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Masahito Furuhata in Milano(ミラノの古幡雅仁)

古幡雅仁さん

【Masahito Furuhata(古幡雅仁)】

仮縫い時はトライアルシューズを作成。半年後に仮縫いし、それからさらに半年後に完成。年に2回ほど帰国し、東京近辺で注文を取っておられます。


古幡雅仁さん

74年生まれの古幡雅仁(Masahito Furuhata)さんは02年から03年にかけて、8カ月ほどガットで修行し、04年からはメッシーナをはじめとしたミラノのビスポーク・シュー・メイカーにてご活躍。そして08年10月に日本に帰国すると、東京の赤坂にて独立開業されました。しかし、後継者に不安のあったマリーニ(ローマ最古のビスポーク・シューメイカー)が古幡さんの技術を欲しがり、それに応える形で古幡さんは13年9月にマリーニに移籍。マリーニにて、古幡さんはビスポーク・シューズにおける肝心要のラストメイクをはじめ、パターンメイク、クリッキング、ボトムメイキングと多岐に渡って担当。しかし、15年7月いっぱいでそのマリーニも退職。
16年1月に日本にいったん帰国した後、同年5月からはミラノにて活動を開始。現在(16年12月)、古幡さんはご自身のお客さんの靴製作をメインに行いつつ、週に二日、スティヴァレリア・サヴォイア(旧バリーニ)の店舗併設工房にて、彼らの靴製作も行っております。


古幡雅仁さんのビスポーク

ガットやメッシーナをはじめ、クラシックなイタリアのビスポーク・シューメイカーでよく見られる、幅のあるスクエアトウが古幡さんのスタイル。アッパーはフレンチカーフ、底材はロッカ、フィラーはコルクシート、シャンクはレザーを使用。そして、履き口のアッパー革とライニングの間に挟み込まれるビーディングは、当たりを柔らかくするべく、キッドを使用。これまで古幡さんが働いて来たイタリアのビスポーク・シューメイカーは、全てビーディングは柔らかい素材であるキッドだったそうです。

そして、古幡さんの靴はどれもコバが張り気味ですが、これはガット最後の靴職人、ガエターノ・ヴァストラ氏より学んだ事だそうです。

「ガットでは修理の事を考えて、コバを張り出してます。オールソールをすると必然的にコバを削るため、それに備えるためです」

この長年の使用に耐えるよう、コバの幅を十分にとるのは、英国の名職人、ジェイムス・マコーマックさんの靴作りにも通じる考え方ですね。

そして、古幡さんはホールカットの注文は受けない(マリーニやスティヴァレリア・サヴォイアと言った、他店経由は別)。

「ホールカットは履いていると型崩れが早いので、注文は受けません。何度か断った事がありますよ。ガットやメッシーナでは、ホールカットの靴は見た事がないです」

これも、靴を長く使ってもらおうと言う思いから。古幡さんが尊敬する、ガットとメッシーナの職人さんたち、その靴作りと精神を受け継ごうと言う意志が、古幡さんの言葉から感じられる。

なお、メッシーナの創業者であるガエターノ・メッシーナ氏は、独立前は初代ガットのアンジェロ・ガット氏の甥に当たる、ダカタにて修行しており、ガットスタイルを受け継いでいる職人さんの一人です。


Longhitano Alfio and Turi in Milano(ミラノのロンギッターノ・アルフィオとトゥーリ)

ロンギッターノの店内

【Longhitano Alfio(ロンギッターノ・アルフィオ)】
住所:Via Antonio Tantardini, 8, 20136 Milano
価格:ビスポーク・シューズ、1,300ユーロ~。コードヴァンの場合は2,000ユーロ~。

4週間で完成。コードヴァンはホーウィンを使用です。英語不可。


ロンギッターノの親方

僕が伺った当時は60歳、店主のLonghitano Alfio(ロンギッターノ・アルフィオ)さん。


ロンギッターノのビスポークサンプル棚

サンプルシューズの棚で、ご覧のとおりレディースも手がけており、僕が伺った際も、女性客が来店してフィッティングチェックを行っておりました。


ロンギッターノのビスポークサンプル

サンプルシューズの一つで、ショートノーズでラウンドスクエアなトウラインは、クラシックなイタリアのビスポーク・シューメイカーでよく見られます。


ロンギッターノのビスポークサンプル横から

側面からだと、ベヴェルト・ウェイストで作られているのが分かりますね。そして、白矢印で示したように、シームをヒール脇に持って行くのは、イタリアらしいパターンどりです(他国はヒール中央にシームが入る)。

Hisashi Sasaki in Milano(ミラノの佐佐木弥史)

佐佐木弥史さんの店舗

【Sartoria H.Sasaki(サルトリア・アッカ・ササキ)】
住所:Via S.Paolo 13, 20121 Milano
価格:ビスポーク・スーツ、3,500ユーロ~。

