何とか答える。
そんなガッチンの行動を不思議に思う仲間たち。これは何かあると思って調べていくと、なんとガッチンが転校してしまう。
引越しのトラックに乗るガッチンを、仲間たちと島津が追いかけ、お別れの言葉を投げかけあってのラストでした。
25年読んでない作品を、記憶を頼りに書いたので、違っている部分もあるかと思います。でも、大まかなストーリーは、こんな感じだったはずです。
「どんがら先生」に「はらっぱ同盟」、ともに単行本化はされず、しかも学年誌と言う、人目につきづらい雑誌での連載(紐綴じ雑誌なので立ち読みできない)。正直、かなりマイナーな作品です。内山まもる先生のウィキペディアを見ても、この二作、作品リストにありません。
でもね、そんなマイナーながらも、素っ晴らしい作品を、内山先生は描いていたんです!
内山まもる先生、感動をどうもありがとうございました。ご冥福をお祈り致します。
- 関連記事
-
-
ヨーロッパにおける日本のマンガ事情 2015/10/06
-
「はじめの一歩」冴木卓麻VS板垣学 2011/12/02
-
銭形のとっつぁん 2006/09/08
-
週刊少年ジャンプ黄金期の偉大なる4番打者 2010/02/03
-
和月伸宏(21歳) つの丸(20歳) うすた京介(16歳) 2013/06/23
-
ミスター・サタンが教えてくれる 2012/04/30
-