仮縫い2回、2カ月で完成。年に二回来日し、東京、大阪、名古屋、松山、さらにロンドンとマドリードでも注文を取っておられます。


佐佐木弥史さん

店主の佐佐木弥史(Hisashi Sasaki)さんは82年生まれ。04年に関西外国語大学を卒業後、渡伊し、まずは10カ月ほどヴェネツィアに滞在。翌05年にミラノのファッションデザイン学校に入学し、2年通うものの、その際にデザインよりも物作りがしたいと言う思いから、パターンの学校に移り、1年学んで卒業。そして07年、ヴァドルッチョ・ヴィットーリオさんのお店に入社し、サルト修行を開始しました。13年からはヴァドルッチョさんのお店の共同経営者となり、14年には、ミラノテーラー協会・オモボーノ神の祭典で金賞を受賞。そして16年2月に、独立開業されました。


サンプルスーツ

佐佐木さんのビスポーク・スーツのサンプルで、全体的に柔らかなラインは師匠のヴァドルッチョさん譲りですね。そして、ヴァドルッチョさんと同様に、佐佐木さんは基本的にジャケットに細腹は取りません。

「お腹が出ている人を細く見せるために、細腹を取る時はあります。でも、基本的に細腹は取らないですね。細腹を取るのは、アイロンワークが少ない既製服のやり方です。ビスポークはしっかりアイロンワークで立体成型するのだから、(パターン上で接ぎを作って立体を出す)細腹は不要です」

佐佐木さんだけでなく、ミラノをはじめとするイタリアでは、細腹を取らないのを基本仕様としているサルトリアは多かったです(ただ、トリノのサルトリアでは細腹有もありました)。そして、他のイタリアのサルトリアでも、佐佐木さんと似たような事を僕は何度も言われました。「細腹を取るのはfabbrica(ファブリカ=工場、つまり既製服)だ」と。

無論、英国、フランス、日本など、他国のビスポーク・スーツでは細腹は当たり前に取るので、細腹を取らないのは、あくまでイタリアンテイラーリングの考え方です。とは言え、他国でもトーマス・マホンさんなど、一部で細腹を取らないのを標準としているビスポーク・テイラーはありました。


佐佐木弥史さんのラペル

ラペルのラインは青線のように少しカーブさせるのが佐佐木さんのスタイル。師匠のヴァドルッチョさんは、このカーブがもう少し大きめが好みだったそうです。そして、ゴージラインは黄線のように急角度で上げる、難しい技術です。

Vadruccio Vittorio and Barone in Milano(ミラノのヴァドルッチョ・ヴィットーリオとバローネ)

店内

【Sartoria V.Vadruccio(サルトリア・ヴィ・ヴァドルッチョ )】
住所:Via Sant'Antonio, 14, 20122 Milano
価格:ビスポーク・スーツ、3,500ユーロ~。ビスポーク・ネクタイ、110ユーロ~。

仮縫い2回、2カ月で完成。英語不可。


ヴァドルッチョさん

42年生まれで、75年に独立開業された、店主のVadruccio Vittorio(ヴァドルッチョ・ヴィットーリオ)さん。02年からはミラノテイラー協会の会長を務め、これまでテイラーの賞をいくつも受賞している、業界の重鎮です!


ヴァドルッチョさん所有の賞状

店内にはヴァドルッチョさんが受賞した賞状がいくつか飾られており、そのうちの一つである、2012年ミラノテーラー協会最優秀テーラー賞の賞状。


ヴァドルッチョさん所有の賞状

こちらは09年のロンバルディア州優秀職人の賞状です。


サンプルスーツ

サンプルスーツの一つ。やはりミラノらしい柔らかなラインで、細腹も取らないパターンです。そして、パターンを作るのは作成前ではなく、2回目の仮縫いが終わった後との事でした。


Siniscalchi in Milano(ミラノのシニスカルキ)

シニスカルキの工房

【Siniscalchi(シニスカルキ)】
住所:Viale Vittorio Veneto,32, 20124 Milano
価格:ビスポーク・シャツ、交換用の襟も付いて700ユーロ~。

仮縫い2回。旅行者ならば、午前中に採寸して、その日の午後に初回の仮縫い、その翌日に2回目の仮縫いが可能。英語可。


アレッサンドロ・シニスカルキさん

1948年創業で、二代目店主のAlessandro Siniscalchi(アレッサンドロ・シニスカルキ)さん。パターンは全て、このアレッサンドロ・シニスカルキさんご本人が作るそうです。


シニスカルキの店内

生地がバンチではなく、反物でのストックが非常に豊富なのに驚かされます!高級生地のカルロ・リーヴァも充実です。生地はイタリア製が多いですが、スイスのアルモやフランスのシモノ・ゴダールもあります。


シニスカルキさんのイタリア製生地証明書

シャツ製作はもちろんの事、使用するコットンと麻生地の織りや仕上げもイタリア製と言う、シニスカルキさんが取得した証明書。

「中国製だと、生産コントロールが不十分だからね」

イタリア製である事のこだわりが伺えます!なお、生地原料については、エジプトコットンなどの輸入です。


シニスカルキのパターン

作成に用いられるパターン。


シニスカルキのパターン

お客さんの体型が変化したため、ホチキスで紙を継ぎ足し、パターンを修正した後がありますね。お客それぞれに型紙を作り、その後の注文に備えて保存するのは、ビスポークならではです。